質問「不審船停船を本当に意図したのか』他

(平成11年3月25日参議院外交・防衛委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 今回の問題ですけれども、こういった委員会を委員長その他の御尽力で急遽開催する、あるいは本会議でも取り上げるということは、非常に結構なことだと思うわけですが、それだけある意味では重要な問題だと思うんです。
  特に、私がまず問題にしたいのは、海上保安庁にとってこれは一番重要な問題、要するに今まで機動隊で対処していたのが対処し切れなくなって自衛隊の治安出動を要請したというのと同じことなんです、海の上においては。これは非常にそこのところに大きな海上保安庁の能力に関しての疑義があった、こう言わざるを得ない。本来であれば、長官自身がやめてもいいくらいの問題なんです。これは長官の責任というんじゃなくて、今まで営々と築いてきた海上保安庁の行政がここに来て欠陥が露呈した、すべての面でと、私は思うわけです。
  海上保安庁が処理していれば海上自衛隊の出る幕はなかったわけです。それができなかったということの反省ということが今までの中でほとんど聞こえてこないというのは、報道の仕方もあるかもしれませんが、私は非常にその点について遺憾に思います。
  その点で、まず第一に言えることは、日向沖の昭和六十年の事件、四十ノット出た。それについて、海上保安庁は十隻以上の三十五ノットの高速艇を予算請求しているわけです。もうできているわけです。ところが、配備が全然近くになかった。太平洋側あるいは九州の方に重点的に置いて、日本海側は舞鶴と浜田ですか、あっちの方にやって、行ったんだけれども全然やっていない。運用上の配置上のミスがここに結果的に露呈していると言わざるを得ない。
  そういった流れを含めて、全部まず私なりに今回の問題点を、全部ではないんですけれども、目についたところをさらってもかなりの部分があるということで、それを前提にしてまずお伺いしたい。先ほども出たんですが、海上自衛隊の方からいきますと最初で一番の問題は何か。発見してから海上保安庁に通告するということの時間のおくれです、先ほど同僚議員からも出ましたけれども。船名の確認に時間がかかった、そんなばかな話はないんです。
  不審船が国内にいるときに発見して通報するのは確かに見つけた海上自衛隊の仕事かもしれないけれども、それが本当に不審な船であるかどうかというデータを持っているのはどちらかといったら保安庁じゃないですか。こういう不審船がある、調べてみてくれと通報して、それから行くのが、それだけきめ細かく保安庁の巡視艇その他があるわけで、それを自分がおかしいというところまで海上自衛隊が確認して、何時間もたってようやく保安庁に通告するというのは、私はこれはどう考えてもおかしいと思うんですが、その点いかがでしょうか。

○国務大臣(野呂田芳成君) そういう御議論を展開するならば、海上保安庁が全部やるべきことであって、私どもが通報するのも余計かという話に聞こえますが、私どもとしては、海上保安庁に……
○山崎力君 そんなことはないよ。そんなばかな話はないですよ。質問に答えてください。
○国務大臣(野呂田芳成君) ちょっと答弁聞いてくださいよ。私が答弁しているんだから聞いてください。
  ですから、私どもとしては、海上保安庁に通報する場合に、ある程度確実性を有していないものをやたらに通報するということは慎むべきだという前提でそういう時間をかけたという意味でありまして、その間懸命にやっておるわけでありますから、報告を怠っているというふうに言われるのは私は当たらないと思っております。
○山崎力君 懸命にやっているとおっしゃいますが、「はるな」という船がたまさか近くにいたからと、どのくらい近くかわかりませんけれども、それが現場に行くまで何時間かかっているんですか、それじゃ。その近くのところから保安庁の巡視艇なり小舟が行って見るのとどっちが早いかという計算もあるわけですよ。しかも、前日からそういった不審船が来ているというならば、それをまずやるべきだ、そう判断するのが役所の分掌上これは当然じゃないかと思うんですけれども、その疑問に対しての答えが出ていないということです。
○国務大臣(野呂田芳成君) 先ほど来、話が出ておりますように、私どもは二十一日の深夜からどうも不審なものがあるということは海上自衛隊としてはチェックしておったんですが、それは不審船だというふうに言うには非常に断片的なものであってだめだと。そこで、「はるな」等をその周辺に置いていつでも即応態勢ができるような手をとったわけであります。二十二日もそれをやらせていたわけであります。
  ただし、これは特別に不審船という意識を持ってやったわけじゃなくて、経常の監視行動の範囲内でやっておったわけで、二十三日に至って、どうもやっぱりそうらしいというのはP3Cからもそういう情報がもたらされたので、「はるな」等を派遣してそれをかなり確かめた上で海上保安庁に連絡をさせていただいたという必死の行動をやっておるわけでありまして、決して怠って連絡をおくらせたという事実とは理解しないでいただきたいと思っております。
○山崎力君 別に現場がサボっていたなんて一言も言っていないわけです。要するに引き継ぎの仕事をするのが、自分たちが確認して怪しいと思っても手が出せないものを、手が出せる人に連絡するのに本当の確証があるまで待っているというふうな考え方がおかしいんじゃないかと言っているわけです。
  それからもう一つ、今のお言葉で、この問題言いたくありませんけれども、言葉に気をつけていただきたいのは、先ほどの同僚議員への答弁では、「はるな」は通常の訓練によって舞鶴を出たと言っているわけです。それが今の長官のお言葉だと、事前にその情報があったから出動させたと言っているんです。全然意味が違ってきちゃうんですよ。

○国務大臣(野呂田芳成君) 通常の訓練で「はるな」が近くの方面にいたというのは事実ですから、それを利用したというだけの話を申し上げておるわけであります。
○山崎力君 ですから、そういうときは出動させたとは言わないんですよ。
○国務大臣(野呂田芳成君) ああ、そうですか。言葉は謝ります。
○山崎力君 だから、言わなくてもいいことをおっしゃるから、そういうふうによそにいくんです。その点が一つ。
  それから、一連の流れを見ますと、海上保安庁が本当にこれを停船させて中までやろうということの作戦、オペレーションが感じられない。その理由を申し上げます。
  一つは、トレース、航跡を見ますと、停船命令を最初に出したのは航空機なんですよ、海上保安庁の。それから現認、近くに海上保安庁の船が着いているのが何時間後だと思いますか。二時間以上たっている。飛行機で二時間前にとまれ、おまえは怪しいぞと言っておいてから、実際に保安庁の船が着くまでに二時間もかかっている。こんなばかな話はないんですよ。あんた、怪しいよと言っておいて、それからスピーカーで叫んでおいて、警察官が近くに来たのは二時間もたってからだと。自分がどうするかというのははっきりわかっている。
  それで、もう一つ言いますと、十七時四十九分、「はまゆき」が第二大和丸と約千メートルに接近して停船命令を実施した。それで十九時七分、高速で逃走開始、約一時間十分、この間どうなっているんだかよくわからない。
  そういったことで、これは通告していませんが、「はまゆき」を含めて、具体的に言うと保安庁の船はそのいわゆる不審船に最近何メートルまで近づいたんですか。

○政府委員(楠木行雄君) 事実関係は大体先生がおっしゃるとおりでございまして、「はまゆき」は約一千メーターのところに取りついております。
○山崎力君 ということは、それ以上近づくと危ないからということだと思うんですよ。これは先ほども私が言いましたように、現場にどういう指示が出ているか知りませんけれども、非常に現場の人には申しわけないし、そういう気持ちはないのだけれども、要するに、海上保安庁は、陸上の警察官でいえばこそ泥は捕まえるけれども、ピストルを持っているかもしらぬ暴力団のような組織犯罪には手を出せない。せいぜい遠くから見守って威嚇射撃するだけだと、空に向かって。この対応でやれるんですか。
  しかも、先ほども言いましたように、こういった例というのは現実に昭和六十年にあるわけです。それで、装備は四十ノット出るのに三十五ノットの船しかつくっていないんです。それから先ほどもいろいろ出ていましたけれども、スピードが足りなかったと言っているけれども、自衛隊で三十五ノット出る船というのはほとんどないわけですよ。三十二、三ノットですよ。スピードだけなら保安庁の巡視艇の方が出るんですよ。要するに、航続距離がなくて追い切れなかった。しかもその追い切れなかった後、それが判明してから政府に通告していくまでに二時間くらい時間があるわけです。
  燃料というのは、すぐなくなるわけじゃないんです。今のままのスピードで、燃料の減り方からいけばあと三十分後、一時間後にはもう追い切れなくなるというのはわかっているはずなんです。その時点というのは、もう八時過ぎにはわかっているはずですよ。ということは逃がしていいねということなんですよ。
  それから、保安庁も含めてなんですけれども、千メートルまでしか近づけなかった、それ以上近づけなかったということは、要するに強行接舷、向こうがとまってくれればもうけ物だけれども、そうじゃなかったら強行的にとめるということはできない。まして、ああいうふうなときは機関砲の方が効果があるんで、五インチ砲なんか撃ったって、射撃速度からいったって精度からいったってまさに牛刀をもってというあれですから、もう自衛隊はただ単に実戦練習をしただけですよ。捕まえろと言ったって具体的にそれを現場の人たちはどうやって捕まえるんだという話になるわけです。
  ということは、今回の事例は、要するに日本の不愉快さを相手国側といいますか、その船のところに知らせるだけで、いわゆる犯罪者を捕まえるということに対しては最善の努力をしていないと。それはわざとかどうか、政治的な判断でどうか知りませんけれども、そう言わざるを得ないような行動を政府側はとったとしか言えない。そういうふうな見方をされてもいたし方ないと思うんですけれども、どちらでも結構ですが、御見解ありますでしょうか。

○政府委員(楠木行雄君) 大変骨身にしみる御指摘だと私は思います。
  確かに、私ども、燃料の点とか相手を捕まえる工夫とかいう点はございますが、基本的には私どもの方はまず警察官庁として犯人を逮捕する、その逮捕に当たってどれだけの陣容、体制でやっていくかということでございまして、もともとの前提が漁業法違反とかそういうことに対する話でやっておるわけでございます。
  燃料につきましても、北は小樽から南は福岡に至る巡視船を出して、非常に遠くからも来ておるという点では、確かに御指摘もあろうかと思いますが、航続距離の問題もございました。また、百八十トン型の巡視船をもっと配備して、三十五ノットぐらいこれは出るわけですから、それだったらよかったんじゃないかと、これもたまたま御指摘のように舞鶴とか浜田というようなところにおったものですから、これは実は出ていたんですけれども、ちょっと間に合わなかった。
  それから、工夫につきましても、強行接舷なんかは、私どもは例えば対馬の不法操業漁船をやる場合はやっておりますし、例えば尖閣諸島なんかの警備においても、巡視船で挟み打ちするようなことまでやっております。ただ、今回の場合はちょっとスピードがそこまで行かなかったとか、いろいろ事情があったわけでございます。
  また、別の議員の方からも、そのときの気象状態をよく考えるべきじゃないかという御指摘がございましたが、当時は確かに風向、風速が九メートルを超えるとかうねりも五メートル行くとか、私たちの船の段階でいきますと、ちょっと普通のスピードよりも二、三ノット落ちるような事態でございました。いろんな状況が重なったわけでございます。
○山崎力君 いろいろ厳しいことを言いましたけれども、的確な判断だったかどうか、今回がよかったかどうかというのは、これは後を見なきゃいけませんけれども、少なくとも政府として全力を尽くしてやろうとしたというのは、この流れを見るととてもそんなことは言えない行動しかとっていない。
  何で漁業取り締まりの船のために一キロも離れて停船命令を出さなきゃいかぬのか。パトカーがスピード違反を追いかけて、五百メートルも後ろでとまって、相手の車がとまってから五百メートルもよちよち歩いて、あなたはスピード違反ですよと言いに行くようなものです。前にとまるか直後にとまるんです、パトカーというのは。その辺のところが全然なされていなかった。
  時間ですから、最後に一点。防空識別圏で自衛艦がとめた、それでしかも、「これ以上の追跡は相手国を刺激し、事態の拡大を招く恐れがある」というふうに言う以上、相手国はどこですか。それで、いかなる理由でこういう正当な刑事犯罪といいますか違反者を刺激すると判断したのか、そこの点だけお聞かせ願って私の質問を終わります。

○政府委員(柳澤協二君) おっしゃるとおり、防空識別圏と申しますのは、我が方が防空任務、あるいはスクランブル、領空侵犯措置の運用上定めておるものでございまして、特にそこを超えて法的に問題があるという認識は私どもも持っておりません。
  ただ、海上警備行動ということで海上自衛隊が出ていきます際に、日本海でございますから、いろいろ近隣の国がございまして、やはりこの手のオペレーションが、どこまで行けば相手を刺激するかというのは、いろいろ難しい判断の側面はありますけれども、私どもは大臣の御指導もいただきながら、全体として防空識別圏というのを一つの目安にしたということであります。
○山崎力君 答えになっていない。時間が過ぎて申しわけないんですけれども、相手国はどこか。ロシアじゃないと。このまま行けばロシア領なんです。北朝鮮の領海には全然遠いところで切っているわけです。
  それから、いかなる理由で刺激するのか。これ以上自衛艦が行くと、自分たちが勝手に決めた識別圏を超えて警察活動を続けることがいかなる国を刺激するのかということの理由が知りたいと聞いているわけです。

○国務大臣(野呂田芳成君) 先ほど、冒頭の御質問で答えたとおり、結果的には船は北朝鮮に入ったわけですから、今は私どもは北朝鮮の船だという認識がありますが、当時はどっちに向いているかよくわかりませんでした。北の方にひたすら走っている船もおりましたし。だから、私どもは北朝鮮方面という言葉を使っておったんでございます。だから、その時点で北朝鮮と断定して必ずしも対処したわけではございません。
  しかし、いずれにしても腹の中では私が申しているところで皆さんもおわかりいただけると思うんですが、北朝鮮を意識しないわけにはいかない状況でございましたので、防空識別圏を過ぎたあたり、これ以上突出すればこれは必ず大きなトラブルになるだろうと私は判断した次第であります。事実、私どもが船を引いた途端に北朝鮮の方から戦闘機が飛んできたということも起こりましたし、私たちの判断は誤りじゃなかったと思っております。

(後略)