質問「日債銀の破綻問題について

(平成11年3月3日参議院予算委員会会議録より抜粋)


(前略)
○委員長(倉田寛之君) 次に、山崎力君の質疑を行います。山崎力君。
○山崎力君 私は、日債銀の問題を中心にお尋ねしていきたいと思っておりますが、まず確認を先にさせていただきます。
  要するに、最初の出資の問題となった平成九年、一九九七年五月時点で、五月十九日に日債銀側から七千億という、その分の不良債権、不良資産があるというふうな形でお金を出してほしいと、こういう話がありまして、さきに出ました確認書によりますと、大蔵省がその間をとって、日本生命に対して、日本生命がお金を出さないと日債銀は破綻に陥る見込みであるというような内容の確認書を五月三十日付で出しております。そして、七月の下旬に約二千九百億ですか出資され、九月の上旬くらいに恐らく結果がまとまったんでしょう、一兆一千二百億余の大蔵の検査結果が出まして日債銀に出ている。
  こういう流れだと私承知しておりますが、それで大体よろしいでしょうか。

○政府委員(日野正晴君) お答えいたします。
  今、大体の流れをお話しになりましたが、そのとおりでございます。
○山崎力君 そのときに私がまず感じますことは、四月段階から検査へ入って結果が九月に出た、その時点で一兆一千億以上の不良資産があると。
  不良債権、そういった焦げつきがあるということをどの時点で大蔵省がつかんでいたかという問題はこの際問いませんが、少なくとも七千億で破綻するよ、お金を出してくださいと言った大蔵省が、九月時点で七千億だったのが四千億以上も不良なものがあると判断した時点で、この日債銀がこれから立ち行く、やっていけるという判断をどうしてできたのかということをまずお伺いしたいと思います。

○政府委員(日野正晴君) 検査の結果は、確かに今御指摘がございましたように、九月十一日に日債銀に通知しております。この検査の当時は、現在と異なりまして、まだ早期是正措置というものが導入されておりませんでした。
  したがいまして、資産の分類としては、第V分類はただいま御指摘がありましたように一兆一千二百十二億円という数字でございましたけれども、償却引き当ては、日債銀の公認会計士あるいは監査法人と日債銀が協議いたしまして、その結果幾ら引き当て償却をするかということを決める、そういう仕組みになっておりましたので、その九月の中間決算の時点も監査法人と協議した結果中間決算を発表いたしましたけれども、その時点でもやはり債務超過という状態にはなっていないということを前提にした中間決算であったというふうに私どもは承知しております。
○山崎力君 ちょっと私のお聞きしたいのと答えが違うようですが、ちょっと外れまして、この確認書に絡んで、出資した方からいろいろ非難といいますか、大蔵省にだまされたというようなニュアンスの声も出ているんです。
  ちょっと法務省にお聞きしたいんですが、こういう出資契約の場合、出資する側がそれなりの過失がない普通の状態で相手方も調べ、出資した。ところが、相手側の状態が、これがどういうことになるのか、故意か過失なのか、あるいはそういったもののないものなのかは別としまして、状態が違っていた。そこのところで錯誤がやはり出資する側にあったということになろうかと思うんですけれども、一般論としてそういった場合何らかの法的な救済措置といいますか、裁判に訴えてそれを取り戻すということは可能でございましょうか。

○政府委員(細川清君) 一般論としてお答え申し上げます。
  一般に、法律行為の要素に錯誤があれば意思表示は無効でございまして、御指摘のような消費貸借契約を締結する場合、借り主が有する負債の額を貸し主が誤って少なく認識した場合において、これは通常、動機の錯誤という問題でございまして、その動機が契約の相手方にも表示されており、かつ負債の額が重要な要素となっているというときには、契約が無効になるわけでございまして、無効になった場合は、消費貸借の場合にはその貸した金を返せということが、法律上請求することができるわけでございます。
○山崎力君 そういう点で、これが七千億だったのか、本当にその時点で一兆一千億以上だったということなのかということになると、これは金額の問題、それから出資する額と、その差額四千億の問題を考えますと、出資した総額を見ただけで、差を見ればすぐわかるわけでございます。二千九百億余でございますから。
  出した出資額よりも借金の方が現実にはあの当時多かったんだということが、これは後でですけれども、大蔵省の検査でわかった。逆にそれを知りつつ出資を要請したという故意が認定されれば、一般論で結構でございますけれども、その場合は詐欺という刑事法上の要件を満たすようなことにならないでしょうか。法務省いかがでございましょうか。

○政府委員(松尾邦弘君) 一定の状況を想定しての御質問についてはなかなかお答えしにくいところでございますが、いずれにしましても具体的な事実の認定は捜査を通じまして収集した証拠によって判断されるべきものと考えます。
○山崎力君 その辺のいわゆる刑事上の問題はともかくとしまして、民事上国家賠償だという以前に、この出資契約自体が錯誤に基づくもので無効だ、よって返せと言うことが出資側に可能だというふうな事実が判明いたしました。そこのところで、その錯誤の問題はまさに七千億だったのか一兆一千億だったのか、私はそういうふうに帰着すると思うわけでございます。
  そういった中身で現実に当時の大蔵省がこれをほかのところに知らせない、悪くとればそんなに日債銀にそういう不良なものがあるということがわかれば、話が違うぞということで出資した側が出資金の回収に入る可能性もある、こういうふうなおそれがあったんではないか。だから、表面上は皆さん方には七千億、だけれども本当は一兆一千億余という二つの数字がずっと流れてきたんではないかというふうに私は疑わざるを得ないと思うんですが、その辺御見解はいかがでしょうか。

○政府委員(日野正晴君) お答えいたします。
  この際、大蔵省といたしましては、日債銀に対しまして最大限の支援を行っていくという、こういう四月一日の大蔵大臣の談話でも表明されました。その方針のもとで、もし再建策が実施されれば再建は可能であるという認識を日銀あるいは民間の出資要請先に説明しておりましたもので、御指摘の不良債権額の認識につきましては、確かに検査結果では第V分類は一兆一千億円余りでございまして、これを示達しましたのが平成九年九月でございまして、平成九年五月当時は日債銀は増資要請先に七千億円という数字を説明していたわけでございます。
  検査結果をどうして言わなかったかという御質問だというふうに存じますが、これは国家公務員の守秘義務という観点から、当局としては検査の対象となった金融機関にだけ通知するという、こういうことになっておりますので、たとえ出資の金融機関といえどもそれに対して内容を伝えることはできなかったということは御理解いただきたいというふうに存じます。
  したがいまして、ただいま国賠あるいは刑法上の責任の有無、あるいは民法や商法上無効かどうかということについて御議論はございましたが、私ども金融監督庁としては当然のことながらこれは最終的に判断する立場にはございません。ございませんけれども、当時の行政としてはこれは故意や過失はなかったものというふうに考えているところでございまして、それが刑法上の欺罔行為に当たるとか、あるいは民法上の錯誤に当たるとか、あるいは何か国賠法上の要件に当たるとかいった御批判は当たらないのではないかというふうに考えております。
○山崎力君 日銀にも知らせなかったというふうに報じられております。そういったときに、日銀も一応そういった中身を調べる立場にありますし、佐々波委員会もそういったことをデータをもとにいろいろ検討される、こういうことでございます。
  ただ、そういったものを知らせなかった、もちろんそれはいろいろおっしゃっていますけれども、そこのところの問題を離れても、その結果どういうことが起きたかというと、翌年の三月ですか、公的資金六百億を導入するということになったわけですね。そのときにもう明らかに大蔵省は一兆一千億という額を、七千億じゃないんだということは知っていたし、それを日債銀は表面化していなかったというのも知っていたわけです。そのときに、その二つの数字のうちの大きい方が出たらこうはうまくいかないよということをわかっていたからむしろ出さなかったんではないかというふうに思われても仕方ないんじゃないかと思うんですが、その辺いかがでしょうか。

○政府委員(日野正晴君) いわゆる佐々波委員会、金融危機管理審査委員会でございますが、これは当時、昨年の三月でございますが、審査が行われた時点では、申請してきた銀行が審査基準に適合しているかどうかということを審査して、その上で資本注入の適否を判断することを目的としていた委員会であったわけでございます。
  したがいまして、過去の検査結果あるいは自己査定の結果そのものを議論することを目的とする委員会ではなかったということは御理解いただきたいと思います。したがいまして、昨年三月の資本注入のための審査委員会による審査の際には過去の検査結果そのものは提出されておりません。
  しかし、大蔵大臣が審査委員会のメンバーでありましたので、佐々波委員長の御依頼を受けまして、大蔵省といたしましても審査に十分に協力するという観点で、申請行から提出されました健全化計画とかあるいは自己査定の結果を行政として把握した資料、この中にはラインシートなども含まれますけれども、これや、あるいは過去の検査結果などに照らして検討いたしまして、その正確性や適切性等についての所見を大蔵大臣が審査委員会において御発言されたものというふうに承知しております。
  日債銀につきましては、同行から提出されました自己査定結果を過去の検査結果等に照らして検討いたしました結果は、査定が甘いと考えられる関連会社につきまして頭取からこれをどういうふうに考えているかということを十分に確認する必要があるということをこの審査委員会の場で大蔵大臣が御発言されたというふうに承知しております。
  そしてその上で、審査委員会におきましては、こうした大蔵大臣の発言それから各委員の意見などを踏まえた上で、頭取から直接ヒアリングを行いまして、さらにその上でいろいろ議論が重ねられて最終的に議決が行われたものというふうに承知しております。
○山崎力君 数字が七千億ということを日債銀はずっと主張し続けてきているわけです。ところが、大蔵省はそれよりも四千億以上そういう第V分類の金額は多いんだよと言っている。それが今のようなやりとりの中でどこでうやむやになったのかという不満というものは国民として当然持とうと思うんです。
  いろいろな立場の人がいろいろなことをやって、保身とかそういった自分の役割ということではあるんですけれども、一連の流れを見て説明のつくこと、説明と言うとおかしいのですけれども、これならばわかるというのは、要するに、セーフティーネットが整っていない、だからそれまで何が何でもお金を集めてつぶさないようにして日債銀を生き延びさせる、それでネットが整ったところで破綻させる、こういうふうな大きな意思のもとにいろいろな機関が動いたんではないかとしか思えない。そうでなければつじつまが合わないというのが私の個人的な感想でありますし、ある程度の関係者、部外の人たちの見方もそうじゃないかと思うわけです。
  それはそれで一つのやり方かもしれません、日債銀がただ破綻したということの影響を考えれば。もしそうであるならば、そこのところは正直に国民に説明するべきではないか、その方がむしろ国民の納得を得られるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○政府委員(日野正晴君) お答えいたします。
  平成九年四月の経営再建策、それから昨年三月の公的資金注入につきましては、その時点で把握できました財務状況を前提にして、当時のセーフティーネットの整備状況、それから金融システムの安定性確保のための必要性等を勘案いたしまして最善と考えられる手法がとられたものというふうに理解しております。
  ただいま先生は将来破綻させることを前提にということをお話しになりましたが、当時は、その夏から秋にかけての百四十三回国会で成立いたしました金融再生法やあるいは早期健全化法もまだこの世の中には存在しておりませんでしたし、昨年四月から導入されました早期是正措置もいまだ実施に至っておりませんでしたし、さらにはまた、十七兆円という財政的な裏打ちも昨年の二月に初めて行われるようになりまして、そこで初めて金融債が保護されるといったことが財政的にも担保されたといったような状況であったわけでございます。
  しかし、そういった変遷を経まして、昨年私どもが検査させていただきました結果は、これは昨年の十一月に通知いたしましたが、昨年の三月末時点で債務超過であったということが判明いたしました。そこで、所要の手続を経まして、金融再生法の第三十六条に基づいて特別公的管理の開始が決定されたわけでございます。
  政府といたしましては、今後とも今般の日債銀の問題をも含めまして現下の金融問題に対しては適切に対応して、預金者等の保護と信用秩序の維持、内外の金融市場の安定性確保に万全を期してまいりたいというふうに考えております。
○山崎力君 今の御説明を聞いても、私の邪推かもしれませんけれども、そういった考え方を補強することにはなっても何ら否定することにならないという御答弁のように受けとめたいわけでございます。事実として、その資本注入を決めた九八年三月三十一日、六百億円、公的資金。後から振り返ってみたら、その同じ時期に日債銀は破綻していたねという判断が、どう見ても、判断する流れを見てきた人たちから見ても恥としか言いようのない偶然の一致だろうと思うわけでございます。
  そういった中で、将来を考えましたときに、ビッグバンという時代を迎える。もう国民の自己責任でやりなさい、今までみたいに銀行はつぶさないというわけじゃないよ、国民一人一人が自分の責任で銀行を選んでやる時代ですよというふうに今なっているわけです。そのときに、銀行の自己査定と金融監督庁の検査結果がずれているということは往々にしてありがちだと私は思うわけです。そのときに、金融監督庁その他のあれが守秘義務だとかあるいは時間がずれてくるとか、そういったことになったらどういうことを信用していいのかということが私は問題になってくると思います。
  そういった意味で、銀行の管理というのは普通の一般の会社と違う。だから、これだけ銀行に対して破綻させてはいけないということで金も使い人も使ってきたわけですから、そういった点でのこれからの政府の方針というものは、国民に対する説明義務として十分なされなければいけないと私は思うわけです。
  その点につきまして、金融監督庁長官並びに一連の金融行政のベテランである大蔵大臣、最後に小渕総理の決意を伺って、私の質問を終わりたいと思います。

○政府委員(日野正晴君) お答えいたします。
  ただいまの御指摘は、金融機関の情報開示を一層充実すべきではないかという御指摘であったように思います。これは大変大事なことでありまして、金融機関の経営の透明性を高める、そして市場規律により経営の自己規制を促すということ、さらには預金者の自己責任原則の確立のための基盤となることでございまして、大変大事なことであると存じます。
  こうした考え方に基づきまして、金融機関に対しましては本年の三月期から、金融システム改革法に基づきまして、これからは連結ベースで、しかも罰則つきでディスクロージャーが義務づけられることになります。さらには、昨年成立いたしました金融再生法に基づきまして、主要行については今度は再生法上の資産査定結果の公表も行われることになっております。再生法に基づく資産査定の結果の公表は、主要行はことしの三月期から、地銀、第二地銀はことしの九月期から、協同組織の金融機関は来年の三月期から行われることになっております。
  こういうことで、非常に情報開示がさまざまな観点、角度から充実することになりますが、今御指摘がございましたのは、検査結果との間の乖離をどうするかということだったと思います。
  検査結果そのものを公表いたしますと、これはいつも御説明申し上げていることでございますが、取引先等に不測の損害を与えるおそれがあること、あるいは個別の私企業の経営内容を当事者の意に反して開示することになるといったような問題がございます。今回のような日債銀とかあるいは長銀のように破綻した場合は格別でございますけれども、それ以外の場合には当局から公表することは差し控えさせていただいているところでございます。
○国務大臣(宮澤喜一君) 一言で申しまして、この一年余りで銀行に対する検査、監査等々の体制が、法律をつくっていただきましたこともありまして一変いたしたと思います。
  今お話しになっておられましたようなケースも、実はどれだけ不良債権があるのかという分類も必ずしも明確ではありませんし、今度は分類をしたら、それをどれだけ積み立てておくかということに至っては最近まで何もなかったわけでございます。それは銀行と監査法人がやればいいのだ、こういうことであったわけでございますから、言葉は悪うございますが、本当にオーナーシステムで相手を信用してやっていたと言うに尽きるかと思います。
  しかし、金融監督庁は非常に厳しい検査を六月から始められましたし、その上に今度は分類も、仕分けもきちっと一つの物差しをつくられました。やがてマニュアルのようなものもある程度出されるのじゃないかと思います。そうすると、銀行にとっては本当に初めて厳しい検査もあるし、行政指導もある、改善命令もあるということになります。恐らく、検査結果を個々の銀行について発表されることはないと思いますけれども、しかし関係が全く一種の緊張関係になっておりますから、銀行にしてみると怖いという言葉になるのだろうと思いますが、そういう状況が生まれてまいりました。また、銀行によって今度はそれを超えてもっと立派なことをやる、そういう自由競争も始まるかもしれないと思っておりますから、ここでおかげさまでいろんなことが一変してまいったと思っております。
○委員長(倉田寛之君) 既に質疑者の質疑時間、答弁時間は経過をしておりますが、答弁を求めますか、山崎君。
○山崎力君 できれば総理も一言。
○国務大臣(小渕恵三君) ビッグバンの時代を迎え、しかもペイオフが行われるということでございますから、金融機関が本当に世界に信認を得られるような形のためのディスクロージャーその他を徹底的に行っていかなきゃならぬと思っております。
○委員長(倉田寛之君) 以上で山崎力君の質疑は終了いたしました。(拍手)
(後略)