質問「『海上自衛隊と海上保安庁の連携態勢』ほか

(平成11年4月14日参議院外交・防衛委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 まず最初におわびというかお断りでございますけれども、今回の審議するべき外務省の方の問題ですが、同僚議員が同じような質問をされておりますので割愛させていただきます。お断り申し上げます。
  続きまして、前にも出ておりましたが、先ほどの不審船絡みで、これまでの一連のことから質問させていただきます。
  正直に申し上げると、あの事件発生直後の委員会等で私が指摘した点について、明確になってきてなるほどなと、後からよくわかったということがないままずっと来られて、いろいろな問題点はこれから調整等検討してやっていきたい、こういう回答がほとんどである。しかもそれは、あえて申し上げれば、その問題が今回の事例で明らかになったということだけではなくて、理論的には類似事件を想定すれば考えられていたケースがほとんどであったということが言える、ある意味ではこれまでの政府側の怠慢であったというふうに指摘せざるを得ないケースがほとんどであるということでございます。
  総論的に言えばそういうことで何をやっていたんだということなんですが、今回のことで具体的なことでも、細かいことからですが、気になることが一、二ございますので、その点を確認させていただきたい。
  一つは、防衛庁長官が不審船はガスタービンを搭載していて非常にスピードが出たという発言を何回かされておりますし、テレビでも報道されていますが、このガスタービンということに関してどの程度確証をお持ちで発言されていたんでしょうか。

○国務大臣(野呂田芳成君) 運用局長も私も、推測でありますがあるいは想像でありますがという修飾語をつけて申し上げたつもりでありますが、私どもがそういうふうに推測をしたり想像した根拠は、ディーゼルではそんなにスピードが、三十五ノットも出ないんじゃないか、通常であればガスタービンじゃないかというふうに考えたということが一つ。
  それから、煙突はついておりましたけれども、現地からの連絡だと煙が全く出ていないので、やっぱりこれは油を使っているわけじゃない、こういうふうに想像されたというようなことぐらいでありましたから、そのスピードの点と、煙突がありながら終始煙が出なかったということを考えますと、そういうふうに推測し想像したということであるということをひとつ御理解いただきたいと思います。
○山崎力君 今根拠を示されましたが、普通、船舶のことを知っている人間からすれば、ガスタービンは普通のディーゼルあるいはスチームと違って大量の空気の吸入排出を必要とする、そのために吸排気口が大きくなっている。これは自衛艦の煙突を見れば一目でわかるわけで、何枚も写真を撮っているわけでしょうが、その辺のところのはっきりした写真が全然見えてこない。そこのところをカットして、無視して、そういうふうな報告を上げたとすれば、防衛庁内のそういう情報管理のところに大きな問題があるんじゃないか。
  防衛庁長官が専門的な知識を持っているとは思いませんし、持っていなくても別段どうということでもないかと。常識的に見て、部下からこういうことでガスタービンではないだろうかと、確率が高いということでそのまま正直におっしゃられたんでしょうけれども、普通の場合、普通のというのはこういうことを常識で知っている人からすれば、では吸排気口はどこにあるんだと。吸排気口の見えないようなガスタービンの機関というのはないはずだとすぐわかるわけです。ということは、ある意味では制服からの情報が全然入っていないんじゃないかという気がするんですが、その辺はいかがですか。

○政府委員(柳澤協二君) 大臣への御報告ということもありましたので私から申し上げますと、確かに当時の状況で大変スピードが速いということに着目して当然ガスタービンの可能性というのは我々考えもしましたし、現に大臣にも御報告としてそういうものも上がっております。それは、一つには私どもも護衛艦の高速化を図るという意味でエンジンのガスタービン化を逐次進めてきたという経緯もあってのことでございました。
  そして、今、先生が言われたような点、改めて、撮ってきた複数の写真等を今専門家が分析しているところでございまして、どんな機関かという細部までわかるかどうかちょっとわかりませんが、今正確な分析、検討をしているのが実態でございます。
○山崎力君 ということは、素朴な、報道を見た途端にすぐわかるようなことが、疑問としてガスタービンという、強いということになると、ガスタービンだとしたらここはどうなっているんだというすぐ判明するようなことがいまだに検討中だということになれば、この分析能力は何だということになりかねないわけです。そんな生半可なことを、今までかかっても確認できないようなことをあのすぐの時点で言うというのは、僕は細かいことですけれどもおかしなことだと思うんです。それはその都度はっきりしたときの根拠を示していただきたいと思うわけですが、後ほどで結構です。
  それで、もう一つその辺からいきますと、今回の海上警備行動の場合で、先ほど来の議論を聞いていると、事前準備もなし、運用計画もなし、訓練もなし、装備もなしで海上自衛隊は海上警備行動に踏み込んだと指摘せざるを得ないケースなんです、正直申し上げまして。そういうことを、状況がこうなったからまあとにかくやれ、適当にやれ、適当というのは非常に微妙な表現ですけれども、根拠があってこういうことだからやれということではなかった、それしか考えられない。
  反論があればお聞かせ願いたいんですが、例えば現場指揮官に対して具体的にどのような命令を出したんですか。

○政府委員(柳澤協二君) 今回の海上警備行動に対しましては、総理大臣の御承認をいただいて防衛庁長官から海上自衛隊行動命令を発出しておりますが……
○山崎力君 具体的な中身です。
○政府委員(柳澤協二君) 中身の概要で申し上げますと、一つは今回のことでありますので三月二十三日に発見されて海保が追跡中の二隻の不審船舶に対する警備行動だということ、それから指揮命令系統を指示しておりますが、まず各自衛艦隊司令官が第三護衛隊群司令をして現場の部隊を統括させるということ、それから各地方総監に所要の部隊を出して協力するということ、あるいは海上保安庁と共同して対処しようということ、さらに細かい措置については長官がその標準的なものを示すという形で、部隊の方に一通りの細部措置事項を示したところであります。
○山崎力君 今の御答弁だと、とめろとかなんとかという命令は出ていないんですけれども、それはどうなんですか。
○政府委員(柳澤協二君) これは実は閣議決定の中で停船、立入検査その他必要な措置をとるための海上警備行動という形で承認をいただいておりまして、それに基づいて防衛庁長官からの命令では海上における警備行動を実施せよという命令を出したというわけであります。
○山崎力君 そうすると、現場の最前線にいる人たちは何をしたらいいのかということがわからぬわけですよ。今までやってきたこともそうなんだけれども、具体的な海上警備行動で何をしてどうすればいいのかということがわからない。発動された警備行動に基づき当該不審船に対して停船をさせて立入検査をしなさい、こういう具体的な命令が現場の艦長なりあるいはそこに同乗している艦隊司令に対してはっきりした形でいけばいいんだけれども、そこがはっきりしていない。
  それから、では具体的に停船、立ち入りをしなさいといったときに、どこまでしていいのかということが自動的に定まっていない。ROEという、関係者は御承知の交戦規則ですね、どこまでの権限を与える、そこまでは自由にやりなさい、それを超えるものについては上の許可を得なさいと。それが各ポジションといいますか組織ごとに決まっていて、そこまでは自動的にこの命令が出ればやってよろしい、だけれども、それを超える場合は、そこが決まっていない上でぼんとこれをやられて、これをやりましょうか、あれをやりましょうかと相談しながら、時刻を争っているときに十分なことができるとは思えないんです。
  ですから、私が言ったように、事前の運用のことも定まっていなければ訓練もされていないし、機関砲を持っていなかったから大砲だと当たるとぶっ飛んじゃうよということにもなる。装備もされていない、装備もこれから検討しなきゃという。
  そういう点では、非常にある意味では中身的に言うとずさんなもとでこの海上警備行動が発動されたのではないかというふうな感じも否めないんですが、何かその点について御反論めいたものがあればお伺いしたいと思うんです。

○政府委員(柳澤協二君) 特に反論めいたというつもりはございませんが、今、先生の方から御指摘がありましたように、こういう場合のいわゆる行動基準というのは、一般的に申し上げれば、比較的ダメージの少ない措置から順に比較的強度の措置に移っていく一連の手順を示しておりまして、その際に一定の措置以上については別途の指示によって行うという決め方になるわけでありますが、そういったものを今回も停船のための措置としてこういうことをしなさい、あるいは立ち入りのためにこういうことをしなさいというのは当然ながら発出をしております。
  ただ、先生の言われているもう一つの論点は、それじゃ日ごろからそういうものを使った訓練なりが十分であったかというと、それはまた私ども、今回のことを踏まえて十分教訓を得て充実しなければいけない部分はあるだろうというふうに思っております。
○山崎力君 それでは、瞬時の対応をとらなくちゃいけない、その具体的な中身でいきますと、向こうが停船をした、警備行動で乗り移って検査をしようとした、それに向かっているボートに対して向こうが明らかに火器を向けた、対戦車ロケット砲なり機関銃なりを向けたと。こういった場合、どう対処するかというのは決まっているんですか。
○政府委員(柳澤協二君) 相手の具体的な武器がどうとか、あるいはさらに細部のところまではなかなか申し上げにくい部分があることは御理解いただきたいと思いますが、基本的に申し上げれば、警職法七条の準用の行動でありますから、それにのっとった形の行動基準というのをつくっておるということであります。
○山崎力君 その警職法自体も非常に場合がありまして、いわゆる海上の場合とそれから陸上の警察、海上保安庁の場合の違いも具体的な運用の場合というのは随分違ってくる。陸上だったら逃げればいいわけですけれども、海上の場合だったら船に穴をあけられたら沈んじゃうわけです。そういった違いがもちろんあるし、飛行機の場合も当然違ってくる。その辺のところをやっているとも思えません。
  時間ですから、最後に指摘させていただきたいのは、そこのところでの海上警備行動、海上自衛隊の行ういわゆる警察行動は、当然海上保安庁と連絡をとって、海上保安庁が行うべき手順その他と大きな違いがあってはいけないはずなんですけれども、その辺のすり合わせ、装備のすり合わせは今まで一切行われた形跡がない。人事交流も行われていない。船の名前が重なっているところも随分ある。
  海上保安庁のその一種のマニュアルを海上自衛隊が事前に入手して訓練もしていなければ何もしていないというふうに伝え聞いているわけです。ですから、そういう点を考えますと、今回のあれは明らかに準備不足もいいところで行われた。
  本来は保安庁がやらなくちゃいかぬということで今までやっていたところで、海上保安庁の方が問題は何倍もあるんですけれども、自衛隊としても、そのときどこまでやるんだということを明らかにした上で、海上保安庁と全く同じようなことで行動するんだということを明らかにした上でなければ、今後とも同じような形の問題を繰り返すというふうに私は思わざるを得ないので、その辺についてのお考えをいただきたいと思います。

○国務大臣(野呂田芳成君) 先ほど運用局長から答弁したとおりでありますが、部隊のとるべき措置につきましては長官が標準をきちっと示しております。これは要領みたいなもので、あえて言えば交戦規則に準ずるものだと思います。それから、命令の実施に関して必要な細部事項は海上幕僚長がつぶさに指令を出しております。だけれども、この中身を申し上げることは、今後の対応にいろいろ支障が起こりますので差し控えさせていただきたいと思います。
  今、委員から大変大事な御指摘をいただいたわけで、私どももすべて適切に対処できたとは決して申し上げません。初めてのケースでありますから、海上保安庁との連携につきましても、何か必要だということであればマニュアルもつくろうかという相談もして、始めようということにしてありますし、御指摘の御意見に沿って私どもも十全な対応を検討してみたい、こう思っております。
○山崎力君 終わります。

(後略)