質問「新ガイドライン法案修正箇所の問題点

(平成11年4月28日参議院本会議会議録より抜粋)


(前略)
○副議長(菅野久光君) 山崎力君。
    〔山崎力君登壇、拍手〕
○山崎力君 私は、参議院の会の代表として、ただいま議題となりました新たな日米防衛協力のための指針、いわゆる新ガイドラインの関連諸法案について、小渕総理に見解を伺うものであります。
  まず、先に質問された同僚議員も触れていますが、本案件は衆議院で長期間審議されてきており、そしてその土壇場の段階で修正が加えられました。しかも、かなり重要な部分を含んでおります。その内容については、今後、詳しく特別委員会等において質問させていただくつもりでございますが、いろいろな事情があったとはいえ、結局は政府案が当初の形で本院に送付されなかったことにつき、まず総理の御見解を伺います。
  私は、実は、新ガイドラインにつき、一昨年十二月、本院本会議で当時の平成会を代表して橋本総理に質問させていただきました。その際、幾つかの問題点を指摘させていただきましたが、今般、国会の承認が必要となるなど、改良点も確かにありますけれども、残念ながら、衆議院の先立つ審議で、多くは私の問題指摘が解消されるどころか、私にとってはますます矛盾点が明白化してきております。
  その中で私が最も重要だと思うのは、法や法治主義に対する基本的な欠如からきたと思われる法体系上の位置づけが不明確で、それゆえすっきりした形で国民の理解が得られないではないのかということでございます。
  そのうちまず取り上げたいのは、今回の問題の背景として、事あるたびに意識されてきた集団的自衛権の憲法上の制約、というより憲法違反とする点であります。集団的自衛権の否定は、理論上一国の中立政策と裏表の関係になっておる概念のはずであり、同盟条約ともいうべき日米安全保障条約とは本来は両立しない法解釈と思うのであります。
  もちろん、条約の片務性から、集団的自衛権の行使に当たらない内容であるという内閣法制局の解釈は耳にたこになってはおります。しかしながら、これはよく言えば独特、悪く言えばひとりよがりの解釈というべきものです。特に、いつまでたっても、事あるごとに一体化論を中心として武力行使とその定義、その内容にこだわらざるを得ないこうした政府見解は、国際的にも一般的にも法律解釈の常識とは異質のものであると言わざるを得ません。
  ですから、今回の論議でも、本来ならば既に解決済みのはずの日米安保条約の六条事態、米国の戦闘作戦行動のための基地使用等を背景に、戦争巻き込まれ論を絡めた論議が、無意識からかもしれませんけれども、たびたび行われてきた感が否めないのであります。
  そこで、この際、六〇年安保の議論の原点に戻って、改めて総理みずからの口から、何ゆえ我が国憲法は殊さら集団的自衛権を否定するかという点と、日米安全保障条約、特に米国の直接日本防衛以外のための作戦行動、基地使用との関係について、その法的側面も含め、一国の指導者としての考え方をきちっと語っていただきたいと思うのであります。
    〔副議長退席、議長着席〕
  次いで浮上した問題と考えるのは、巷間、特に地方自治体関係者に指摘の多い周辺事態時の地方自治体の協力内容であります。
  本来、この問題は日本有事の際、地方自治体あるいは民間も含め、我が国防衛のためにどのように自衛隊等に協力するのか、また、米軍が協力して日本の防衛に当たる場合どのようにするかが法的にもはっきりしていれば、日本有事と当該周辺事態との性格の違いを検討、その都度協力内容をかげんすればよいだけの事柄です。
  それが、日本有事の際の自治体の協力内容、さらには省庁間の協力ですら煮詰まっていない現状では、こうした本来なら無用のはずの疑念が持ち上がるのはいわば当然であります。家を建てるのに土台を固めず、まず屋根からという感が否めないのであります。総理のお考え方をお聞かせください。
  こうした周辺事態という、いわば日本国外での問題より、まず、土台の足元の日本一国の課題といえばすぐ思いつく例は、先般発生した日本海での不審船事件の際の海上自衛隊と海上保安庁の連携の悪さと行動のわかりにくさであります。
  役割分担の不明確さもそうですが、具体的な点で言えば、秘話無線交信ができない、あるいは同一の重複した艦船名の多さなど、政府内ですら協力して事に当たる発想が全く欠如していたと言わざるを得ません。行動の面で言えば、本当に拿捕する気があったのかどうか、もし次回があったらどうするのかが見えてきません。俗に言う、自分の頭の上のハエを追えないで人様のことを云々ということになりかねないわけであります。省庁間のメンツの問題もありましょうから、それこそ総理のリーダーシップで、速やかに重複艦船名の調整をするくらいのことはできると思うが、いかがでしょうか。
  最後になりますが、今回の衆院の修正に関し最も懸念されるのは、船舶検査条項の削除と別法による制定であると私は思います。
  確かに、日米防衛協力に関して、そこだけ国連の関与を前提とした条文があること自体不自然であるという論に一理はあると思います。さらに、国会運営上、見事な手法だったとは思います。しかしながら、ここで私が問題としたいのは、直接その点ではありません。船舶検査の修正削除後の第二条、周辺事態への対応の基本原則において、「後方地域支援、後方地域捜索救助活動その他の周辺事態に対応するため必要な措置」云々となっていて、条文だけ見れば、「その他」の中に船舶検査活動を含めてもよい表現になっております。もちろん、今回の衆院の審議経過を見れば含まれていないということではありましょう。
  しかし、それでは、法文上船舶検査は周辺事態に対応するための必要な措置の一つとは言えなくなって、自家撞着を生じかねません。そして、新ガイドライン自体の内容、米側の要請の経緯を見れば、条文だけで判断する際、むしろ含まれるという解釈の方が自然ですらあります。
  仮に、別法をつくり、それが政府原案に沿った内容であったとすれば、単独法とした場合はむしろ国連活動への協力関係法の一つとしての性格が浮上してこざるを得ません。政府が船舶検査をガイドライン関連法に含めた当初の意義が薄れることになると思うのですが、それでよいのでしょうか。
  いずれにしろ、仄聞するところ、アメリカ側の協力要請の中でも肝要な項目の一つであったとされる船舶検査のこうした立法上の不明瞭化は、野党側の私が言うべきことではないと思いますけれども、せっかくの総理渡米前の衆議院通過の意義を大きく損なうばかりか、国民あるいは日米関係、あるいは法体系自体にとっても大きな禍根を残す可能性ありと危惧するものですけれども、総理のお考えを伺いたいと思います。
  いずれにしろ、今後の委員会審議の中で、国民に、ひいては関係諸外国にも、今回の新ガイドラインの意義、内容のみならず、我が国の安全保障政策全般を誤解なく理解していただけるよう、より一層の努力が必要であるという点を強調して、私の質問を終わります。
(拍手)
    〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕
○国務大臣(小渕恵三君) 山崎力議員にお答え申し上げます。
  まず、周辺事態安全確保法案の修正についての御質問でありました。
  本修正は、自民党、公明党・改革クラブ及び自由党との間で精力的な御議論の上、三会派間で合意されたものと承知をいたしております。
  政府といたしましては、今般の修正を誠実に受けとめ、参議院における御議論も経て、これが可決、成立した際には、本法案に基づく対応に遺漏なきよう万全を期していきたいと考えておるところでございます。
  集団的自衛権に関するお尋ねでありますが、政府は、従来から、憲法第九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであり、外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することを内容とする集団的自衛権の行使は、これを超えるものとして憲法上許されないと考えておるところでございます。
  安保条約と集団的自衛権の関係につきましてでありますが、日米安保条約及びその関連取り決めに基づく、日本国から行われる米軍の戦闘作戦行動のための基地としての施設・区域の使用につきまして応諾を与えることは、実力の行使に当たらず、我が国憲法の禁ずる集団的自衛権の行使には当たらないと考えます。
  地方公共団体の協力についてお答え申し上げます。
  本法案では、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える周辺事態への対応の重要性にかんがみ、地方公共団体の長に対する協力の求めについて定めております。地方公共団体等に十分な御理解をいただき、不安を払拭すべく、これまでもさまざまな機会をとらえて説明を行ってきておりまして、今後とも努力してまいります。
  海上保安庁と海上自衛隊との連携について御質問でありました。
  両庁は、海難救助等に関して平素から緊密に情報交換を行い、連携を図っているところでありますが、先般の不審船事案の際には改めて両庁の密接な連携の重要性が認識されたところであります。例えば艦船名が重複しておることにつきまして、艦船名の前に巡視船、護衛艦と呼称をするなど混乱の生じない運用が図られていると承知をしておりますが、いずれにせよ、政府としても、先般の教訓を生かし、両庁がより円滑かつ緊密に連携することにより、我が国の安全の確保及び危機管理に万全を期してまいりたいと考えております。
  船舶検査活動について御質問がありました。
  本件につきましては、三会派間でぎりぎりまで協議された結果、今国会中にも別途立法措置をとるとの前提で削除されたものと理解しております。
  また、船舶検査に関する立法措置の中身につきましては、今後三会派間で協議されていくものと理解しておりますが、周辺事態安全確保法案の中で議論をされていた船舶検査活動とは全く別のものや、その範囲を大きく拡大するようなことは考えられていないものと理解しております。
  以上のことを踏まえますれば、今般の衆議院における修正が、指針関連法案の意義を深め、国民や法体系に大きな禍根を残すこととなるとは考えておりません。
  いずれにいたしましても、山崎議員御指摘のように、今般の問題につきましては、国民の理解、協力を求めるためにさらなる努力をいたすべきという御指摘につきましては、十分心得て対処いたしてまいりたいと思っております。
  以上、御答弁申し上げます。(拍手)
(後略)