質問「『ダイオキシン問題について』他

(平成10年5月12日参議院国土・環境委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 改革クラブの山崎でございます。
  今いろいろな先生方から、主に環境ホルモンとダイオキシンについての質問がなされてまいりました。その辺のところについて、またなるべく重ならないような形で質問させていただきます。
  まず、ダイオキシンから入りたいのですけれども、その基本認識をどう持つのかということを改めてここでちょっとお伺いしたいと思います。問題の所在はどこにあるんだと。要するに、母乳にあるのか、土壌の汚染なのか、あるいは空気中にそういったことはないとは言われておりますけれども、体内摂取の問題なのか。それで、催奇性があるとかがんの原因になるとか、こういうふうに言われておるわけです。
  環境庁としては、このダイオキシン問題、存在するのは悪いと思い込んでいる部分があるんですけれども、本当にこういうことがあるからこれは存在を許してはいけないんだと、ある一定程度のレベル以下に下げにゃいかぬのだという基本的なところはどうお考えでございましょうか。

○説明員(廣瀬省君) 先生の御質問でまずダイオキシンに対する認識ですが、動物実験の結果によると、強い発がん性、催奇性、生殖毒性等多様な毒性を示す。なお、WHOも発がん性に関して完全に認めるという立場に変わってきたということを踏まえれば、当然ダイオキシンは動物実験以外に人体にも影響を与えるものと認識すべきものと考えております。そして、ダイオキシンは環境中で分解しにくいということがまず一つと、それで蓄積性がそのために大変高いという問題があって、一度蓄積されると将来にわたって問題を残すというふうに考えております。
  そういう人の健康の未然防止という観点に立てば、大臣が先ほどから申されているとおり前もった形でどういう対策が立てられるのか。では、その対策をとる前に何をもって知るのかということになりますが、やはり動物等で観察されていることは人に対しても起こり得るという立場で物を考えるべきではないかというふうに思っております。
  そのために、現在あるダイオキシンの量をこれ以上ふやさないためにどうするのかというふうに考えておりまして、その実態把握をしたわけでございます。それで、研究会の報告では、現在の状況をこれ以上悪くしては問題が起こってくる可能性が多いとしております。ですから、早急にその対策をとるようにというのが研究会からの報告でございます。
  そしてその第一番目は、まず大気への排出が大変大きいということを考えまして、大気汚染防止法施行令の改正というものを含めてダイオキシンの発生抑制をするということでございまして、それによって五年以内に約九割減少するという計算をしながらその対策を中心に動いている。しかし、それ以外にもまだ起こる可能性があるので、フォローを続けながら、減らないときにはまた問題点を指摘しながら対策を立てていくことを考えていくというふうに思っています。
  それから、先ほどからいろいろと提言されているように、産業廃棄物処理施設の改善ということを頭に置くためにも、この融資制度を含めながらいかにこれを進めていくのかということに注意を払っていく必要があると思っておりまして、もうはっきり申しましてこれ以上ダイオキシンはふやしたくない、そのためにあらゆる手だてを講じてまいりたいと考えて、関係省庁と連絡をとって進めてまいりたいというふうに思っています。
○山崎力君 時間の関係もありますので、簡潔にお答え願えればと思います。
  要するに、今のお話ですと、人間の体内にどの程度ダイオキシンがあるのかということを前提にして、人間の体内に取り込まれなければいい、外界というか外にありましても。ところが、そこのところの部分の説明がなされていない。
  それからもう一点言わせていただければ、これ以上ふやしたくないと言うのなら、まさにプラスゼロの世界で、それをできるだけ早くやらなきゃいかぬということになれば、五年計画で九割削減だなんというのはある意味においては言葉の矛盾でございまして、今出ている排出量をこれ以上ふやしたくないのか、現実に日本に存在するダイオキシンの量をこれ以上ふやしたくないのか、これはどちらなんですか。

○説明員(廣瀬省君) 具体的に現在たまっているものについては時間をかけるほかないので、これ以上排出をしていって環境中の量をふやしたくないという気持ちでございます。
○山崎力君 そうであるならば、先ほど来の意見ということからいえば、私は非常に不十分であると言わざるを得ないのが現状ではないかと思うわけでございます。
  その点で、本当に産業界に対する要請というのも、これも先ほどのあれで言えば塩ビをどうするんだということから始まって、その辺の対策を具体的に打ち出してそれに金を使う方が、むしろいろいろな研究とかそういったことをするよりも先決じゃないかなという気さえするわけです。これは環境庁の所管ではない可能性があるのですけれども、全体の環境行政のことからいけば、とにかく今ある塩化ビニールの製品を回収して取りかえる、その費用は国で持つとした方が将来のダイオキシン発生に対しては私はむしろその方が効果的ではないかと思うわけでございます。
  それで、その次の問題として、このダイオキシン、全国的に調査なされる、対応策も考えていろいろデータも出ているということなんですが、これをどの程度の精度でどの程度の機関がどの程度の費用でしっかりしたデータを出しているのかということが専門家以外の国民にはわかっていない。ただ、いろんなところが調べているんでしょう、信用しましょう、こういうことになっているわけですけれども、環境庁が直接調べることもあるでしょうし、大学あるいはその他の民間の研究機関、私立大学等の研究所、いろいろなところでこれはできると思っているんですが、その辺の我が国の体制というのはどうなっておりますでしょうか。

○説明員(廣瀬省君) 先ほどもダイオキシンの測定にかかわる精度ということで、国民に信頼されるようなやり方をしなさいという意見が出ました。先生からも同じでございますが、具体的にこれだけの事業を行うことによって一番心配することは先生と同じでございます。
  そのためにどうするかということになりますと、具体的に大気汚染マニュアル測定方法、いろんな意味でダイオキシンとか含めて持っているんですが、これが具体的に事業者とどういう関係で結ばれるか、確認作業をどうするかということをしておりますが、これは先生、二重試験法とかいろんな形でありますが、機械の性能について必ずキャリブレーションといいまして、やる前に必ず測定をした数値を出します。その精度を見て測定値と合わせていくという形になりますから、当然お願いするときにそういうやり方で行う。それから、このマニュアルと合わせて相手の業者と話し合って決めるというやり方で、逐一精度管理をした上で今回のお金が入りました一斉調査はそうしてまいりたい。
  それによって、今先生のおっしゃられている精度管理も含めて今回出す日本全国のダイオキシンの濃度ということについては信頼の得られる体制をまずつくりたい。それを基本にしながら各市町村の関係者が議論していただくという体制を早急につくりたいというふうに思っております。
○山崎力君 本当にそういった意味では対応策をとらなきゃいかぬのだと一斉に言われているんですが、その対応策の前提となる基礎データ、調査研究というものが、法律の関係で言うとおかしい表現になるかもしれませんけれども、証拠として相当たる手続をとられた証拠になっていない、法廷用語で言いますとそういう感じがするわけです。ようやく今のお話でちゃんと決まりました、今度一斉にやるんですということが言われてきたと思うんです。
  それで、今の御答弁にはありませんでしたけれども、これが出ますとそれぞれのところで、それでは我々のところは大丈夫なのかという話が絶対出てくるわけです。そのときに、町村単位でもあるいは市町村単位でもあるいはもっと狭い地区のところでも、もし本当にその辺のところのデータが正しいといいますか正確なものであるならば、我々のところも調べてもらいたいという希望が僕は出てくると思うんです。その辺の費用、今のいわゆるマニュアルにのっとったことをやる費用、そういったものを受け付けてくれる、そういったものがどの程度あるのかということが全然私どもにはわかりませんので、その辺のところ、環境庁で資料をお持ちでしたらちょっと教えていただきたいんです。
  どの程度の数のものがあって、それはどの程度の費用で一般からの自治体とかそういったものからの調査をやってもらえるのか、こういう点です。

○説明員(廣瀬省君) まず、試験研究機関は約五十程度あるというふうに思っております。
  そして、先ほど申したマニュアルを通じてきちっとやる体制があるかどうかということに関しては、私の方で入札をしていく過程の中で今回は全部チェックできるというふうに思っております。その時点でこの五十の機関に希望していただければ、当然僕らの方のチェックにかかるということになるかと思っております。
  そして、値段については、一般競争入札的な形、要するに試験研究機関の数がある程度決まれば、その範囲内で一般競争入札をしていただいて、コストは自然状態の中でどうなるかというふうな形をとっていくのが一番よろしいかと。
  つまり、行政側としては、きちんとした性能を保つ、そしてより安い値段でお願いできるということを目指すのが今後の地方行政もそうであると思っておりますので、そういう相談を受ければそういう姿勢で担当部長は臨むように指導してまいりたい。相談を受ければその気持ちを表明する。ですから、行政的に何かを決めるのではなくて、きちっとしたこちら側の責任でどういうふうにお金を使うかという視点から指導してまいりたいというふうに思っております。
○山崎力君 確かに行政的からはそうかもしれませんけれども、この問題というのが先ほどもおっしゃられたような極めて厳しい状況であるならば、それぞれの心あるといいますか、自治体なりあるいは民間団体なり、そういったものがちゃんとしたところで、自分のところも網にかからなかったけれども、やりたいというところが出てくるとすれば、それがきちっとした適正なコストでちゃんとしたデータをもらうというシステムがこれからこの問題については出てこようかと思いますので、その点のフォローを国としてもよろしくお願いしたいと思う次第であります。
  それと関連しましてといいますか、調査の問題として、今回の補正予算でも環境ホルモン研究等をやる。それで、資料をいただきましたけれども、五億とか二億八千万とかといういろいろな研究用の分析費用を持つ。こういうものがこれから、ダイオキシンをスタートにと言うとおかしいんですけれども、環境ホルモン全体のものとしてこれは深刻であればあるほど必要になってくる、しかも高額である、専門家を必要とするということが出てこようかと思うわけです。そういったものが出てきて初めて、そこまではいわゆる学術問題、学者の専門家の問題でありますけれども、そのデータを踏まえて、行政あるいは立法の作業として国民に対してどういう対応策をとるかということになろうかと思うわけです。
  今までの話の流れをお聞きすると、非常に環境庁さんは、残られたから言うわけじゃないんですけれども、まだまともな方でして、対応策をやらなきゃいかぬといいますか、そういった通産であるとかあるいは農水、厚生といったところの答弁というのは極めて官僚的というか引いた形でございます。調査研究をまってと言いながら、そこのところの研究自体の方に問題を押しつけて、対応策についてなかなかみずから打ち出そうとしないという点は、先ほどの福本委員の質問の中にも出てきたわけでございます。
  その点で一つだけ全体としてお伺いしたいんですが、この検査について、かつて複合汚染という言葉が言われました。これは一つのものについてのデータは出ているけれども、二つ集まったときのあれは出てこない。これも環境ホルモン、ダイオキシンの場合は単独で出てきているわけですけれども、これは極めて重要なこれからの課題でございます。そういう意味で、先ほども話題になっておりましたけれども、各種のそういった安全基準の再調査、いわゆる環境ホルモンに関する安全基準というものの再調査といいますか再点検がこれから必要になってくると思うんですが、ここのところはまさにこれからの予算措置でやった機材を中心にそれぞれの研究機関が協力してやっていく、それで各省庁いろいろな連係プレーをやる体制をとっておりますということなんですが、その辺についてごく簡単で結構でございますから、現状を教えていただければと思います。

○説明員(廣瀬省君) 先生のおっしゃられる、一番気にしていることは複合汚染でございます。つまり、長期の期間で一兆分の一という単位の微量の問題を扱うときに、そしてホルモンというようなもので、ホルモンの量も約一兆分の一程度のホルモン量で動くという、体の中で作用をするわけでございます。
  そういう意味でいきますと、何かほかの物質とちょっと重なるととんでもない大変な動きをするだろうというのも研究者からの報告でございまして、少なくともその面を含めた研究体制をとる。平成九年度の中で具体的に複合的に環境のものをとって、それを動物に与えて変化が起こるのかどうかというような見方も、幾つかそういう手法をとってやってきているんですが、複合として出てくるのではなくて、一つ問題が出たということがございまして、複合汚染かと思ったんですが、これはやっぱり単体の汚染でございました。そういうふうになっているんですが、少なくとも今そういう技術を開発して、環境中から複合的にとって、その複合的なものを動物に食べさせたり何かして具体的な変化を見ていくという作業は取りかかっております。
  それから、そのことを含めて今後具体的にどのように持っていけるかというのは、研究所が具体的にいろんな提案をし、研究者にいろんなことを情報として流すことによって、複合汚染のとらえ方が生物学者のとらえ方、医学者のとらえ方とか、みんな学者ごとにとらえ方がちょっと違ってくると思いますので、その辺を見ながら、もう一度統一して学会を開くことによって、より洗練された研究方法へと発展するというふうに思っていますので、その辺のところを含めて指導してまいりたい、また協力をお願いしてまいりたいというふうに思っています。
○山崎力君 確かに、まさにおっしゃられたとおりでございまして、特に複合汚染の場合の非常に先端的なごく微量を相手にする問題であると思いますし、このホルモンの問題というのが極めて難しいのは、これはほっておいてもといいますか、自然界においても内分泌系の異常というものは病気として存在するわけでございます。ただ、それが外的な要因によって、撹乱物質によってその頻度が増すということが言われているわけでございます。
  今通常だったら、例えば一万例で一例しかないものが、それが百例になり千例になったと、だけれどもそのうち一例はもしかしたらもともとあったかもしれない、この差をどうするんだということのまさに数字的な確率的な問題がここに存在するということで、単に学術的な問題ではないということがあるわけです。そうなってくると、まさにその辺の対応策ということが、先ほども話がありましたけれども、いわゆる調査研究、政策立案の官庁から、実に対応策を実施していく役所になっていかなきゃ、脱皮していただかなきゃならぬ立場なわけでございます。
  それで、もうそろそろ時間でございますので、最後の私の結論的な問題に行きたいと思うんですが、先ほど最初の小州委員からの「アワー・ストールン・フューチャー」ですか、僕も若干にわか勉強で読ませていただきました。
  もともと生き物というのは、その存在自体で環境を変えることは必然でございまして、ほとんどの動物は炭酸ガスの排出源でございますし、植物は逆に酸素を出すということもある、その循環のバランスの中で生きているわけですが、我々人類というのは特に産業革命、近代化になってから抜群に、もう群を抜くというのはほかと比べものにならないほど環境の変化をもたらしてきた。そして、地球的規模の影響が出てきたというのは、せんだっての環境会議で大臣は身をもって経験されたことでございます。
  そして、この「アワー・ストールン・フューチャー」の最終章の中でこういう言い方をしております。地球には将来の青写真もなければマニュアルもついていない。人類は未来へ向けて猛スピードで飛んでいるが、それは無視界飛行にすぎない。有視界飛行でもない。信頼の置けるレーダーシステム、そういったものを開発していないし、目がはっきり見える、要するにずっと見える範囲のものが見えている有視界でもない。霧の中、雲の中をかろうじて目を凝らして飛んでいて、何が飛び込んでくるか、山が直前にあったら衝突するのを避けられないというような状況であるというふうに書かれております。
  そういった手探りの中でこの研究をしていかなきゃいかぬのだけれども、手おくれになればまさに人類滅亡と言っても大げさではない推論が成り立つ状況でございます。
  そういった中で、これからの環境行政、国としてほかのそれぞれ背負ったもののある業界とか生活者に対しての指導を各省庁を通じてどうやっていくのか。そして、まさにそういった意味で言えば、現在の我々の豊かな経済システム、社会システム自体を再検討する必要があるのではないか。そういうふうな点について具体的にこれから省としてどのような方向でやっていくかということを大臣にお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。

○国務大臣(大木浩君) 確かに、今お話ございましたように環境ホルモンあるいはダイオキシン、ダイオキシンの方はかなりその実情がわかりつつありますけれども、環境ホルモン全般ということになりますと、おっしゃいましたように有視界飛行ができないという状況があると思います。ですから、我々としては、環境行政としてはある程度わかりつつあるもの、あるいは今おっしゃった言葉を使わせていただければ確率の問題だと思いますが、かなり確率として大きい問題については、これはやはり対策を進めるということではないかと思います。
  そういう意味におきましては、例えばダイオキシンにつきましては、先ほどから申し上げでおりますように、まずは空中に散布しておるダイオキシンというものについてはかなり実情がはっきりしておりますから、これをできるだけ優先的にとめるということがありますし、さらにまた水とか土の中に入っていくもの、これは今度は人体に対する影響ということからいいますと、もしそういうものがあれば非常に直接的になりますから、これもまたそういう意味でのプライオリティーは考えなきゃいけない。
  それから、環境ホルモン全体につきましては、先ほどから言いわけがましいんですが、まだなかなか十分な知見は得られておりませんけれども、例えば先ほどからお話もございましたけれども、子供、特に乳幼児とかあるいは胎児は非常にそういったものに対する影響力が大きいのじゃないかということがありますから、そういったものはやはり優先的な課題として勉強していかなきゃいかぬのじゃないかというふうに考えております。
(後略)