質問「『アメリカとの付き合い方について』他

(平成9年4月16日参議院日米安全保障条約の実施に伴う土地使用等に関する特別委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 平成会の山崎力でございます。三先生に特措法をめぐる御意見を伺ってまいりたいと思います。
  まず、岡崎先生にお伺いしたいんですが、いろいろな国際情勢の分析の中から沖縄の基地というものの重要性を指摘されました。その中で、まず一番最初にその点で問題にしたいといいますか、考えてみなければいけないのは、確かに地政学的に沖縄の基地というものは重要だということを認めた上で、ただこういった住民感情あるいは歴史的経緯のある中で、多少の効率の低下は覚悟の上で、沖縄の基地を本土に移転するとかあるいはグアムとかそういった別のところに移転することで代替できないかということが考えられるわけですが、その辺についての御意見をまず最初に承りたいと思います。

○参考人(岡崎久彦君) それはもうおっしゃるとおりでございまして、私が理解しておりますところでは、それを橋本・クリントン会談で合意いたしました。それで普天間の返還も決まりました。後はその合意を実施するためにSACOを設けました。それで、SACOの報告が昨年十一月に出ました。それを今誠実にやっているというところだと私は了解しております。
  最近のニュースによりますと、北海道は分散を受け入れるという話を伺っておりますし、それから山口県もそうなんですね。それから、ほかの自治体も積極的に沖縄と負担を平等に持とうという立場で動いているようでございます。したがって、これは日米合意の線に従って日本の国内も協力して進んでいると私は了承しております。
  ただ問題は、日米間で既に合意してそれを今着々としている、各地方自治体も協力している、これが正しい方法でございまして、それが何年かかるかわかりませんけれども、それができる前にまたアメリカに追加要求を出す、これは国際信義に反するわけでございます。だから、それは慎みつつ、これはあくまでも橋本・クリントン会談の両国間の合意に従ってその内容を誠実に充実していくということが政府の方針であるべきだと私は思っております。
○山崎力君 おっしゃるとおり理解するわけでございますけれども、それでも、例えば今のSACOの問題にしても、国内に移転されたとしても沖縄の方にとっては極めてこれは不十分な内容である。特に、面積的あるいは実質的な影響度からいって嘉手納の空軍基地あるいは北部演習場、そういった重要なところの面積的にも広いあるいはバイタルなところを占めている土地というものを、もし将来、沖縄の人たちが満足できるかどうかは別として、仮によしとする程度まで、表現を変えれば本土並みの基地まで沖縄を持っていくということにした場合、今のアメリカの戦略が続行されていると仮定すれば、それが非常に予想されるわけですけれども、その点について、例えば嘉手納が具体的に言えばグアムのアンダーソンに持っていけないかとか、あるいは東南アジアの、もう一回クラークというわけにもいかぬでしょうけれども、そういった施設を受け入れてくれる国があればそういったところに日本の資金で基地を移転させるとか、そういったことが軍事技術的な面として交渉対象にならないのかどうかということをちょっと追加の形で教えていただきたいと思います。
○参考人(岡崎久彦君) 現在のSACOによる措置でも沖縄に不満がある、その現実は私も承知しております。ただ、そういう事情も織り込み済みで、それで日米間で合意したものと思います。ですから、現状におきましては、この日米間の合意を忠実に実施する、それ以外の方法はないと思います。その結果も不公平は残ります。
  これはむしろ広く考える必要があるのでございまして、結局、沖縄はもちろん日本の一部でございまして、日本という大きな船の中の一つでございます。沖縄というところは例えばエンジンルームに近くてうるさくて暑い、だから不公平だということでございまして、その負担をある程度みんなで分けようということをやっているわけでございますけれども、完全に分けられるはずのものでもございません。といって、エンジンをとめれば船は難破して沈みますから、そうすると沖縄も一緒に沈むと、そういうことでございます。その場合は、結局そういう負担を負っている方に別の形でもって補償する、それがいろいろな沖縄に対する援助とかそういうことであると私は思っております。
  だから、将来軍事技術がすっかり変わった場合の話は、それは別の話でございます。あるいは朝鮮半島情勢が全部片づくとか世界が全く平和になってしまうとか、そうなった場合はまた全然別の話でございまして、それはそのとき考えればいいわけであります。ただ問題は、そうなったら、例えば朝鮮半島が片づいたら引くんだというようなことを今から言うということは、これは変わる前から言っても大体意味のないことでございますし、それは引くべきだということを示すという意味でアジア諸国に対して動揺を与える、それからアメリカの議会に対しても、日本は望んでないんだ、望んでいない基地をどうしていつまで置くんだ、そういう議論も出てくるという意味で、これは慎むべき議論と思っております。
○山崎力君 それに関連して、もう一点だけお伺いしたいと思うんです。
  これはちょっと角度を変えるわけですが、そういった世界情勢の中で、アメリカの軍事力、プレゼンスの度合いを日本の国益という立場から考えた場合、アメリカはアメリカの国益で動いており、両国の国益観が一致したところが現状の軍事力を含めた日米関係だと思うんです。そういった中で私が危惧することは、アメリカというのは世界的な中、グローバルな中での情報をすべてある意味では独占に近い形で保持しておりまして、それでしかも明確な国家戦略を持っている。これは覇権という言葉が適当かどうかわかりませんけれども、世界のローカルカンパニーになろう、ローカルネーションになろうという考えは一切ない。いつまでもグローバルな形で世界にコミットしたいという気持ちが国家戦略、国益としてある。
  そういった中でのアメリカに対応して、日本が今の政治、外交あるいはある意味で言えばインテリジェンスといいますか、情報の収集の中で、そしてもう一つ、国家の考え方、国家の方針として、果たしてアメリカとそういった意味で対等な交渉ができる体制にあるのかどうかということを非常に危惧するものですけれども、先生、その辺のところのお考えを教えていただきたいと思います。

○参考人(岡崎久彦君) まず、大きな国家戦略でございます。
  これは私の持論でございますけれども、日本は島国でございまして、これはもう明治維新以来、要するに近代的世界になってからでございますけれども、常に世界を、海洋を支配しているのはアングロアメリカン世界でございまして、これと仲よくしている限りは必ず日本の国民は安全でございます。その上に、世界の資源に全部アクセスできるという意味で日本の国民は繁栄いたします。安全で繁栄すれば、これはもちろん自由も欲しくなる。結局、日本が一番安全で繁栄して、しかも自由だったのは日英同盟の二十年間と日米同盟の五十年間でございまして、アングロアメリカン世界との同盟というのは日本の利益であって、むしろ日本の利益だからやってほしいので、それをいかにしてこれがアメリカの利益でもあるかということを説明するのがむしろ難しいぐらいでございます。
  情報の問題でございますけれども、これは私、実は本当に情報ばかり、それだけやっているのであります。私の意見では、情報というのは一次情報、どこに何が起こった、それから人工衛星で見たらこういうものがあった、そういう情報よりも一番大事なのは、これは一体どういう意味を持つかということの総合判断でございます。これが一番大事でございます。
  その場合、もうこれは歴史的経験でございますけれども、過去三百年、四百年、世界の情報をずっと全部一番持っているのがイギリスで、それからアメリカでございます。これはアメリカやイギリスの専門家、識者と始終接触して、我が方の情報も出して、それに対して我々の意見も言って向こうのコメントを求める。また、そういう自由な意見交換ができる社会体制を持っておりますので、それをしておきますと情報の中心というのがぶれないのでございます。これが孤立しておりますと、三国同盟のときのような状況になりますと、これはドイツが勝つと思ったり独ソ戦がないと思ったり、非常に偏った情報になってしまう。あんなものは一般的な常識で見ていればわかる話なんです。
  ですから、私はハードウエアよりもアングロアメリカン世界と仲よくするということが情報の一番いい方法だと思っております。これは学校で言えば、一番成績のいいグループと仲よくしていれば試験の動向も何もわかりまして大体失敗しないのでありまして、落第生と一緒になっておりますと、これはもういかに情報を集めてもだめなんです。
○山崎力君 仲地先生の方にお伺いしたいと思います。
  どっちに転んでも法に違背する状況がある。そのうち、苦渋の選択としてどちらを選ぶべきかというお話を伺いました。
  ただ、その中で、私どもと若干意見を異にするのは、今度の特措法に関して、法律というのはもともと現状を変えるときに非常に神経を使いまして、現状がそのまま続くということに関しては余り、肯定するといいますか、そういったものがあるものだというふうに理解しております。
  ですから、今度の特措法の問題で、もしこれがだめだということになれば、それが自動的に地主の方々に土地が返還されるというような形のものでしたらこれは非常に大きな意味合いを持つんですけれども、多くの方が認めておられるように、タイムラグはあれ土地収用委員会が現状変更を認めない、認めないというか今のままでよろしいだろうという答申が出ることはほぼ予想された前提に出ているわけです。
  要するに、五月十四日までは軍事基地として使用がオーケーだと。それから、土地収用委員会が裁決を下してオーケーが出た後、これはいつになるかわかりませんが、それから以降も軍事基地としての使用はオーケーだと。その期間どうするか、どういう権利関係を持たせるかということだとすれば、その部分を法的にスムーズにつなげるという考え方は当然出てきていいのではないかと思うんですが、その辺についてのお考えを伺いたいと思います。

○参考人(仲地博君) 収用委員会で審理中は使用権原を認めてもいいのではないか、いずれ収用委員会は使用の裁決をするはずであるからという御質問ですね。
  収用委員会の任務というのは、補償金を定めることと、それから強制使用の期間を定めることが主要な任務であるわけです。しかしながら、今回の法改正で却下の場合も想定したように、却下の場合もあり得るということであるわけですけれども、収用委員会で審理中は法的権原がないと絶対に困るのかということであるわけです。
  現実に楚辺通信所、いわゆる象のおりでは明確な法的権原がないまま国は使用しているわけでありまして、それが他の基地においてもそういう状態になるということで、それで特に基地の機能に影響があるというわけではないというのが楚辺通信所の示しているところであるわけです。
  国がいわゆる不法占拠をしたら、これは国にとっても望ましいことではありませんけれども、しかし基地の管理権はアメリカ側にあるわけでありまして、そしてまた地主の方が返還訴訟を起こしましても裁判所がそれを即認めるというのはまず考えられない、過去の判例からも考えられないことでありまして、法的権原がない状態を恐れる必要はないのではないか。先ほど言いましたように、形式的に法治国家の外形を整えるよりは、実質的な法治国家の道を着実に歩んだ方がいいのではないだろうかということであります。
  法的権原がないというのは国にとっては避けたいというのは理解できないことではありませんけれども、法的空白状態を背景にすることによって、国民の基地に対する議論あるいは沖縄において基地をどうしなければならないのかという議論が促進されるのではないかということに期待をするわけです。
○山崎力君 その立場というのは非常に理解するんですけれども、私ども本土の人間からすれば、今度の特措法の問題というのは、要するに法律を改正するとか実質をどうするとかということでなくて、沖縄の方々にとっては自分たちの置かれた環境といいますか状況を本土の人たちによりよく理解してほしいという一種の情報発信のために、これが主なる目的であるというふうに受け取れる今のお言葉だったんです。
  現実に言えば、今まで発信し続けて余りにもそれに対する対応がなさ過ぎたという現実もあるわけで、そういった形で受けとめるとすれば、もちろん受けとめた以上はそれに誠実に対応するという義務を我々は負うわけですけれども、沖縄の方とすれば、そういう受け取り方をする人間が本土におるということに関してはどのようにお考えでしょうか。

○参考人(仲地博君) 法的空白をつくり出す、そのこと自体が目的ではないわけです。結果として生じた法的空白を契機にしまして沖縄の基地のあり方というのを考える機会になるというのは大変結構なことだと思っております。
  そして、先ほど申し上げましたように、きょう私がお話ししましたことは国会の役割ということでありますけれども、実質的な法治国家の道を法律というのは求めるべきではないだろうか。
  そういう二つの側面から、形式的な法治国家よりは実質的法治国家を求めて法的空白を選んだ方がいいのではないだろうかということでございます。
○山崎力君 山本参考人にお伺いいたします。
  最後のところで、たしか時限的立法というような表現をされましたが、私自身はこの問題に関しては限時法を持ってくるというのは余り賛成できないといいますか、この沖縄の基地問題というのは一にかかって最高政治、外交の課題でありまして、それを縛るような法律をつくるのはいかがなものかというのが一点。
  それから、もしそれが切れた場合、政治的に利用される。これは軍事基地でもなかった成田空港における一坪地主の問題とか強制収用のいまだ完了しない問題とか、そういったことを考えれば、そういったごく一部の方でしょうけれども、イデオロギー的にそれを利用しようとする方には非常に武器を与えるという気がして、限時法という形をとるのはいかがなものかと思っているんですが、その辺についてのお考えを伺いたいと思います。

○参考人(山本武彦君) 先ほど最初の意見陳述のところでも申し上げましたように、この特措法を改正するに当たっての立法過程で、大変時間的に限られた短い時間の中で国民の権利義務にかかわる重要な問題を行ってきたということについては、私は立法過程論の立場からいって好ましいものでは決してないというふうに思いまして、主たる論点としてそういう問題点を指摘したわけでございます。ですから、アメリカの将来のアジア戦略がどう変わっていくかということも見据えた長期的視点に立った議論というものをすべきだという意味からも、時限的立法にして、そして五年たった後これをまた議論するということでどうなんだろうという問題を提起したわけでございます。
  もう少しこの問題は早い段階から明らかになっていたわけですね。昨年の例の楚辺通信所の問題がございました。そのときから政府がこういう特措法という改正問題をなぜ提起しなかったのか。そこに、先ほどの話の類推で申し上げますと、政府は宿題を与えられたらその問題の解決にすぐに取りかかるけれども、問題を考えて自分で宿題を課して、そしてこれを解いていくという、どうもそういう姿勢に欠けているのではないか、官僚国家の大変悪い、弱点ではないかなという感じがいたします。
○山崎力君 終わります。
(後略)