質問「『防衛装備品水増し請求問題』ほか

(平成10年10月1日参議院外交・防衛委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 法務省の方おいでになっていますか。――最初にお聞きしたいと思います。
  先ほど来同僚議員から、四社事案の、東洋通信機はともかくほかの会社はマルなのかバツなのかというようなことのあれがありましたが、私もそれに関連して、大きな法律的な問題として浮かんできているのは、今、前の佐藤先生からも出ましたけれども、この一般会社における水増し請求というものが詐欺に当たるんではないか、そこが本件ではないかと。そこがはっきりしないから、逆に言えば、今回の、東洋通信機以外の会社に対する対応も、防衛庁側も何かうじうじというかはっきりしないものが出てくる、このように感じているわけでございます。
  釈迦に説法で、私の方が答弁される中身を先取りするかもしれませんけれども、もちろん今法務省として、検察当局として捜査中でありまして、その辺のところを視野に入れての捜査は当然なされていると思います。
  そこのところがはっきりするというのは、法律的にいえば恐らく今回の、起訴されておりますから初公判における検察側の冒頭陳述、ここのところで結論が出るということで、それまで待ってくれというようなのが私は法務省の態度だろうと。私が担当者なら逆にそう答えるだろうと思うわけですけれども、しかしながら、本件の場合、まさに分離できない状況なわけでございます。
  ですから、このことの結論というのは何カ月後になるかわかりませんが、どうせ初公判の冒頭陳述で明らかになるわけでございますから、その点を踏まえた上で、もし仮に法務当局としては詐欺で起訴はしないんだということが決定された時点において、国会の方にその理由ともども報告していただきたいと願うものですが、いかがでございましょうか。

○政府委員(松尾邦弘君) 現在捜査中の事件につきましては、先生まさにお述べになりましたように、検察側がこれをどうとらえているかということの詳細は公判の第一回、あるいは冒頭陳述の中で明らかにされるものと、あるいはその可能性が非常にあるというふうに申し上げられると思います。
  ただ、あくまで一般論として申し上げますと、一連の事実をどうつかまえるのか、あるいはどこで切り取るのかという問題によって被疑事実が変わってくるわけでございます。背任として立てたり、あるいは詐欺として問擬したりするということになると思いますが、それは捜査機関が収集しております証拠等を総合して判断いたしまして、その立て方の一番適切なものとして何がいいのかという判断をしまして捜査を進めているということになろうかと思いますが、検察はこれまでにもそうした立場で、そういった判断で適切に対処してきているものと承知しております。
○山崎力君 釈迦に説法を承知の上で申し上げさせていただければ、今回の事案、もし仮に詐欺として立件できないのであれば、水増し請求というものが可罰的違法性を持ったことではないということを明らかにするわけでございます。これは一般国民に対して、このようなことを行えばこのような罰を受ける、このような法律に、刑法に該当するということをあらかじめ示しそれを定型化するというのは、刑事政策上、近代法治国家における政府の大きな役割であると思います。
  今回、このような一つの事案ということで、一つ典型的に出てまいりましたけれども、明らかに故意を持った水増し請求というものを可罰的な違法性を持たないものであるというふうに、今回もし仮に詐欺で立件できないということになれば、そのような解釈をするのが一応法律をかじった人間からすれば当然であると思います。その辺のところを踏まえた上での対応を私はお願いしたいと思います。
  そうでなければ、今回こういったもので水増し請求があっても、そのことに対して、詐欺にもならぬ、民間人同士と同じような単なる貸し借りの問題だ、不当利得の問題だ、不当利得、これは計算ミスとかそういった過失によったことで生じる場合もあるわけですけれども、故意があったにもかかわらず、それを単なる不当利得で、それは当事者間の話し合いで解決すればいい、訴えるならば民事裁判に訴えろ、こういうふうな形に私はなりかねない問題だろうと思っております。
  何か私の判断、指摘について、専門家として問題点といいますか、解釈の相違、今までの法律上行われてきたことについて問題点があれば御指摘願いたいと思うわけですが、いかがでしょうか。

○政府委員(松尾邦弘君) 具体的な事件の内容についてここで立ち入るということはなかなかできかねるところでございますが……
○山崎力君 私はあくまでも一般論として申し上げているわけでございます。
○政府委員(松尾邦弘君) 一般論といたしまして、捜査機関が捜査中の事実についてそれをどのように評価しているかという問題は、いずれ刑事事件の公判で逐次国民の前に明らかにされることと思いますので、本件につきましても、刑事事件あるいは民事事件も付随してあるいは起こされるかもわかりませんが、そうした経過の中で、この事実を捜査機関としてどう評価したか、あるいは国としてどう評価するかということも逐次明らかになっていくものと思われます。
○山崎力君 やっぱり裁判所を相手にする検察という形、裁判を相手にする検察という形の御答弁だと思うんですが、少なくとも法務省の一員である限りは行政庁の一面を持っているということをお忘れないようにしていただきたい。少なくとも裁判で明らかにすればいいというだけではなくて、もちろんそれは一般国民からすれば、裁判の経過をよく読んでそれを参考にしなさいということは言えるわけですけれども、行政上、政治の場においてこれを明らかにしていくということが何倍も国民に伝わる、刑事政策上そちらの方がむしろ有効であるということは私なりに感じておりますので、その辺のところを法務省、検察庁にお願いしたい、このように申し添えて次の質問に移らせていただきます。
  次は、今回のNECの機密漏洩事件、バッジ・システムに関することなんですが、これはもう古い時代で、点検したけれどもよくわからなかったというのが報告でございます。ということは、逆に言えば、これはわかったんだけれども公にできないという部分もあるかもしれません。それはともかくとして、次に絡んでくるんですが、このバッジ・システム、もともとの開発というのはアメリカから入ってきてそれを応用したわけですけれども、古くなれば一般化するわけですけれども、今後の、次のミサイル防衛その他に関しても、肝心のところは、こんな漏れていて究明もできないような国に渡せるかというのが一番究極の信頼性の失墜につながるものだと思うんですが、その辺について防衛庁はいかがお考えでしょうか。

○国務大臣(額賀福志郎君) これは山崎委員御指摘のとおり、我々も我が国の防衛の根幹であるバッジ・システムについて、民間企業からであれ秘密が漏洩をしたということは重大な案件であるというふうに認識をしておりまして、そういう認識のもとに、改めてこれから契約企業の皆さん方に文書をもって秘密保持の徹底を図ると同時に、我々も点検をしていきたいというふうに思って、信頼関係を維持していきたいというふうに思っております。
○山崎力君 言葉じりではございませんで、私は漏れたことに対しての重大性を申し述べているんではないんです。もっと重大なことが、もっと機密管理の厳しい当時の米ソ冷戦時代の両大国から盗まれたということは幾らでもあるわけで、ただそれを繰り返さないために両国がいかなる、防諜体制というと大げさかもしれませんけれども、それをとるか。そして、それがあったときにそれをどう点検していくかというノウハウが信頼性の根
幹にあると私は思っているんで、今の長官の御発言からはその視点が抜けているような気がいたします。要するに、漏れたことが問題じゃなくて、どうして漏れたのかということが点検できなかった体制が問題だということを私は申し上げたいわけでございます。
  そこで、その次の問題として出てくるのが、先ほどの北朝鮮のミサイル発射の問題なんですが、それに絡んでTMDあるいは偵察衛星、こういった問題が出ております。
  そこで、私が考えておって非常に問題だなと思うのは、例えば偵察衛星一つにしても、我々がいかにお金をかけ年月をかけたにしても、現行のアメリカの体制を超えるものをつくるのは並大抵のことではないということを考えれば、今の現行程度のものでアメリカから情報提供がどの程度あったのかという問題、アメリカが全部こちらに、北朝鮮と限定していいわけですけれども、よこしてくれれば我々は偵察衛星も何も必要ないわけです。
  そこのところで、今回の北のミサイル発射に関して、これは防衛庁、外務省両方にお伺いしますけれども、どの程度の情報提供を申し出てどの程度の情報が来たのか、もちろん機密に関する部分はあるでしょうけれども、その辺の御認識を伺いたい。いかがでしょうか。

○国務大臣(額賀福志郎君) 今回の北朝鮮のミサイル発射に伴って、八月の中旬ごろからそれぞれ情報をいただいて警戒態勢をしいできたところであり、三十一日の場合も早期警戒情報をもらったわけでございまして、日米安保条約の信頼性に基づいて緊密な連絡体制をとったというふうに思っております。
○山崎力君 外務省、同じようなあれでよろしゅうございますか。
○国務大臣(高村正彦君) 同様の認識でございます。
○山崎力君 それではお伺いしますけれども、少なくともミサイル発射基地の詳細な写真、ある程度解像度は落としているんでしょうけれども、それの事前入手はされているんでしょうか。
  それからもう一つ、偵察衛星におけば、まさに発射時点での赤外線センサーの発射のダイレクトの探知というのは当然アメリカは、NORADかどこか知りませんけれどもやっていると思うんですが、それを発射した時点で間髪なく我が国にその情報をよこすという体制はとられていたんでしょうか。

○国務大臣(高村正彦君) おわかりいただけるだろうと思うんですが、情報収集活動の性格上、どういうものが来ていたとかそういうことは詳細に申し上げることができないんだということを御理解いただきたいと思います。
○山崎力君 そういうふうなお答えだろうと思うんですが、それならばもう少しいい対応ができてよかったんではないか。むしろそういう本来なら黙って内緒でもらうべき情報が入ってきていなかったんじゃないか。だからこそ、アメリカは頼りにならぬから偵察衛星を持たなきゃいかぬとか、いざとなったらアメリカは何するかわからぬ、非常にある意味じゃ反米的な国粋主義的な発言が今度の偵察衛星の開発の背景にあるんじゃないか。
  むしろ、もちろんアメリカとしてその辺のところをどこまでやっているかということを隠すということの問題点はありますけれども、逆効果としてこういうふうな議論が出てくる。そこのプライオリティーを、どっちをとるかというのが外交、防衛両当局者のまさに政治判断になるところで、その辺のところをはっきりさせていただかないとこの議論というのは延々と続く。隠すことによって、はっきりさせないことによってミスリードされることが十分あり得る、私はそのように感じているんですが、その辺の御見解はいかがでしょうか。

○国務大臣(高村正彦君) 米側からは最大限の情報を得てきていた、こういうふうに思っております。それと同時に、独立国としてみずからできるだけの情報を収集できる体制をつくりたいと思うのは当然のことだと思います。
○山崎力君 それはそれとして、問題はその辺のプライオリティーの問題、不十分だから欲しいとしか思えないわけで、アメリカが十分な情報を提供してくれるなら高いお金をかけてわざわざ偵察衛星をつくる必要はないし、その分を別に振り向けた方がいいというのが私の考え方でございます。それをどこで判断するか、それを明らかにしていくのがやはり国民主体の政府の判断だろうと。隠すところは隠すかわりに、説明のつかないことは絶対しないというのがこれからの姿勢であってほしいと思うわけでございます。
  最後になりますけれども、今回の問題でいえば、発射探知、これは衛星からの問題、それから軌道計算、これは衛星はむしろ自由でありまして、衛星から受けた地上レーダー群における弾道計算、弾道探知、それに対しての迎撃態勢の問題、いわゆる迎撃誘導、その手段としてのミサイル、こういうふうな手順で弾道ミサイル防衛というのは成り立っているわけです。
  問題は、今度のTMDの場合、我が国がいろいろやっているのは、どうもミサイルの関係の開発の方が主体でありまして、ミサイルがどこに飛んでくるか、地上においてどうやるかというところのいわゆるレーダー的な、電子計算機に基づく弾道計算、この部分についての協力の度合いがいま一つ見えてこない、どこまで要求されているのか。これがなければ、どこが欠けてもTMDが有効性を発揮しないわけですけれども、その辺について、防衛庁はどういうふうにお答えできる状況にございますでしょうか。

○政府委員(佐藤謙君) 今おっしゃいますように、弾道弾に対する対応措置を考える場合には、まずそれを把握し、それでいわば武器の割り当てを行い、それに従って具体的にオペレーションが行われる、こういうことになろうかと思います。
  そういう中で、当然のことながら全体のシステムを考える場合に、C3Tと申しましょうか、そういったもの、あるいはバトルマネジメントというもの、こういったものを当然あわせて考えていく必要があると私どもは認識しております。
  ただ、今回、アメリカとの間で共国技術研究ということで検討の対象になっておりますのは、先生今お話しのように、迎撃ミサイルの研究という面での議論をしている、こういう段階でございます。
○山崎力君 そういう意味で、アメリカが不得手なところに日本の金を出させるという意味のことにならなければいいなと思っております。
  時間がありませんので最後の質問になると思いますが、昨今、この問題で、費用対効果の問題もあると同時に開発期間の問題があるということで、間に合わぬのじゃないかということが言われています。現実に、過去米ソ冷戦時代からモスクワ防衛のために、ごく少数ではありますけれども弾道弾、ICBMの対抗、アンチ・ミサイル・ミサイルと言われているんですか、アンチ・バリスティック・ミサイルだからABMですか、そこのところでやっていた実績を持つソ連、今のロシアが、S300Vシステム、これはNATOのコードネームだそうで、現実にはSA10の改良型だと言われていますが、現実にパトリオットのPAC2以上、PAC3に相当するものをもう開発済みであって配備されている。しかもインドに輸出が決まったというふうに報じられております。
  その点についての、もし本当に北朝鮮のミサイルが脅威であるというならば、アメリカとの外交関係をある程度犠牲にしても、ここのところの導入を純軍事的に見れば図らなきゃいかぬ。少なくとも最低限、どのような性能を持っているのか、どのような価格なのかということの検討は国の防衛責任官庁としてしなければならぬと思うんですが、そこのところの現状はどうなっておりますか。

○政府委員(佐藤謙君) 確かに、ロシアで開発されておりますS300というもの、地対空ミサイルにつきましては、私どもとしても関心を持って
情報収集等を行っているところでございます。確かに、いろいろな資料では、限定的ではありますが弾道ミサイルに対する対処能力ありと、こういうふうに言われているところでございます。
  ただ、先生が今おっしゃいましたように、いろいろな情報ですと、パトリオットのPAC2を上回る能力があるんではないか、あるいはPAC3までいかないんではないか、いろいろな情報はあるんですけれども、正直のところ、なかなか具体的な性能をこうだというふうに確認するまでには至っていない、こんな状況でございます。
○山崎力君 これは、もし今後緊迫の度が加われば当然考慮に入れなきゃならぬことですので、情報だけは、今これだけ売りに出している状況です、かつてと違って。公開情報、接触することによっての情報、アメリカは嫌な顔をするかもしれませんが、そこを防衛庁として、いざというときにはすぐそこのところの対応ができるような体制をとっていただくように、これが国民に対する一つの説明にもなるし、ある意味ではアメリカに対するいい意味での牽制にもなると思いますので、期待を申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

(後略)