質問「自然・人為複合災害への対応について

(平成10年4月9日参議院国土・環境委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 細かい中身の問題に入るといいますか、それ以前の問題でこの問題は我々として、我が党としても賛成でございますので、一つの法律の基本にかかわるところで、これは国土庁さんの方にもかかわるところが出てくると思いますが、若干お尋ねしたいと思います。
  と申しますのは、この災害復旧という言葉の災害が、資料によりますと第二条で「異常な天然現象に困り」ということで自然災害のみを想定しているわけですが、この理由というのはどういうことでこういうふうになったんでしょうか、昭和二十六年という古い法律なんですけれども。

○政府委員(尾田栄章君) 戦後、昭和二十年以降、昭和二十二年九月あるいは昭和二十三年九月、キャスリーン、アイオンというような大台風が日本を襲いました。大変大水害が頻発をしたという背景のもとに、ああいう敗戦後でございますので災害復旧に地方の財政が大変逼迫している中で、災害復旧、特に日本のように自然災害が多い、こういう地形、気象条件のもとでの対応策ということで、シャウプ勧告が昭和二十四年だったと存じますが出されました。その上で、こういう災害の負担について国庫で負担をすべきだと、そういうもとに昭和二十六年、この公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法というのが定められたと理解をいたしております。
  そういう意味合いで、戦後の打ち続く水害、それが背景にあったというふうに存じます。
○山崎力君 これは国土庁さんの方の話になると思うんですが、いわゆる防災といいますか、災害対策基本法というのは自然災害ではなくて人為災害も含めているということなんですが、その意味で言えば災害復旧する、これは形態は一応想定している、どういうふうにもとに戻すというのは、いろいろ今度公園を含めるというような形で想定しているわけですけれども、そこのところで言えば、原因が自然であれ人為的なものであれ、そこに住んでいる人たちにとってみれば復旧したいのは当然のことでございまして、そういったもので差が出るということがちょっと私には理解できない。
  災害対策基本法はたしか人為災害を含んでいると思うんですが、その辺の関係はどういうふうに考えたらいいかということを、これは国土庁さんの方の担当になるんでしょうか、ちょっと教えていただければと思います。

○説明員(木寺久君) 御指摘のとおり災害対策基本法におきましては、自然災害のみならず事故災害も対象としているわけでございます。したがいまして、災害の原因が自然現象であるか事故であるかにかかわらず、非常災対本部の設置等活動対策を整えて政府一体となって対応しているところでございます。
○山崎力君 ということになりますと、立法時点での気持ちというのはよくわかるんですが、一方では、別の立場での、担当省庁は違うとして、いわゆる人為災害と私は表現していますけれども、人のなしたといいますか自然でない場合の災害対策、そういった大きな災害対策もあり得るということで想定しているわけです。
  と申しますのは、これは非常に大規模なことになってきているのと、私がそのことを感じたのはナホトカ号の問題でございまして、あれは暴風雨による自然災害だとロシア側は主張しているわけです。阪神・淡路は大災害を起こしましたけれども、あれは早朝ということでまだ余り人の動きがなかったということで、我々がぞっとするのは、例えば新幹線があのとき通っていて何百人あるいは千人単位で死んだ。そういうときに鉄橋というかコンクリート橋の橋脚が壊れてそこから落ちたといった場合、これは自然災害なんだろうか人為災害なんだろうか。
  局長の担当であられる川の問題で言えば、ダムが壊れた、それでそこから洪水が起きた。こういった場合、ダムが壊れるときに例えば許容量を超えるような急激な水量の増加で壊れた、あるいは欠陥工事で壊れた、もう一つ言えばダムの放水のタイミングを規定していたものを管理者が誤って放水してしまって被害を出した。こういった場合、複合汚染という言葉があったんですけれども、自然と人との複合災害という可能性が十分出てくる。
  そういったときにこの法律はどう対応するんだろうということが正直言って見えてこないわけでございます。その点についてちょっと教えていただければと思います。

○政府委員(尾田栄章君) この負担法の限りで申しますと、これはあくまでも公共土木施設が被害を受けた場合の災害復旧を行うに際しての負担のあり方を定めたものでございまして、一般被害に対してどうするかということは、先ほど先生御指摘のとおり災害対策基本法寺別の法律体系で処理せられるべきものだというふうに感じております。
  それから、ダムの操作に関してでございますが、ダムはもちろん洪水調節を目的として持っております。そういうダムにおきまして洪水調節を超えた洪水が起こった場合、その場合でも上流から流れ込んできた水を増量することなく洪水ピーク時においては下流に放流をする、そういうことによってダム自体の安全性を確保する、そういう放流施設を設けておるところでございまして、そういう意味では洪水に対して安全な形のダムをつくるということで我々は対応しておるというふうに考えております。
○山崎力君 いろいろな災害に対しての復旧措置ということは当然いろいろな法律でなされているわけで、今問題になっているのは公共土木施設という一つの限られた法律の審議でございますけれども、さはさりながら、私が先ほど申し上げたことが公共土木施設の災害に及ぼさないとは限らないわけでございます。
  例えば、現実にあった問題ですけれども、県管理のダムが大きな雨で危険水位を超えるようなことになってしまって、そこのところで放流せざるを得なくなった、それが下流において一部弱いところで堤防等の決壊を生んだ。こういう事例が現実には幾らでもあると思うんです、私の知っているのは一回ですけれども。
  そういった場合は、まさに公共土木施設に災害があった、これを自然災害とすればそのとおりの対象のものになる。ところが、そこのところでダム管理者の放流のタイミング、危険水位でこれ以上水がたまるからやろうか、あるいはそこで予定外の放流しなくてもダム自体はよかったんじゃないか、こういう洪水を起こすような水量にはならなかったんじゃないか、これは事後的に検討されるわけですけれども。そのときに管理者の過失があったのかなかったのかということで考えていきますと、まさにこの問題ですら人為災害の余地が十分あると私は思うんです。そういった点、ここは全く今までノータッチで、まさに自然災害だけを問題としてきた。
  都市の公園なんということに入ってきますと、それこそ都市の河川なんか、すぐ川沿いの公園が被害を受けるということは可能性としては、一番脆弱な部分ですから出てくることは十分考えられるということを考えますと、その辺の御検討をいただく時期に来ているんじゃないかなという気がしているんですけれども、その点いかがでございましょう。

○政府委員(尾田栄章君) ただいま御指摘をいただいたような事例、非常に大雨が降って、その上でダムがあっても被害を受けた、それが公共土木施設が被害を受けたというような場合には、この災害負担法の枠内で公共土木施設の復旧を行うということになると考えております。
  洪水の定義といたしましては、各河川にございます量水標の水位が警戒水位以上になった場合というのが対応になっておりますので、そういう事態におきましては当然この負担法の対象となるというふうに考えます。
  ただ、先ほど御指摘をいただいておりますようなナホトカ号と申しますか、外部から何か事が起こってきて、それに人為が絡んでどうと、そしてなおかつそれが公共土木施設に被害を及ぼしたという場合については、今までのところそういう事例もございませんし、現時点においてそれがどういう事象なのかはっきりいたしませんと、個別の案件について具体に被災をした施設の状況と被災に至った異常天然現象というものをどう考えるかというところをよく詰めないと結論が出てこないのではないかと存じます。
○山崎力君 個別の観点からいけばそのとおりだと思うんです。
  これは国土庁さんの方のあれになるのかもしれませんけれども、いわゆる災害のときに、昔の我々の感覚というのは自然災害にどう対応するかということだったわけです。前の災害特で私は言ったんですが、いわゆるナホトカ号のような場合、その補償は原因者がいるわけだから私人間の問題だというような形で対処すると、そこのところの救済のための工事その他公的な負担というものは、いわば先取り特権的な問題になってしまって、法律でこれはその分取らにゃいかぬということになっていると思うわけです。
  そこのところで一つ問題になっているのが、全然別の事件で言えばオウムの問題で、その被害をまず国側、国というかそういったものがまず取れる分取る、それから被害者に分ける。これではあんまりだから議員立法で権利放棄をさせようじゃないかというのが今出てきているわけで、そういったことが災害にも、これからこういうふうな高度社会になってくると想定できない部分はないわけです、理論的に言えば。
  原子力開発の問題もあれば、大規模のダムだって後で壊れてみたら欠陥工事だった、これは人為災害だということだってあり得るわけです。それから、先ほどの点でいけば新幹線とか高速道路なんというのは地震が来て壊れるはずはないということであったわけで、そこのところでもし欠陥が工事その他であれば、これは自然災害なのか人為災害なのかというのは極めて判定が困難な問題でございます。
  ですから、そういった意味でトータルとして申し上げたいのは、災害というものをなぜか我々はもう直に自然災害だというふうに思い込んでいる節があるんですが、これからは人間の起こした災害、それともう一つ言えば自然災害といいますか自然の力プラス人間のつくったものとの複合においての災害、これについての被害というものをどう救済していくかというのは、原因別に簡単に分けて自然災害だけ考えていればいいんだという時代ではなくなっているんではないかというふうな気がしているわけで、そういった点でこの法律もその中の一部に含まれるんではないかというふうに私は思っているわけでございます。
  その点について、局長なり大臣なり、あればお答え願いたいと思います。

○政府委員(尾田栄章君) この法律の枠組み自体はあくまでも自然災害を対象にして、しかも施設そのものも公共土木施設に限っている、こういう法律体系でございますので、先生御指摘のような災害原因が人為的なもので、なおかつその被害自体も公共土木施設以外の一般被害を含んだような、あるいはより広い概念としての被害というようなものについては負担法の範囲を超えた議論だと存じます。
  ですから、そういう新たな災害と申しますか、そういう異常な事態にどう対応するかということについては、これは国土庁さんの方の所管でございますが、現時点においては災害対策基本法の枠内で処理をされていくものだというふうに存じます。
○山崎力君 その点同じ災害でございますので、省庁間の連絡、将来一緒になるということもあるわけでございますから、御検討願いたいということで私の質問を終わらせていただきます。
(後略)