質問「豪州リンゴの輸入凍結期間について

(平成9年6月5日参議院農林水産委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 平成会の山崎でございます。
  せんだって、橋本総理がオーストラリアへ行かれた際に、前向きにということで輸入解禁という方向で動いていたオーストラリア、タスマニア産のリンゴのことに関しまして、オーストラリアで火傷病が発生したと、こういう実にタイミングがいいというか悪いというか、そういった問題が起きておりますので、このことについてお伺いしたいと思います。
  まず、火傷病という病気自体、リンゴを中心としたバラ科のナシとかスモモとかそういった果物類に対する病気であると、しかもそれが非常に典型的な病気であるということで、関係者にとっては非常に神経を使う病気だというふうに認識しておりますが、その辺も含めてオーストラリアの火傷病の発生状況がどうなっているかという点、お伺いしたいと思います。

○政府委員(高木賢君) 火傷病につきましては、先生御指摘のとおり、果樹類に感染をいたしまして甚大な被害を与える病害であります。したがいまして、我が国におきましては、植物防疫法に基づきましてその発生国からの寄主植物の輸入を禁止しております。
  オーストラリアにおきましては、これまで火傷病が発生したという記録がなかったので、これまで火傷病の寄主植物であるサンザシとかナナカマドなどの輸入を認めておりました。ところが、先月十五日、メルボルンにあります植物園で、コトネアスターという観葉植物でありますが、このうちの二本に火傷病が発生しているということが確認されたという情報が豪州側から提供されたわけでございます。その後どうかということでございますが、豪州では火傷病の発生調査を今実施しておりますけれども、今のところはメルボルンの植物園以外での火傷病は発見されていないという状況でございます。
○山崎力君 そういった意味からいくと二通り考えられまして、一つは、ないところに起きたというのは極めて重要だということが一点あります。ということは、伝染経路がわからないと非常に不安が残るという点。もう一つは、ないところだから、そこさえきちっとやればそこで問題は終了するであろうと。楽観的、悲観的、二つの見方があるんですが、日本からそういう調査の方を派遣したということも聞いておりますけれども、その辺の報告とあわせて、どのようにオーストラリア側では対応しているか、また日本側ではどういう状況にあるのかということをお聞かせ願いたいと思います。
○政府委員(高木賢君) 先ほども申し上げましたように、メルボルンの植物園で発見されたということから、豪州におきましては直ちに発見地点から半径十五キロメートル以内の地域からの火傷病の寄主植物の移動を禁止するということをいたしました。と同時に、豪州全土におきましての火傷病の発生調査を実施中ということでございます。それから、その後でありますけれども、豪州はメルボルンを含むビクトリア州から寄主植物を他の州に移動することも禁止をいたしました。
  現在、豪州におきましては火傷病調査のための専門家のチームを編成いたしまして、まず一つは植物園を中心に半径三十キロメートルの範囲の地帯、これを徹底的に調査する。これは果樹園に限らず植物関係です。それから、豪州全土におきまして、リンゴ、ナシを栽培しているすべての果樹園を対象に調査を実施中であるというふうに承知をいたしております。仮に、火傷病に感染している疑いが少しでもある植物が発見された場合に、最新技術による精密な診断を実施する体制を整えている、こういう状況でございます。
  そこで、今申し上げた豪州の状況でございますが、我が国としては火傷病発生の連絡を受けた時点で、まず緊急の措置として豪州政府に対しまして、豪州から我が国への火傷病の寄主植物の輸出の自粛を求めました。それから、タスマニア島を含む全土での火傷病発生調査の実施を要請いたしました。それを受けて今申し上げたように豪州で全土の調査をしているわけでございます。
  それから、我が国の専門家を派遣いたしまして、しかと豪州側で火傷病の対応ができているのかどうかということを確認させていただきました。それはどういうことかといいますと、火傷病の検出なり診断方法、これが適切であるかどうか、それから周辺の寄主植物の調査なり豪州側の調査体制、対応体制がきちんとできているかどうかということで派遣をいたしましたが、この帰国後の報告によりますと、適切な対応措置はとられているということを確認しているところでございます。
○山崎力君 そうなってきますと、前の話に戻った形ですけれども、先月の早い時期、たしか二日だったと思いますけれども、タスマニア産のリンゴの解禁に関する公聴会が開かれまして、反対は多かったわけですが、制度上の問題から入れる方向だというふうにお聞きしておりますが、この件に関して現状はどういうふうになっておりますでしょうか。
○政府委員(高木賢君) 御指摘のように、五月二日に公聴会を開きました。これは同じく病害虫でありますコドリンガの検疫措置を対象にして行われたものでございます。コドリンガに関する検疫措置に関する公聴会としては、これは有効だと思います。ただ、この火傷病というのはそれと別の問題として発生したわけでございますから、そのコドリンガの話とは別に火傷病自体として適切な対応をとらなければならないというふうに考えているわけでございます。
  どういうことかといいますと、やはり豪州本土に火傷病の発生が見られたという以上は、ただいま継続され実施されております豪州当局によります火傷病の発生調査によりまして、タスマニアに火傷病が発生していないことが確認されること、これが第一点。それから第二点は、タスマニアへの火傷病の完全な侵入防止策が講じられていること。これがやはり必要ではないかというふうに考えておりまして、このことは既に豪州側にも通知をしているということでございます。
○山崎力君 ということは、確認でございますけれども、今の状況ではこれまでの一連の輸入解禁へ向けての作業というものは凍結された状況にあると理解してよろしいんでしょうか。
○政府委員(高木賢君) ただいま申し上げたように、タスマニアに火傷病が発生していないこと、それからタスマニアヘの火傷病の侵入防止策が講じられること、この二つが確認できなければその先へは進めないというふうに考えております。
○山崎力君 そうしますと、今おっしゃられたように、発生していない、あるいは侵入防止策が万全にとられている、こういうことだと思います。
  そうしますと問題は、手前勝手な言い方で言えば、タスマニア産のリンゴがいつ入ってくるのかということを心配といいますか、対応を迫られている日本側の関係者にとりましては、これからどういうふうな形で推移していくんだろうかというのが一番の関心事であろうと思います。もちろん火傷病が入ってくるということは問題外でございますけれども、その辺のところが一応どういう形で、どういう時期になれば農水省が動き出すのか。あるいはその前提となる、今おっしゃられた要件をオーストラリア政府側がどういう形でいくのか。
  私、素人ですから火傷病の発生を確認する検査というものがどのくらいかかるものなのかということもよくわかりませんが、そういった点を含めて見通しといいますか、今どういうふうな状況にあって、これからどうなりそうだというところをわかる範囲で結構ですので、教えていただきたいと思います。

○政府委員(高木賢君) 豪州の全土におきます調査が終わりまして、タスマニアにも火傷病がないということの確認がまず必要だと思います。すなわち、まず調査が終わらないといかぬというのが一つございます。
  次に、申し上げましたように、火傷病の侵入性がないと、これのどういうことをやるかという措置について御説明をいただく必要があるというふうに考えております。それにつきましての我が国専門家、豪州側がそう考えたからといって直ちにそのとおりで結構だということにもなりませんので、専門家による技術的な観点からの検討が必要だというふうに考えております。そうなりますと、やはりまだ調査の進捗状況等から見ますと、なかなか短い期間にそういう解禁手続を進めるということが可能な時期は来ないんではないかというふうに思っております。
○山崎力君 単純に素人考えでも、若木といいますか若芽といいますか、そういったところがやられて、結果、つまり実が結ぶ方にいきにくくなる病気だというふうに聞いておりますので、本当にそこまで調べるのであれば、時期的に一年単位の未発生の確認といいますと、季節が反対ですからその辺の問題というのはあろうかと思うんですけれども、相当程度時間はかかるんではないかなというふうに感じているわけです。
  もっと具体的に申し上げますと、今回のこういった解禁が、ちょうど季節が逆なもので非常に想像が難しいんですけれども、日本をひっくり返して考えれば、六カ月引いてリンゴのいわゆる出荷時期というのが五月か六月くらいだろうと。現実にオーストラリアでは五月ころにはもうリンゴがとれているとすれば、そのリンゴが保てる時期にオーケーが出るのかどうかというのがまず一番の問題。いわゆる今年産のリンゴが今後の進展状況の中で、日本に輸出する時期にこの問題が間に合うのかどうかというのが具体的に言えば一番問題になろうと。その次には、来年度産のリンゴができるまでにこういうのが結果が出るのかなというのが次の問題になろうかと思うんです。
  今のお話ですと、最低限ことしになってからオーストラリアでできたリンゴについては日本に輸入されることがないであろうというふうに受けとめてよろしいでしょうか。

○政府委員(高木賢君) これは相手の事情もありまして、断定といいますか確定的な判断をするのは難しいわけでございますが、まさに日本の月に直せば五月から八月ぐらいまでが輸出のシーズンであろうと思います。現在、既に六月にもなっておりますので、甚だこのシーズン中の輸入ということにつきましては、率直に言って疑念を持っているというところでございます。
○山崎力君 それからもう一つ、聞くところによりますとといいますか、事実の問題として、さっきおっしゃられたように、いわゆるタスマニアというのは豪州本土と相当離れている大きな島ということで、豪州サイドとしては、本土には若干残っているけれどもタスマニアにはこれはもうなかったんだと、これは全部調べた。それで、豪州本土からの輸出規制もしておるということによって、豪州本土のやつはともかくとして、我々日本との関係で問題となるタスマニア産のリンゴについては問題なしということを主張してくる可能性が将来十分あると思うんです。
  その辺についての見解といいますか、要するに、そこまで言われるとしようがないということなのか、いや、やはり国としてのオーストラリアに火傷病の疑いがある以上はストップするのか、その辺はどういうふうに考えればよろしいでしょうか。

○政府委員(高木賢君) タスマニアは御指摘のとおり豪州本土から約二百四十キロ離れております。それから、この病害虫は虫のたぐいのように飛ぶわけではなくて、菌でございますので、その辺の事情もありまして、いずれにしても豪州本土に発生する病害虫が自然に侵入するということは考えられないわけであります。現に我が国は、既にタスマニアはミバエ類とかたばこべと病につきましては本土と切り離した無発生地域ということで認定をしておる実績がございます。この火傷病につきましても豪州本土と切り離して無発生地域というふうに認定することができる地域というふうに考えております。
  なお、火傷病は先ほども言いましたけれども、ミバエとは違いまして自然の分散力といいますか、弱いものであるということも考えますと、本土と一体で切り離せないということはなかなか主張しにくいものと思っております。
○山崎力君 受け入れをなるべく避けたいという立場からすると残念ですが、技術的なことからいけばそういうことであるというふうに認識せざるを得ない、こういうふうな形で、次の問題に移らせていただきます。
  今のオーストラリアの問題、向こう側の問題はここまでといたしまして、我が国の方の次の作業として、当然のことながら公聴会の問題が出てこようと思うんです。
  先ほどおっしゃられたように、この間の公聴会はコドリンガをどうするのかということでの公聴会で、前提としてはオーストラリアに火傷病はないんだということになるわけでございますが、当然のことながら火傷病対策の公聴会を開けという要望が出てくると思うんですけれども、今の時点でまだ先の話ということだと思うんで、恐縮なんですが、その辺についての今の時点での判断がおありでしたらお聞かせ願いたいと思います。

○政府委員(高木賢君) タスマニアに火傷病が根づくというのも変ですが、ある程度定着しているということになりますと、これはほっておけないんで、まず輸入禁止区域にしなければいけないという問題があります。しかし、そうではなくて、何もそもそもやっぱりなかったんだということになれば、必ずしも禁止区域にする必要はないと、こういうことになると思います。いずれにしても、その事実がどうなるかということでその後の対応は変わってくる、そういう状況にございます。
○山崎力君 そういう感じだろうと思っていたんですが、ただ、生産者側、関係者側からしますと、やはりそこが一番役所の制度的な面から来るところと、それから国民感情というと大げさかもしれませんが、理屈としておれたちはコドリンガの話を言うためといいますか、聞いてもらうために公聴会を開いたんだ。それで、タスマニアとオーストラリアは違うと言いながら、我々は国との関係ではオーストラリアからリンゴを入れるんだと、そのオーストラリアに火傷病が発生して、タスマニアは関係ないということで、公聴会もそのことで開かずに入れるのかという反発が予想されるわけでございます。これはいい悪いの問題ではなくて、その辺のところを十分に踏まえて対応策を練っていただきたいということをお願いしまして、最後に大臣にお伺いしたいんです。
  この問題というのは、広くいえば植物検疫、動物検疫全般の問題になろうと思います。それで、ボーダーレス社会、世界ということで、人間の動きも激しいと同時に植物、動物の動きも、これは生きたままという問題は別としまして、非常に大きくなっていると。そして、なおかつ人間の伝染病の場合も同じように、ないところに発生した、だれかが持ってきたんだ、だれの責任だと、あるいはどこの国から来たんだというようなことを、外交的に相手の国を責めるというような状況に今までございませんで、やはり発生したらそれを防ぎ得なかったその国の責任ですよと、こういうことに今の世界はなっているわけです。
  狂牛病という病気が欧州で物すごい問題になったということも記憶に新しいわけで、その辺の今後の農水省としての検疫をどのように持っていきたいのか、持っていくべきだと考えていらっしゃるのか、大臣の所見を伺いまして、私の質問を終わらせていただきます。

○国務大臣(藤本孝雄君) 御指摘のように、この問題は非常に大事な問題でございます。私どもといたしましては植物検疫制度、この問題について病害虫の侵入の可能性が増大をしているということでございますから、この病害虫の危険度に応じた一層的確な検疫を実施するために、植物防疫法を一部改正して本年四月一日から実施しているところでございます。
  この法律改正におきまして、重要な病害虫につきましての検疫の強化措置として、輸出国政府に対して栽培地における検査を求める道を開くなど新たな制度を導入したところでございます。また、検疫体制、これも大事でございまして、植物防疫官を今後逐次増員をいたしまして、植物防疫所の施設を整備し体制の整備強化に努めてまいる、そのような考え方でございます。
○山崎力君 終わります。
(後略)