質問「『衆院審議は余りにも不十分』ほか

(平成11年5月10日参議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 参議院の会の山崎でございます。
  今回の一連のガイドライン関連諸法案の審議に際しまして、総括でございますから、まず私の総体的な感想を述べさせていただいて、質問に入らせていただきます。
  まず、一番最初に感じたのは、やはり法体系の中でどういうふうに位置づけるかということが非常にぎくしゃくしている。例えて言えば、私は代表質問のときにも申し上げましたけれども、建物をつくるのに土台をつくらないで、まず屋根からつくってそこから柱をおろして最後に土台をつくろうとしている、そういう感じが否めない。だから無用の調整といいますか、ロジックの技術でその場その場といいますか、そういったものを切り抜けていくんではないかという気がいたしております。
  そういった点と、特に今回の問題で言えば、有事法制がどうしてもない。有事法制という表現がいいかどうかは別として、そういった中身を詰めてないから、無用の議論とは言いませんけれども、その際それを詰めておけば、今回改めてその議論をしなくてもいいようなことを今しなくてはいけない、そういうふうな印象を持っております。
  それから、今回の具体的な問題で言えば、やはり修正の問題というのをどうとらえるかという点で、私もいろいろ疑問を感じるところがございます。修正の問題については、今後それだけの集中的なもので審議するということでございますので、きょうは表面的なといいますか、概括的なところから入らせていただきます。
  まず、同僚議員からもいろいろ質問されておりますけれども、あの修正を、ああいう中身であの時点になぜしたのか。どうせならば、三つの法案がそういう意味で大切ならば一つのいわゆる別法にする。船舶検査活動も、ある程度めどをつけてから参議院に、衆議院で可決されなかったのか、そういうことをなぜ協議されなかったのかという点についてお伺いしたいと思います。

○衆議院議員(大野功統君) 山崎先生お尋ねの、なぜ船舶検査、必要と感じるならばそこを詰めてから衆議院で採決しなかったかということでございます。
  その点につきましては、先ほども御説明申し上げましたけれども、第一に、我々は十分の審議をこのガイドライン法案にかけました。九十三時間以上の審議をかけておりますし、また理事会でもさまざまな協議を行いました。
  その中で、必要性は認めつつも、どうしてもこの船舶検査につきましては法文の表現の問題につきまして合意できない、長くやりましたからもう潮どきじゃないか、こういう感覚が一つあります。それからもう一つは、やはりガイドラインの中で入れるのではなくて、一般法としてもあっていいのかなという感覚もございました。
  そういう意味で、やはり備えはできるものから早くやっていこうということで、この際、船舶検査を削除した上での採決に踏み切った次第でございます。
○山崎力君 まず、今の御説明ですと非常にひっかかるものがあるわけです。と申しますのは、大切なものだから今国会中にもやりたいとおっしゃっているんですが、長い間詰めた議論をしても詰まらなかったものがなぜこれからの短い時間で、今国会中にもできるというふうな合意をなさったのか。できるものなら早くということは、これはいわゆる国連の絡みだけでなくてということもできるかもしらぬということもあったのでとおっしゃいましたけれども、これは国連の安保理決議等を入れるか入れないかというのは、法体系上極めて私は重要な意味を持つと思うんです。
  ガイドラインの関連の中で入るのか、それとも日本の対米協力の中の一部なのか、それとも国連協力の中の一部なのか。法律を考えた場合、この法律というのはどこに当てはまる、どこの体系の中に入るんだろう。これは極めて理念的なことからいけば非常に難しいといいますか、哲学部分も入ってくるような部分で、その辺が詰まらなかったからこれからやっていかなくちゃいかぬということであるならば、少なくとも相当程度これから議論を進めなければいけない。今国会中にこれがまとめられるような状況で、努力目標ならともかく、対外的にそういうふうなことでやるんですよというふうな表現をされるのはいかがかと思うんですが、いかがでしょうか。

○衆議院議員(大野功統君) 船舶検査の基本的な問題点というのは、第一に旗国の承認でございます。それはもうほとんど国際的な慣行あるいは国際法に基づくことでございますけれども、旗国の承認、これはもう絶対必要である。
  それから、運用上実際に行われておりますのは船長の同意ということでございます。あと、威嚇射撃をどうするかという問題点でありますが……
○山崎力君 質問に答えるように言ってください、委員長。
○衆議院議員(大野功統君) 旗国の同意という観点から見れば、国連決議といった場合には経済制裁に基づくものになりますので、国連憲章二十五条によりまして当然旗国の承認があるとみなされる。
  しかし、国連において例えば五大国の中の拒否権がございますから……
○山崎力君 委員長、質問に答えるように御注意願えませんか。
○衆議院議員(大野功統君) 質問に答えているつもりでございます。
○委員長(井上吉夫君) できるだけ短くやってください。
○衆議院議員(大野功統君) はい。
○山崎力君 では、質問の意味を言います。時間が足りませんので、申しわけないんですが。
  私は、そういったものを含めて考え方が違うんじゃないんですかと、三党どういう形か知らないが。それで、そういった違った重要なことを持っているんだから、今国会中の残りでできるというようなめどが立たないままああいう表現をしたんじゃないんですかとお聞きしているんです。めどは立っているんですか、立っていないんですか。まず、そこからお答え願いたいんです。

○衆議院議員(大野功統君) ですから、ポイントは旗国の承認ということでございます。その承認というものをどういうふうに考えるか。国連ということになりますと、これは拒否権がありますから事実上できなくなる可能性だってある。したがって、その表現ぶり、ポイントはもう旗国の承認でございますから、それを国連という形であらわすのか、それとも旗国の承認という形であらわすのか、その表現上の問題ですから、私はこれは協議をすれば必ず合意できるもの、このように思っておりますので、今国会中にも法的措置をぜひともとりたい、この努力をやってまいるつもりでございます。
○山崎力君 それでは、そのタイムスケジュールは今どういうふうになっておりますでしょうか。
○衆議院議員(大野功統君) まず、大枠を設定しなければなりません。我々、考えておりました船舶検査の場合には、例えば威嚇射撃のことは考えていなかった。そういうことについてきちっと大枠をつくって、そして我々が内閣提出法案を修正したわけでございますけれども、内閣提出法案とするのか、それとも議員立法とするのか、こういう点、大枠を詰めてやっていかなきゃいけない。その大枠を詰めようとしている段階でございます。
○山崎力君 要するに、タイムスケジュールはできていないということですね。
  ですから、そういう点で、今からの日程から考えて、できるものから早くやるというのならそれは一つの考え方なんですが、そこのところで、すぐできる、だけれどもタイムスケジュールは立っていない、だけれども今国会中にはやる、そういうふうな、僕には、懸案の先送りのその場しのぎの問題じゃないかな、そんな表現上の問題だったらなぜ一週間程度延ばしてできなかったのかという疑問が残るわけでございます。この問題は後ほどまたやらせていただきます。
  もう一つ、先ほど申し上げた問題からいけば、周辺事態よりも先に詰めておくべき大きな問題が今回の周辺事態で煮詰まってきたといいますか、改めて浮かんできた部分があろうかと思うわけでございます。
  例えば、本当に日本有事の際、対アメリカといいますか、アメリカが安保条約第五条に基づいて共同対処する、こういったときに日本側はどういうふうなことをアメリカに対して、今のガイドラインのような協力ができるのかできないのか、できるとすればどういう法律に基づいてどの程度までできるようになっているのか、この辺をちょっと教えていただきたいと思います。

○国務大臣(高村正彦君) 我が国に対する武力攻撃が行われる場合でありますが、日米安保条約第五条に基づき、我が国は米国と共同して共通の危険に対処するよう行動することになるわけでございます。
  その具体的内容につきましては、新たな日米防衛協力のための指針において、整合のとれた共同対処行動のための基本的考え方、作戦構想、作戦に係る諸活動等が示されているわけであります。より具体的に申し上げますと、作戦に係る諸活動及びそれに必要な事項として、後方支援活動の中で特に配慮すべき事項として、補給、輸送に加え整備、施設及び衛生の各分野が挙げられているわけでございます。
  周辺事態安全確保法案との関係について申し上げると、我が国に対する武力攻撃が行われる事態は本法案が想定している事態ではないわけでありますから、米軍に対する支援は別の法的枠組みで行われることになるわけでございます。
○山崎力君 安保条約五条の場合、日本の国内であればそれはそれで一つの考え方だろうと思うんですが、国外においてはどのようになっておりますか。自由に国外においてもそのような対米協力ができるということになるんでしょうか。
○政府委員(竹内行夫君) 日本の国内、国外に分けてそういう場合の我が国の対米協力について定めた法律は現在のところないと思います。
  今、大臣から申されましたのは、そういう五条事態になった場合にはこの周辺事態安全確保法案の適用はないということで、そういたしますと、既存の法律、すなわち自衛隊法とか、そういった法律に基づいた根拠のある協力ならばできる、こういうことでございます。
○山崎力君 ちょっと今、意味がいま一つ聞き取れなかったんですが、それではわかりやすく具体的にお聞きしたいと思います。
  日本有事の際、日本の国外においてアメリカの船に対して、今度の周辺事態法にあるように、燃料あるいは水等、そういったものの補給はできるんでしょうか、できないんでしょうか。

○政府委員(佐藤謙君) 今おっしゃったこの周辺事態安全確保法で予定しているような公海上の米艦艇に対しまして輸送するというようなことは、これは現行の自衛隊法ではそういった根拠はございません。
○山崎力君 ということは、こういうことになるわけです。周辺事態で我が国の領海外においてアメリカに対して我が自衛艦が燃料を補給していた、ところがその時点において我が国が有事になったと。そうしますと、その有事になったときにそれをやる根拠規定がないわけですから、補給をやめにゃいかぬ、こういうことになるわけです。こんなばかな話はないので、これをやったらもうアメリカから見れば世界の物笑いになるわけです。
  だから、そこで考えられるのは、周辺事態法でもこれを許しているんだから、そこから考えて、それよりもシビアな状況の日本有事の際には当然これができるんだということで補給を続ける、これしか考えられないわけです。日本有事にこれだけのことをアメリカに協力しますよというのができていれば、周辺事態でそのうちどれだけやればということになるんですが、どちらをとるか、これは仮定の問題でお答えしにくいかもしれないんですけれども、そういう事態が法的には起こり得るということは、これは認められるんでしょうか、どうでしょうか。

○国務大臣(野呂田芳成君) 先ほどから御答弁しているとおりでありますが、周辺事態が我が国に対する武力攻撃に発展した場合には、周辺事態安全確保法案により対応することはできないわけであります。また、我が国有事に際しては、自衛隊法第七十六条に定められた防衛出動の枠組みなどにより対応することとなるわけであります。
  しかしながら、我が国有事に際しての対米支援を含む米軍の行動に係る法制につきましては安全保障上の課題であると認識しており、その取り扱いについては今後真剣に検討してまいる必要がある、こういうふうに考えております。
○山崎力君 ということで、真剣にやっていただく課題だとおっしゃった。確かにそうなんですが、そうしていただかなくちゃ困るんだけれども、現実の問題としてこれだけあるわけですよ。周辺事態だ、それじゃ協力しましょうと言って、それが日本有事になったらその協力はできませんと、こんなばかなことが現実に想定できるわけです、法的には。
  これが明らかに、私の言った土台をつくらないで柱を立てようとするからこういうことになるんです。あるいは、そこから類推解釈をする、周辺事態でこれだけできるんだから、それよりもひどい厳しい日本有事にこのくらいの協力はしましょうよ、こういうことになると思うんです。
  ですから、それはどちらをとるのがいいのか、日本のためになるのかどうかわかりませんけれども、少なくとも法治国家であるならば、法の順序立てからすればこういうやり方をしていただかなきゃ困るという気持ちをお伝えしたいと思います。
  もう一点、周辺有事じゃなくても、せんだっての北朝鮮と思われる不審船事件のときに、海上自衛隊が海上保安庁からの委嘱を受けて海上警備行動に移りました。
  ところが、それはそれなりにいいんですけれども、普通そういった場合というのは警察行動なわけですね。司法警察権を持った者が、あるいはそれからの命令を受けた者がやる行動のはずなんですが、海上自衛隊あるいは防衛庁に、これは内部の、警務隊の方は内部規則、あるいは艦長としての艦内の警察権はともかくとして、ああいう犯罪者、容疑者を取り締まるという警察権、特に司法警察権というのは付与されていないはずですが、その辺はどういうことになっておりますでしょうか。

○国務大臣(野呂田芳成君) 御指摘のとおり、自衛隊には司法警察職員としての職務を行う権限は与えられておりません。
  そこで、海上における人命、財産の保護または治安の維持につきましては、第一義的には司法警察権を有する海上保安庁が担当すべき任務とされているから海上警備行動を発令し、自衛隊には海上における人命、財産の保護または治安の維持のために必要な権限を付与する場合においても、司法警察職員としての職務は海上保安庁において行うことが適切と考えられたためであると理解しております。
  現在、防衛庁におきましては、このような法的スキームのもとで、海上保安庁とより円滑かつ緊密な連携を行っていくため情報交換や海上警備行動時の連携のあり方、司法警察権を有する海上保安庁への引き継ぎ等について検討しているところであり、海上保安庁との間で共同対処マニュアルを作成することも有効と考えており、近く両大臣で協議することにしたいと思っております。
○山崎力君 これは海上保安庁と海上自衛隊のみならず、ある意味においては治安出動時における自衛隊、陸上自衛隊が中心になると思いますが、その警察権の問題も入ってくる問題だと思います。
  そういった意味で、有事どころか周辺事態どころか、平時においてのこういう危機管理の問題というものと整合性が全然とれていない。どこまで自衛隊に、そういったものにやらせるのか。ただ姿だけ、その対応だけつくっておいて、組み合わせたところの体系が全然できていない、こういうふうに言わざるを得ないと私は思うんです。下手をすれば、一生懸命やって、あのときの、いろいろなケースが考えられますけれども、相手方の対応いかんによっては、いわゆる司法警察権限のないものがああいうことをやったということが、海上自衛隊が罪に問われかねない、越権行為であるということで罪に問われることにもなりかねない、そういうふうな恐ろしい法体系に今我々はあるんじゃないかという危機感を持っております。
  時間でございますので、最後に一言。
  そういった見解を持つ私がおかしいんでしょうか、それともそういった中での問題をどういうふうにとらえてくるか、総理の御感想を一言伺って、私の質問を終わりたいと思います。
(拍手)
○国務大臣(小渕恵三君) 有事における立法の問題にも絡むことだろうと思いますけれども、今の山崎委員の御指摘について十分勉強させていただきたいと思います。
(後略)