質問「土砂災害のハード・ソフト対策について

(平成9年8月29日参議院災害対策特別委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 平成会の山崎でございます。
  ちょっと今回の視察報告とは外れますけれども、きのうきょうという問題で、北海道で起きました国道二百二十九号線第二日糸トンネルの崩壊事故について少しお伺いしたいと思います。
  昨年の同じ国道の豊浜トンネルの事故と非常によく似た形態でございまして、幸い今回は今のところ人的被害が確認されていないということでございます。端的にお伺いしていきたいと思うんですが、豊浜トンネル事故以降その辺のところの点検をなさっておられて、今回の場所も一番危険なところであるということで対応がとられようとしていたというふうに報道されていますが、その辺の状況からお伺いしたいと思います。

○説明員(林延泰君) お答え申し上げます。
  今回被災いたしました一般国道二百二十九号第二日糸トンネルの瀬棚町側坑口部は、北海道開発局が豊浜トンネル崩落事故を踏まえて実施したトンネル坑口部等緊急点検において、より詳細な調査を行い、対策の要否について検討すると判定されたわけでございます。それは平成八年三月のことでございます。
  その後、詳細な調査を行った結果、対策を必要とすると判定されました。平成八年九月のことでございます。このため、平成八年度より緊急対策の実施に着手いたしまして、平成十年度完成をめどに、巻き出し部上部に発泡スチロール等により斜路をつくりまして、落石の緩衝を図るとともに、岩塊を海上へ誘導する工事を実施していたところでございます。しかしながら、当工事は今回のような規模の崩落を想定したものではなかったとの報告を受けております。
  なお、今後の恒久対策といたしまして、大規模な崩落等に関し、本箇所を含めまして約五キロの区間において総合的な防災対策の検討を進めていたところと聞いております。
  一般国道二百二十九号には、トンネル坑口部等緊急点検において対策が必要と判定された箇所が第二日糸トンネルも含めまして四十五カ所ございます。平成十年度までに必要な防災対策について実施しているところでございますが、八月二十七日に設置いたしました一般国道二百二十九号第二日糸トンネル崩落事故調査委員会の結果を踏まえまして、安全の確保に努めたいと考えております。
○山崎力君 今の御報告の中にもありましたが、要するに一言で言えば、対策は講じていたけれども、その工事が完了していても今回のような規模であれば、下に通っている人がいれば被害は当然防ぎ切れなかったという内容であろうと思っております。
  それで、ほかのところにもかなりあるというふうに受けとめたわけでございますが、しからばそういったいわゆる防災工事の想定するといいますか、どういう程度の崩落があるかという想定が極めて重要な課題だろうと思うんです。これは今回の被災地、針原地区の砂防ダムについても言えることでございますけれども、その辺のところの点検がどのようになっているのか、適当だったのかどうなのか。今回の場合十分ではなかったと報告を受けているということですけれども、これからすべて再検討するということなんですが、その辺はどのような報告を受けておられるのか、お伺いしたいと思います。

○説明員(林延泰君) この二百二十九号線につきまして、先ほど私述べましたように、要対策の箇所がこのトンネルを含めまして四十五カ所ございます。昨年のこの点検の後、その後時間もたっておりますし、また、雨の問題ですとかあるいは凍融雪害等の関係もございまして、特に必要と思われる箇所につきましては専門家等の意見を聞きながら調査を進めてまいりたいというふうに考えております。その場合、やはり今回設置されました調査委員会の結果を参考にして対応させていただきたいと考えております。
○山崎力君 もう一点、確認の意味ですけれども、この四十五カ所というのは、昨年からの問題でいえば、トンネルのいわゆる出入り口付近あるいはトンネル自体というような形の意味合いにも受け取れるんですが、道路通行上からいけば、普通のトンネルでないところのああいったがけ崩れといいますか、岩石崩落ということも当然考えられるわけです。その辺の点検も含めての数字なのかどうなのか、確認のためお伺いしておきたいと思います。
○説明員(林延泰君) 今回申し上げた数字は、トンネル坑口部の点検でございます。
○山崎力君 そうすると、一般的ながけ崩れというものは別にまだあり得るということで、その辺のところの対策がどうなっているかというのは、ちょっと事前通告とずれるかもしれませんが、実情は把握なさっておりますでしょうか。
○説明員(林延泰君) のり面につきましても調査を行っておりまして、それについていろいろとまとめている段階でございます。
○山崎力君 それでは、北海道に関しましてはこの程度にいたしまして、この間視察させていただいたいわゆる土砂災害についてお伺いしたいと思いますが、現実のところ、針原地区あるいは坂本村に行ってまいりました。
  一つは直接人家には関係ないところでございますけれども、もう一つはもう非常に悲惨な、いわゆる集落の壊滅状態のところを見させていただいたわけです。そういった土砂災害の危険箇所というものは、先ほどの報告の中にも鹿児島県内での数字がありまして、まだほとんどといいますか、大部分が砂防ダムができていないといったしか鹿児島の知事さんからの話があったように記憶しますが、全国的に見てこういったものは、今の現状というのはどのようになっているのでございましょうか。

○説明員(山本正堯君) 今のお尋ねでございますが、土砂災害の危険が想定されます箇所につきましては、建設省、農水省、林野庁等で調査をしていただいておりますが、それで合計、土石流危険渓流につきましては先ほど御報告がございましたように七万九千カ所、それから地すべり危険箇所につきましては二万一千カ所、それから急傾斜地崩壊危険箇所につきましては八万七千カ所、それから山腹崩壊危険地区につきましては約十一万カ所、崩壊土砂流出危険地区につきましては約十一万カ所となっておるところでございます。
  また、これらの整備状況につきましてはこれらの事業によりそれぞれ異なっておりますけれども、おおむね二割から四割の整備状況となっておるところでございます。
○山崎力君 そこでなんですけれども、ここのところで二点問題意識を持ちたいと私自身は思っております。
  それは、一つは先ほどの北海道にもかかわりますけれども、対応策として、被害想定と同時に規模の想定、これが針原地区の場合は想定されたものの何倍もの、それこそ十倍くらいの土砂が流れてきている。しかも、私が行って素人目で見ますと、坂本村の場合はかなりの急傾斜地で、あそこが崩れてもまああり得るかなという気持ちがあったんですが、針原地区の場合は普通の穏やかな山腹が、子供が砂のあれをほじくったみたいな形ですとんと下流に来ている。あそこが崩れるんだったらあの辺どこが崩れてもおかしくないというような印象を受けたわけでございます。
  ある意味でいえば、あそこが危ないということで砂防ダムをつくられた専門家の炯眼というものは確かにすばらしいものがあると思うんですが、その一方で、規模の推定を誤ったといいますか、残念ながら被害を食いとめることのできる砂防ダムをつくることができなかった。
  そういった点で、今まで専門家の方がいろいろ御苦心なさっていると思うんですが、その二〇%から四〇%のできたというところを果たして規模的に再点検しなくていいものかどうなのかということが一つございます。
  それからもう一つ、今御説明の中にもありましたけれども、建設省とか農水、林野、各省庁それぞれの担当のところで危険箇所を想定して対応を講じられているというふうに受けとめるわけですけれども、その辺のところで、対応策としてスタンダードなものが省庁間であるのかどうかという点が問題かと思うんですが、そういったところをいわば束ねる形の国土庁としてどのようにお考えかお伺いしたいと思います。

○国務大臣(伊藤公介君) 政府としては、従来から土砂災害対策を今御指摘のように総合的に推進するために土砂災害対策推進連絡会議というものを設けておりまして、土砂災害の対策推進要綱を定めて、国土保全事業の推進、防災体制の整備など、土砂災害予防対策や災害発生時における応急対策などについて総合的に施策を展開していたところでございます。
  国土庁といたしましても、これまで中央防災会議あるいは土砂災害対策推進連絡会議の事務局として関係省庁との調整を務めてきたところでございます。御指摘のように、総合的に対策を立てていく必要があるというふうに認識をいたしております。
○山崎力君 総論として今長官からのお話だろうと思うんですけれども、その国土庁が事務局としてという立場、いわば調整的な形なんですけれども、今回の土砂災害、そういったものについての国土庁としての考え方といいますか、対応策というものが現時点においてどの程度のものがあるのかお伺いしたいと思います。
  それから、先ほどの点で申せば、そういった推定のところで事務方として、被害推定のそこは各省庁に任せているんだということであればそれで結構ですが、いわゆる事務方、調整省庁としての役割をどのようにお考えになっているかお伺いしたいと思います。

○説明員(山本正堯君) ただいま長官からお答え申し上げましたけれども、国土庁としまして土砂災害の対策推進要綱を定めまして、その中で土砂災害に対する基本的な考え方を各省庁で意思統一をさせていただいております。それにあわせまして、具体的な予防対策、それから応急・復旧対策等々について、個別具体に各省庁と連絡をとりまして要綱で定めさせていただいております。
  なおまた、この要綱を受けまして重点的な申し合わせ事項をさらに関係省庁で申し合わせをさせていただいているところでございまして、こういう土砂災害につきまして、国土庁が調整役になりまして関係省庁と十分連絡調整をとりながら推進をさせていただいているところでございます。したがいまして、被害の規模、どういうような施設をつくるかとか、そういう具体的な事業につきましては関係省庁でそれぞれお考えいただいている、こういう状況でございます。
○山崎力君 ということは、一応この間私どもが視察させていただいた針原地区あるいは坂本村の急傾斜地の問題、そういったものについてはそれぞれの省庁の専門家による施設によってやっていくんだと。それで、そこのところをどういうふうに束ねるかということについての連絡調整、総合的な対応策について国土庁が事務方としての作業をしているというふうなお答えだろうというふうに受けとめさせていただきます。
  さて、そこでの問題なんですけれども、これはこれからの問題も含めてなんですが、私どもがそういったところを見たときに、素人目に見て、先ほども申し上げましたけれども、こんなところでこんな災害が起きるのかという部分と、ここだったらいつ起きてもおかしくない、よくこういうふうなところでとどまっているといいますか、そういったものがあるなというふうに受けとめられるところとあるわけでございます。
  ありていに申せば、私が自衛隊のヘリコプターに乗せていただいて上から見ますと、坂本村周辺においては小規模ながけ崩れといいますか、崩落の地点が各所に見られました。ところがそれは全然手つかずの状況であったわけでございます。その理由としては、これはいわば自然の摂理でございますから、ああいったものがあれば、地形あるいは降雨量、そういったものから見て崩れていくというのはこれはむしろ自然なことでございまして、その自然を自然のまま放置しておいていいという部分と、それが人間あるいは人間がつくろうとしているいわゆる田畑あるいは森林というものについて被害を及ぼすところと、そこの違いが一番大きな問題だろうと思っているわけでございます。
  ですから、それほど別に直接被害のないところが多少崩れてもこれは災害復旧にはならないと、当然のことでございましょう。それで逆に言えば、そこのところが多少土砂崩れがあっても、人家に近い、集落に近いところで砂防ダムをつくって食いとめれば一番効率的といいますか、そこでいいのではないかというのが一番感じたところでございました。
  その意味で、針原地区の場合は周辺にそういったものがほとんど見られない、普通の何の被害もないようなところであそこだけがすとんという形で落ちているということで、非常に奇異な感じといいますか、非常に意外な感じを受けたのも事実でございます。ですから、逆に言えば、そういったところの人たちが、自分たちの今までの経験からして、そういう被害に遭うことはないであろうということを考えていたこともまたうなずける面があるなというふうに思っておりました。
  そこで、そういった前口上の後でございますけれども、似たことで言えば、前に秋田県の鹿角市で大規模な土石流がございまして、この場合は、前の委員会でもお尋ねしたんですけれども、現地に住んでいる方が前兆現象を非常に早くキャッチしまして、行政の対応も素早くて、規模等は非常に大きかったんですけれども幸い人的な被害はなかった、建物だけの被害であったと。現場を視察した同僚議員のそういう報告を受けていますけれども、やはりそこのところが、住んでいる人がそういった気持ちでいるかいないかということが人的被害を及ぼすか及ぼさないかということに関しましての大きな差になってくる。もちろん幸運がその背景にあったということもあるんですけれども。
  そういった意味で、予防ということとはちょっと意味が違うわけですけれども、防災という意味からいけば、我々人間社会の組織といいますか仕組みが被害を防ぐ。いわゆる砂防ダムがハードウェアだとすれば、人間関係のソフトウェアの面が非常に大きな面になってくるのではないかという気がしております。
  その辺について、各省庁間の連絡調整ということだけではなくて、ある意味においては危険箇所を、どのような危険があるのかということを被害に遭うと想定される地元の人たちに事前にどのように徹底しておくかということが、まさに防災というソフト面からいけばこれからの一番重要なポイントではないだろうかと思っておるわけでございます。
  そういった意味において、今国土庁の防災関係としては、中央防災会議その他で各省庁がやっている、具体的な対応策については各省庁間に任せているんだというふうなお話でしたけれども、被害を受ける住民からしてみれば、その防災施設がどの省の担当かというのは関係ないわけでございますから、その辺のところを束ねるのはやはり国土庁の仕事ではないだろうか。まさに防災局ということであって、災害が起きてからの災害対策局ではないわけですから、その辺をこれからどうやっていくのかということを、最後になりますがお伺いしたいと思うわけでございます。
  まず事務的なことがあれば局長から、締めくくりとしては長官からお伺いして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

○説明員(山本正堯君) 今、山崎先生がおっしゃいましたように、防災関係につきましては、ハード面も大変重要でございますが、おっしゃるように予防、それから救命救助等も含めましたソフト面が非常に重要であるというふうにも私ども考えております。そういう点につきまして、私どもとして推進要綱をつくり、あるいは重点的申し合せをし、関係省庁に十分連絡をさせていただいております。
  関係省庁におきましては、それぞれ危険箇所についてのマップをつくり、それぞれの具体的な周知徹底に努めておるところでございますが、それらにつきましても、私どもまたそういう会議等でもより関係省庁のそういう施策について周知徹底をさせていきたい、充実させていきたいというふうに考えておるところでございます。
○国務大臣(伊藤公介君) 委員の御指摘をいただきましたように、こうした土砂災害等につきましては、当然ハード面とソフト面、総合的に対応することが極めて大事だというふうに思っております。
  やりとりがございましたように、ハード面については進行中であります。まだ完璧だと言える状況ではない中で、ソフト面において、どういうところが危険な箇所であるか、そうしたことを周知徹底をする、あるいは情報を提供する、そういうことが極めて大事だというふうに思っております。
  またもう一点は、日本全国には御指摘のように非常に危険であろうという地域が数々ございます。これは、これからいろいろなハード面の対策を立てていってもなお危険は常にあるんだろうと思うんですね。そういうところは皆さんそれぞれにとってはふるさとですから、なかなか国がとか行政がということはできませんけれども、住民の皆さんの協力をいただいて、例えば集落ごと新しい地域に移転をする、そういうこともそれぞれの地域では試みられているところであります。私は、非常に危険が多い日本列島の中ではそうしたことも新たな視点から考えていく必要があるのではないか、さまざまな災害の現地を訪れるたびにそんなことを痛感しているところでございます。
  いずれにしても、ハード、ソフト面、総合的に我々は対応していく必要があるというふうに考えております。
(後略)