質問「『日米物品役務相互提供協定について』他

(平成8年6月12日参議院外務委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 平成会の山崎でございます。ACSAの問題を中心にお伺いしていきたいと思います。
  まず、その前にといいますか最初の段階として、今この問題でも言われております集団的自衛権についてお伺いしたいと思います。
  野沢先生の御質問の中にもありましたけれども、集団的自衛権の権利そのものは認めるところであるというふうなことでございますけれども、従来からの政府解釈といいますか憲法解釈によれば、集団的自衛権の行使は我が国憲法の認めるところではない、このように伝えられてといいますか、決まっている、解釈しているということでございます。
  そこで、一番私が疑問に思うことは、神学論争にはしたくないんですけれども、果たして行使が認められていないものを権利として認められていると言えるのかどうかということについて、まずもってお伺いしたいと思います。

○政府委員(秋山收君) 集団的自衛権についてのお尋ねでございますが、従来から政府が日米安保条約等におきまして日本が集団的自衛の固有の権利を有していることを確認しているところでございます。
  一方、このような国際法上の立場を踏まえつつ、我が国憲法の解釈としましては集団的自衛権の行使は認められないものと、先生今御指摘のとおり解釈しているわけでございますが、国際法上保有しているとしつつ、我が国の憲法におきましてみずから集団的自衛権の行使を抑制するということが、憲法と条約との関係におきまして特段論理上矛盾があるというようなことではないというふうに理解しております。
○山崎力君 これは憲法と条約の問題ではなくて日本語の問題なんです。法概念の問題です。要するに、行使をしないという、行使を認めていないという問題の性質の権利を持っていると言えるかどうかということです。例えば、端的に言えば、人間は本来正当防衛権がありますよというふうに正当防衛権を認めておりながら、物理的抵抗をしてはならないというような規約があった場合、果たしてそれが権利そのものが担保されているのかどうか、そういう意味の質問でございます。
○政府委員(秋山收君) 憲法上集団的自衛権は行使できないというふうに解しているところでございますけれども、それを行使できない以上は、これを保有しているかどうかということはいわば観念的な議論でございますし、また憲法は集団的自衛権の保有それ自体について言及しているものでもございません。
  そこで、私どもは従来から、集団的自衛権につきましては憲法上行使できない、その意味におきまして保有していないということと結論的には同じであるというふうに説明してきているところでございます。
○山崎力君 ということは、結論的には集団的自衛権は持っていないのと同じであるというふうに考えてよろしいわけですね。確認です。
○政府委員(秋山收君) 理論的には集団的自衛権を国内法上持っているがこれを行使できないというふうに考えることも可能であろうと考えますが、集団的自衛権は憲法上行使できないものでございますので、したがってこれを国内法上持っているといっても全く観念的な議論という帰結になるわけでございます。したがいまして、憲法上集団的自衛権は行使できず、その意味において保有していないといっても結論的には同じであるというふうに考える方が適切であると考えておりまして、また従来からそういうふうに説明してきているところでございます。
○山崎力君 ということで、私どもがよく日常会話で使っている言葉と若干乖離があると思うんですが、例えばある一国がほかの国と同盟関係を結ぶというようなことは、これは集団的自衛権の行使というふうな概念とどのような関係があるのか、ちょっと御説明願いたいと思います。
○政府委員(林暘君) 今の御質問が、同盟条約にもいろいろな種類の同盟条約がございますので、同盟条約が集団的自衛権とどういう関係に立つかということを一概に御説明するのは難しいわけでございます。
  集団的自衛権というのは、御案内のとおり、自国に対して侵略があったわけではない場合であっても自国と密接な関係にある国に侵略があった場合にいわゆる自衛権の発動として武力を行使ができるという権利でございます。同盟条約によってはそういう権利をもとに結んでいる条約がございますし、日米安保条約のように、アメリカは日本に武力侵略があった場合に日本を助けるわけでございますけれども、逆は規定はされておりません。そこの部分については集団的自衛権に基づいた部分ではないと考えておりますので、同盟条約の内容いかんであろうかというふうに考えております。
○山崎力君 ということは、日米関係におけるアメリカ合衆国においては集団的自衛権でもって我が国を守る、日本はそうではないということになるわけですけれども、ということは我が国はアメリカに対して我が国の憲法で認めていない集団的自衛権を要求しているということになりますが、それでよろしいんでしょうか。
○政府委員(林暘君) アメリカに何かを要求しているという関係ではないんだろうというふうに思います。アメリカは、国連憲章第五十一条に基づきます集団的自衛権というのはもちろん持っておりますし、それを行使し得る立場にあるわけでございます。アメリカとしてはそれに基づいて日米安保条約というものを締結し、その規定に従って日本に武力侵略があった場合に集団的自衛権を行使するという形になっておりますので、日本が日本の憲法でどうこうということはアメリカに要求しているという関係ではないだろう、アメリカがみずから持っている権利及び権利の行使をしているということだろうと思います。
○山崎力君 そのことは自明のことでございまして、私がお尋ねしたいのは、日本が日本国の決めた憲法によって集団的自衛権の行使はしてはならないと日本を規定しているわけでございます。それを外国はそれはいいですよと。それで、我が国の約束で同盟関係でもってアメリカに対してそのことの権利を行使してくださいという感覚がどうも私にはよくわからない。自分たちがやってはいけないものだとしている価値観を外国に対して要望している、それによって日米安全保障条約が締結されているのではないかと、そのように考えるんですが、その点についてはいかがでございましょうか。
○国務大臣(池田行彦君) そこのところは、我が国は集団的自衛権は持っているけれども、憲法でみずからいわば手を縛ってそれは行使しないんだと、こういう姿になっているわけでございますね。そして、米国は我が国がそういった姿になっている、そういった方針であるということを十分承知の上で、しかしアメリカ自身の国家利益から考えて、そのような日本ではあるけれども、やはり日本と密接な関係を持つことが米国自身の国益にも合致する。
  そして、そのような自制した姿をとっている日本との間で日米安保条約という条約を結び、日本が集団的自衛権の行使にかかわることはできないことを承知しながら、アメリカとしてはアメリカの持つ集団的自衛権の行使にかかわる部分も条約上の義務として必ず受け入れるということで条約が結ばれているわけでございます。それを余り日本の方からアメリカはそれでいいんだったらと言うのはいかがかという御批判はあるいはあるかと思いますけれども、決して我が方は一方的に何かアメリカに対して過大なものを求めているというのではなくて、そういうことでいろんな条件を十分承知の上で米国は米国としての判断があっての条約関係であると、こう考えます。
○山崎力君 私の申しているのはその方面からの話じゃないんです。外務大臣のおっしゃることはよくわかります。そのとおりだろうと思います。しかし、私の言いたいのは、我が日本国として、自分たちの価値観として、憲法として手を縛っておる、自分たちが対外的な集団的自衛権は事実上ないんだという今の法制局の説明にもありました。
  そういった価値観を持つ我が国が、そうでない価値観の、世界的にはその方が普通なのかもしれませんけれども、そうでない人たちの国々に対して集団的自衛権を前提とするようなことを結ぶ、プロポーズすること自体が、憲法が本来もし集団的自衛権を持っていないとするならば、ちょっと矛盾がそこにあるのではないか。日本側からアメリカにそういう申し出をすること自体が感覚からすると矛盾があるのではないかということをお尋ねしているわけなんです、法的に考えまして。

○国務大臣(池田行彦君) 価値観と言われますと、これはむしろ自由であるとかあるいは民主主義であるとか、そういったものにかかわるものじゃないかなと。そういった点では、我が国と米国は価値観を共有していると思います。しかし、そういった価値観を実現していく手段といいましょうか、そういったものとしていろんなものがある。価値観もそうでございますし、安全を守っていく手段としていろんなものがある。そういった手段としては、確かに我が国はある程度みずから抑制した姿になっている。これは事実でございます。
  しかし、抑制しているけれども、しからば米国のように抑制してみずからを縛ることはない、国際法上認められている機能を十分に発揮できる体制のもとにある国といわゆる同盟関係を結ぼうというのは決して矛盾とは言えないんじゃないでしょうか。それは価値観にかかわる問題じゃなくて、その手段、手法の問題かと思います。
○山崎力君 この場合の手法というのが憲法解釈に対する考え方と非常にずれがあると、どうしても私はぬぐい切れないものですから、この辺はこれ以上話してもいわゆる神学論争に陥ってしまいますので、そういうことだけをお考え願って、今後の対応の参考にしていただきたいと思い、次の問題に移らせていただきます。
  次は、このACSAの条文そのものに対しての質問でございます。
  条文の最初は省かせていただいて、いわゆる協定の見出しの部分のところですが、非常に奇異に感じますのは、「後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する」という表現がございます。やはりこれでは素直にわかりにくいだろうということでその第一条において「「後方支援、物品又は役務」とは、後方支援において提供される物品又は役務をいう。」と、こういうふうにわざわざこの協定の表書きの部分を第一条で説明するというような形式になっております。日本語において、おけるおけると重なるのを別にすれば、後方支援における物品又は役務の相互の提供に関する協定とすればこの第一条は要らないのではないかというのが素直な読み方なんですが、その辺はどうなっておるのでしょうか。

○政府委員(折田正樹君) 先生のおっしゃることは私もよくわかります。私も交渉の途中でそうしたらどうかということを言った経緯があるわけでございます。
  実は「後方支援、物品又は役務」という表現でございますけれども、この表現は、アメリカ側から見ますと、このアメリカ側の権限を持っているのはアメリカの国防省でございますけれども、この協定を締結する権限をもらっている根拠となるのはNATO相互支援法というアメリカの国内法でございます。そして、この「後方支援、物品又は役務」という表現はそのアメリカの国内法の中で使われている表現で、アメリカがほかの国と結ぶ協定でもこういう使い方をしていたと、そういうことなわけです。
  日本とこの協定を結ぶに当たってアメリカ側は、アメリカのNATO相互支援法に基づいて、そこで権限をもらって日本と協定を結んだということを明確にする必要があるので同じ表現にしてくれということで、アメリカ側はこの表現を使ってくれということを主張したわけでございます。そうしますと、おっしゃるとおり若干意味が不明でございますので、協定第一条1という形でその意味するところを定めたと、そういう経緯でございます。
○山崎力君 経過はよくわかりましたが、非常に日本語としては残念な状況でございまして、つい憲法の条文を思い出してしまうんです。
  それはさておきまして、その言葉の問題です。私の苦手とする英語が向こう側から出てくるわけですが、この「後方支援」という言葉の対応することがロジスティックサポートという言葉を使われております。この場合のロジスティックという言葉は、後方支援ともちろん訳されますが、いわゆる軍事用語においては兵たんと訳される部分が非常に多い、あるいは似たような言葉では補給という言葉も使われて非常に広い概念でございます。ある意味においてロジスティックの場合においては、防衛庁の関係者がおられるので釈迦に説法だとは思いますけれども、大砲の弾であるならば、現実に前線で撃っているその部隊まで運ぶのがロジスティックの概念でございまして、そういう意味においては後方支援というもの、後方という言葉がひとり歩きしがちな部分があるのではないかというふうに懸念いたします。
  ところが、日本における後方という言葉は、アメリカのロジスティック、英語におけるロジスティックにはないんだろうというふうに理解しておるんですが、その辺はいかがでございましょうか。

○政府委員(折田正樹君) 委員御指摘のとおり英語ではロジスティックサポートという言葉を使っております。これは後方支援、それから兵たんという意味に訳されることもあるわけでございますが、では具体的に何を提供するのかということで、この協定の二条にずらっと並べて書いてありますけれども、そこの内容を含めて私どもはこれは後方支援という訳でよろしいのではないかというふうに考えたわけでございます。
  この協定に基づいて実際に提供する物が何かということで見てみますと、二条でずっと列記してある十五に区分される事項でありますし、それの意味が不明であると困るというので、さらに付表を設けましてその中身を定めたということでございますので、言葉がひとり歩きして違う意味になってしまうということは私はないんじゃないかというふうに考えておるのでございます。
○山崎力君 全体的に今度のACSAの条文から見て、ロジスティックという言葉は後方支援と訳してよろしいのではないかという御答弁だと受けましたが、こういった種類の問題においてよく言われますのは距離感ということ、どこまで支援活動ができるかということにおいて、前線とそれから我が国の間の距離というものが言われるわけでございます。
  後方支援という言葉で、距離があればとか距離が短ければというようなことがよく言われて、いわゆる中東有事、それから極東有事ということで距離感といいますか距離概念というものが出てくる。そのときに、後方支援と言ったときにこの訳語がロジスティックであれば、これはあくまでも距離とは関係のない概念だと私は理解するわけでございます。
  その辺について、「後方支援」という訳語が誤解を与えるのではないかという疑念をどうしてもぬぐい切れないんですが、いかがでしょうか。

○政府委員(折田正樹君) 確かに距離の問題というのはあろうかと思いますが、この協定は、適用対象を共同訓練のとき、国連平和維持活動のとき、それから人道的な国際救援活動のときというところに限っておることが一つと、それから適用対象で、一方の国が要請があれば必ず全部やるということではなくてこちら側の判断でやるということでございますので、先生御懸念の非常に遠く離れたところについて適用があるのではないかというのは、そこで解決ができる問題ではなかろうかというふうに思います。
○山崎力君 それはちょっとどうかなと思うんです。これは共同訓練する場所をこのACSAによって決めているわけでもございませんし、さらに国連平和維持活動、人道的な国際救援活動の場所を特定しているものではないわけでございます。
  例えば、我が国がアフリカにおいて国際救援活動をする、あるいは平和維持活動をするといったときに、まさにその現場において協力するアメリカ合衆国軍隊に物品提供をするということは可能ではないかとこの文章から思うんですが、それが後方支援というような形になるのかどうか、その辺はどういうふうになっておりますか。

○政府委員(折田正樹君) 例えば、共同訓練の場合でございますけれども、日本とアメリカが共同訓練をしている場合に、共同訓練の円滑な実施のために行うわけでございますので、その場合に米軍と自衛隊が一緒に共同訓練をしているわけですから、おのずとその距離から言うとそう遠く離れたところということにはならないんじゃないかというふうに考えるわけでございます。
○山崎力君 国連平和維持活動及び国際救援活動においての場合はどうなんでしょう。むしろ問題はそちらの方だと思いますが。
○政府委員(折田正樹君) 後方支援という観念でございますけれども、これは正面作戦と区別する観念でございまして、正面作戦を支援するために必要な補給、輸送、整備、衛生、通信、調達、管理等の業務を行うことが後方支援でございまして、この協定に基づいて行われる物品または役務の提供というのは、後方支援業務において提供されることが通常想定される種類のものを言っておるわけでございます。
  具体的に何かということですと、二条の第二項に列挙されている「食料」以下十五の区分に係るものがこの協定の対象となっているわけでございます。
○山崎力君 時間があれなんですけれども、今の御答弁でも、それでは国際連合の平和維持活動、国際救援活動に前線と後方があるのかということを質問したくなるわけでございます。
  ですから、私が最初に言いましたように、英語においてのロジスティックというのはそういったものの概念と別の、まさに兵たん、補給という概念でございます。それを「後方支援」というような形で訳すから、その「後方」に引っ張られて、訓練の場合はアフリカ沖で訓練することはないでしょうけれども、平和維持活動並びに国際救援活動というのは全世界的に行われるべきものとして考えるわけですから、そのときにおいてアメリカ軍とのこういったACSAのことが、予想はしていないかもしれないけれども、この法律の範囲内としてあり得るわけでございます。そのときに、後方支援活動という言葉自体が日本語としてなじまないケースがあるのではないかということを私は先ほどから申し上げているわけでございます。御答弁は結構でございます。
  次に移らせていただきます。
  二条におきまして、なぜ弾薬だけを抜き出して、これはだめであるよというふうにわざわざお書きになったのか、教えていただきたいと思います。

○政府委員(折田正樹君) この協定を締結するに当たりまして、どの分野に適用するか、それからどういう物品または役務を提供するのが適当であるかということで日米間で協議をしたわけでございますけれども、弾薬の場合につきましては、米側がその提供につき特段のニーズがないということから、日米合意の上で弾薬を外したわけでございます。
○山崎力君 今の御答弁は、この条文を入れたのはアメリカ側の要望であったというふうに解釈してよろしいでしょうか。
○政府委員(折田正樹君) 日米双方で協議した結果でございます。
○山崎力君 そういったニーズが余りないからどうとかこうとかというのは、こういった協定にはなじまないのではないかと思うんです。ある場面において列挙した部分、そういったもののニーズが、それではほかのところで列挙した部分で果たしてどの程度のニーズがあるんだということを点検の上そういったことでやるならばともかくとして、そういったものの中で弾薬だけ特段に抜き出して「解してはならない。」と言うようなことというのは果たしていかがなものかという感じがするんですけれども、いかがでございましょうか。
○政府委員(折田正樹君) これは日米間でどういうものをこの協定の対象にすべきかということで議論をした結果、ニーズがないのでこれは外そうではないかということで外したわけでございます。
○山崎力君 それでは、ニーズがあるかないかということについて、逆に言えば、食料、水、宿泊、空輸を含むそのあれは、すべてニーズがあるというふうなことで列挙したというふうに解釈してよろしゅうございますか。
○政府委員(折田正樹君) これは自衛隊と米軍の関係者がいろいろ検討した結果、どれが必要でという検討の上で、一応このニーズがあるということで挙げたわけでございます。
○山崎力君 この辺が有事、集団的自衛権といった絡みを気になされての政治的な表現でないことを私は希望しておきたいと思います。
  それで、最後になりますが、先ほどの野沢先生からの御質問の中にもあったんですが、このACSA協定自体は平時をもとに考えておられて、有事のことについては全然らち外であるというか考えていない協定であるというふうに御答弁いただけたものと思っております。
  ただ、それを前提といたしますと、問題は、要するに今まで共同訓練においては相互融通していたことを明文化して単にやりやすくするというような協定の意味合いだけならば、これほど大げさにする必要はないような気もするんです。
  ということは、アメリカ側とすれば、日米間の米軍及び自衛隊の協力関係、相互融通関係、そういった意味においては、かつて言われたインターオペラビリティーですか、兵器の共用性、兵器だけではない、通信その他の共通のものを持って同盟の一つのあれとするということでFSXその他の問題がかなり言われた経緯もございます。
  そういった日米関係の中においてこういったものをつくっておいて、これからも一生懸命そういった訓練をしておいて、あるいは相互融通をしておいて、一朝有事の際に、訓練はやりますけれどもそうじゃないときは私は知りませんよと、こういったことをこの協定自体が表現するとしたら、これは逆の意味において有事の際の日米関係の妨げになるのではないかという危惧を私自身は持つわけでございます。
  質問の意味がおわかりかどうか確かめさせていただきたいんですが、訓練は一生懸命やります、協力関係は持ちます、自衛隊と米軍においてのあれはやりますよと。ところが、そういった訓練間で融通し合っていたものは一番重要な有事の際はやりませんよと。では何のための訓練なんだ、何のためのいわゆる融通協定なんだということが、関係者はわかるかもしれませんが、一般の国民としては、特にアメリカ側の国民世論としては何だということを考えてしまうのではないかという危惧を持つんですが、外務大臣並びに防衛庁長官の所見を伺って、私の質問を終わらせていただきます。

○国務大臣(池田行彦君) まず最初に、この協定は平時のものであって有事のものではないというふうに理解するというお話がございましたが、先ほどから御答弁申し上げておりますのは、これは有事、平時という、そういった角度から、そういった切り口から規定されていない、こういうことでございます。共同訓練、PKO、人道的救援活動、そういう切り口からとらえております。
  そして、いわゆる有事というのは、国際法的な定義がございませんけれども、これが戦闘行動が行われているというそういった状況、事態だというふうに考えますならば、そのような事態の中で戦闘行動を行っている米軍の部隊に対する協力というものはこの協定ではできません。しかし、そういった戦闘状況にあるものとは切り離されたところで別途共同訓練なりPKOが行われている場合、それに対してこの協定で協力ができるかできないかといいますと、これは論理上、協定の規定上は排除されておりません。しかしながら、それをするかしないかというのはまた別の判断があると、こういうふうに御答弁を申し上げております。
  それから、いわゆる有事に際してどうするんだと、訓練についてだけこういった相互協力をやって有事はほったらかしかという点でございますが、その点につきましては、文字どおり、先般の首脳会談で発出されました安保共同宣言の中で、例えば「日本周辺地域において発生しうる事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合における日米間の協力に関する研究をはじめ、日米間の政策調整を促進する」という、今申しました研究ということがあるわけですね。そういったことについていろいろ研究をしていくということでございますし、また別途ガイドラインについても見直しを開始すると、こういうことはうたわれているわけでございます。
  そういった中で、一体何を具体的に研究していくのか。これはまだ作業が始まったばかりで、これからではございますけれども、いろいろこういった事態に対してどういうふうな協力があるかという研究を進めるということで御理解いただきたいと思います。
○国務大臣(臼井日出男君) ただいま外務大臣の方からお話がございましたとおり、この協定は国連平和維持活動、共同訓練等に用いると、こういうことでございます。いわば切り口が違うということで、有事、平時といった概念を使用しておりません。
  したがいまして、極東有事や我が国有事における米軍の戦闘行動、作戦行動への協力への物品または役務の提供というものは、そういうものはされないということは明確になっておりまして、そのことは日米ともに考え方は一致をいたしているところでございます。
  他方、先般の日米安全保障共同宣言で、我が国周辺地域で我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合の日米協力についての研究を進めるということで合意がなされました。また先般、総理から御指示がございまして、対米協力のあり方を含む緊急事態対応策の研究というものを政府部内で進めるということになりまして、検討が開始されておるところでございます。
  私ども防衛庁といたしましては、御指摘のような事態における対米協力のあり方、どうあるべきかということについては真剣に研究すべき問題である、このように考えております。
(後略)