質問「『雇用能力開発機構の最終目標』ほか

(平成11年3月23日参議院労働・社会政策委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 最後の質問になります。
  今回の雇用促進事業団廃止、それに伴う雇用・能力開発機構設立ということで、その意義についてそれぞれの委員から各方面において質問がございましたけれども、それをトータルした形で、今回の雇用・能力開発機構、これは何をとにかく最終目標とするのか、同時に、今の政府のいろいろな関連法人の整理統合その他の問題からいくと、一番のポイントは、将来的にどれだけ国の予算をつぎ込むことにして、どういうことをしようとしているのか、スタートの時点でいろいろ経過その他あるかもしれませんが、その辺の将来像はどうなんだということをちょっとまず教えていただきたいと思います。

○国務大臣(甘利明君) 今まで各先生から御指摘をいただいてきましたとおり、行革の方向を受けて雇用促進事業団が従来行ってきた業務を一度原点に立ち返って精査をしてみる。そうしたところが、もう雇用促進事業団の手を離れていいのではないか、あるいは歴史的な使命を果たし終わったのではないかという部分はこの際業務から切り離して、そしてこれからむしろ重点的にやっていくべき業務について精査をして、そこに特化をした政策を推進していくということで、雇用・能力開発機構という新しい組織に模様がえをして、組織全体と業務全体を見直させていただいたわけであります。
  予算とか職員の削減がどういう形になるかということにつきましては、予算でいいますと二百十億円縮減、節約ができるわけでありますし、職員でいいますと百六名の職員定数の削減をするということができるわけであります。
  そして、新産業がこれからできてくるわけでありますけれども、そこに優秀な能力を備えた労働力をしっかりと適宜適切に供給していく。そのために公的な機関として果たすべき職業能力開発というのはさらに重要味を帯びてくるでありましょうし、あるいは現下の雇用情勢下で、ただ手をこまねいて橋渡しをやるということだけではなくて、積極的に雇用の開発をしていくというところまで今回踏み込ませていただきましたけれども、その部分について取り組んでいく使命が重点施策の中で中心的な役割を担って、これからも雇用・能力開発機構が取り組んでいくべき施策ではないかということで、一遍業務を見直して精査し、パワーアップするところはパワーアップして新しくスタートをするということでございます。
○山崎力君 そういったことなんだろうとはわかるんですけれども、まだスタートする前段階ですから無理はないんですけれども、なかなか具体像、将来像が見えてこない部分がある。これは御承知のとおり、今の社会全体の雇用情勢が将来像が見えないというのとオーバーラップをしている部分だろうとは思うんです。
  それだけ難しい中で、できるだけ削って、国の予算をなるべく使わないで、それでいて効果を上げていただくという立場でいくわけですが、もう一点この問題であるのは、先ほどからも何回も出ていましたけれども、本来の労働省の仕事という範疇だけにとどまらない省際間というのでしょうか、先ほどどういう表現をされましたか、重なり合う部分、そういった部分での問題が出てこようかと思うんです。例えば、それでは学校教育との関連はどうするんだとか、あるいは雇用情勢からいくと通産省の産業育成とどう絡むんだとか、その辺のところで二重投資にならないようにというのは、これは釈迦に説法ですけれども、お願いしたいところでございます。
  そういった中で、今までは大企業中心に中小でも、働いた労働者が素直に親方あるいは上司の言うことを聞いていればそこの業種の仕事を覚えて次に伝える、そこで給料をもらえるだけの能力を持つというのが半ば自然な形で行われてきた部分がございますが、この厳しい中で、自分たちが積極的にこういう能力があるから雇ってくれと、こういう自主的な能力開発というものが当然叫ばれてきている部分があるわけですけれども、そういった点についてこの機構あるいは労働省としてどう取り組むのかという点はどのようになっておりますでしょうか。

○政府委員(日比徹君) 御指摘のように、最近の急激な産業構造の変化の中で、高い成長が期待される分野において必要とされる人材の育成を図るというのは非常に重要でございますし、また、御指摘いただきましたように、労働者の自主的あるいは自発的な能力開発ということの支援というのは極めて重要となっております。労働省におきましては、こういう自己啓発に関する相談援助等の推進を図るということ、また労働者が主体的に教育訓練を受けた場合に負担した費用を直接助成する教育訓練給付制度の推進等を図っておりますが、今後とも、こういう施策によりまして自発的な職業能力の開発に対する支援の推進を図ってまいりたいと考えております。
○山崎力君 そういった御答弁だろうと思うんですけれども、これは言うはやすく行うはかたしで、本当に必要とされる特殊な能力、国家資格を持つような能力をやりたいといったときにどこまで支援すべきなのか。
  例えば、私は医者の大学を出たのだけれども国家試験が受からない、受かるまで何とか面倒を見てくれ、その勉強の面倒を見てくれといったところをやるなんということはだれが考えてもおかしいねという話になるし、あるいはもっと、非常に言葉は悪いんですけれども、時代おくれでニーズがなくなっているところの職業訓練あるいは能力を持ちたいといっても、これもまたむだな投資になる。将来を見据えて、あなたのこういった能力を身につけることは近い将来非常に需要が多くて就職しやすいでしょう、あるいは日本の産業の発展に貢献するでしょう、こういったものを見つけて、そこのところをやろうとする人に適当な援助をする、こういう二段階を踏まなければいけないわけです。
  その辺のところがみんなわからずに困っているような、それぞれの立場で個人がこれがいいんじゃないかというところをやろうとしているところを、公の機関がこんなものでしょうと、業界その他産業界からの情報もあるんでしょうけれども、その辺のところをどう乗り越えていくのかなというのが、総論はいいんですけれども、各論になったときにちょっと見えてこない部分がある。そういうふうに感じるわけでございます。
  そういった具体策として雇用対策をどうするんだということも当然出てくるわけですけれども、そこのところが一種の雇用対策になるわけですが、その辺のところを大臣、どのような考え方でやろうとなさっているわけでしょうか。

○国務大臣(甘利明君) 能力開発と就業の関係、それから能力開発自身が時代を先取りする能力開発にどう設計をしていくか。あるいはその職業能力をつけてももう既に何の役にも立たないのをどう排除していくかというか、外していくか。これは従来、個人とそれから企業内あるいは失業者が職業能力をつけていく、いろいろな場面で職業能力開発ができるようにしておりますが、十二月から始まった個人の自分のオフタイムに職業能力をつけていくということに関しましては、ニーズの高いであろうというところを積極的に指定をしております。もう既に四千講座を超えていると思いますが、これは正直言いまして、それによって万能の職業能力をつけるというところまではいかないじゃないかと思います、持っていればよりプラスになるような部分だと思いますが。
  それとあと、職業訓練施設やあるいは職業訓練大学校等で、本格的な施設で職業能力を身につけていくということに関しましては、常時、講義の内容の見直しをしてくれということを大臣に就任以来担当局長に指示いたしておりまして、つまりそこで行われている講義の内容が何ら魅力的でない時代に取り残されたような部分であってはならないと。何を先取りしていくかということに関しましては、大ざっぱに言いますと、これからを担う新産業十五分野の中に位置づけるような講義内容であるべきだというふうに思っておりますが、その中で具体的に何をどうしていくかというのは、これから日々いろいろ議論をしながら科目の設定、講座の設定をしていかなきゃならぬなというふうには思っております。
○山崎力君 やはり大臣でもなかなか具体策になってくると本当に難しいことだろうと思うんですが、私はちょっと水を差すようなんであれなんですけれども、もう少し特化をもっと割り切った形の特化にした方がいいんじゃないかなという感じがしております。
  特に今の離職者、転職者、そういった人たちが、先ほどもちょっと同僚議員から出ていましたけれども、なかなか職場をいづらくさせられるような人たちがふえてきている状態で、それから先ほどのベンチャーの問題もありましたけれども、すべてに絡むのは、余り使いたくはないんだけれども、社会全体のセーフティーネットをどうするのか。具体的に非常に思いつき的に言えば、失業保険の期間をもう少し長く持っていった方にお金を特化した方がむしろ今の御時世にはいいんじゃないかと。非常にみんな縮こまって今世の中が動かないというのは、離職したときの不安感というのが強いわけでございまして、そういった点からいくと、やはり最低限の人間らしい生活、これは労働省から離れちゃう可能性があるんですが、そこは保たれるんだと。
  ただそこのところで、ただ怠惰な生活をして生きていればいいというのではこれは人間らしくないわけで、そういった人たちがいわば敗者復活といいますか、一たんはここで失敗して離職せざるを得なかった、あるいはセーフティーネットで助けられた、だけれどもそこのところにずっととどまっているのじゃなくて、もう一回何かいいチャンスがあればそこからまた新たな人生なり職業なりをやっていく。こういう体制を制度的につくる方が、悪いとは言いませんけれども、そういうふうな細かなことをやるよりも、そっちの方にどさっと予算をつけた方がむしろ今の世の中はいいんじゃないかなという感じを私自身この審議を通じて感じているわけです。
  確かにきめ細かいのは必要かもしれないけれども、木を見て森を見ずというところがあるのかもしれませんけれども、そういうふうな感じもしまして、先ほども言いましたいわゆる敗者復活の道をどのように組み立てていくかというのがこれからの時代の労働行政の根幹ではなかろうかというふうに感じているんですが、その辺の大臣のお考えを伺って、時間ですので私の質問を終わりたいと思います。

○国務大臣(甘利明君) 敗者復活の道筋を立てる、これは非常に大事なことだと思います。その際、事業家としての敗者復活と雇用者としての敗者復活とあると思います。事業家としての敗者復活は、要するに失敗したときに身ぐるみはがれないという仕組み、まさに有限責任で次に臨めるという仕組みをちゃんとつくるということが大事だと思っています。それから雇用者については、再挑戦をするまでのリハビリ期間をきちんと設ける、これが大事だと思います。
  ただ、先生御自身が今御指摘になったように、何もしないで漫然として待機しているというのじゃなくて、その間に力をつけていくということで、トレードを待っている選手がただ遊んで待っているのじゃなくてトレーニングしながら待っている、そうするといきなり一軍登録できるということになりますから、トレーニングをしながら待っている期間をちゃんと確保するということが大事だと思います。
  私は、訓練延長給付という制度がありますが、これの指導を受けて、その後に再就職率がどのくらいかの追跡調査をやれということをやっておりまして、訓練期間が終わって直ちにという就職率が六十何%だと思いますが、その後何カ月以内にというのは相当高い就職率になっております。
  ですから、これはただ漫然と待つよりもはるかに再就職率を上げていると思いますので、その教育訓練の給付についてしっかりとやっていくというのが再就職率を上げる、つまり雇用者のセーフティーネットをしっかりするということで非常に大事だと思っておりますので、そっちの面でしっかりやっていきたいというふうに思っております。
○山崎力君 終わります。
(後略)