質問「公述人のご意見をお聞きしたい

(平成11年5月18日参議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会公聴会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 参議院の会の山崎でございます。
  まず、栗山先生よりお伺いしたいと思いますが、いわゆる武装中立を含めた中立国、それからかつては非同盟諸国というような言い方で同盟関係を結ばないでというようなことを標榜した、特に中進国から発展途上国の集団があったわけですけれども、そういった国々がいわゆる国際紛争解決のために国際社会においてどういう役割をしてきたというふうにお感じになっておりますでしょうか。

○公述人(栗山尚一君) 冷戦中、今、山崎先生御指摘のように、かなりの数の国が非同盟運動というものに参加をいたしまして、インドとかインドネシアとかユーゴとか、そういう国が中心になりまして非同盟運動を行って、東西対立の中で政治的には中立という立場をとるということをやったわけでございますが、それはそれなりの役割と申しますか、国際政治における影響力というものを持っていたグループであるというふうには思います。
  しかし、それではそういった国々が世界の平和と申しますか、冷戦時代の平和を守るための国際秩序というものにどれだけ貢献したのかということになりますと、私はかなり疑問ではないかというふうに思います。まさに今日の非同盟運動のリーダーでありましたインドが現在どういうふうな状況にあるかというのを見ても、その点はかなりはっきりしておるんではないかというふうに思っております。
○山崎力君 平山公述人にお伺いしたいと思います。
  海員組合として、いろいろ外航を中心とした船員の方々の御苦労ということはよくわかるんですけれども、今回のガイドライン、周辺事態に関係して、日本の一般の船が周辺事態におけるアメリカに対する物資輸送、兵たんということになるかならないかというのは定義の問題もあろうかと思うんですが、その輸送というものを船から船、洋上での輸送というものは物理的に可能なのかなというちょっと疑問があるんですが、皆様方はどういうふうなことを想定されているんでしょうか。

○公述人(平山誠一君) その件につきましては、先ほどの宮本委員の方の質問にも若干お答えさせていただきましたけれども、物理的にはほとんど不可能だと。洋上で何千トンも何万トンもあるような物資の受け渡しを、きょう資料で皆さんに最近の船の格好なり形というのはどういうものかということをお示しできればよかったのかもしれませんけれども、その辺は海洋国家の国民の皆さんの常識と、こういうことで用意してきませんでしたけれども、まず物理的に不可能と。
  したがって、海上で兵たんに当たるといいますか輸送をする場合には、必ず港から港へ行くと。すなわち、公海を越えて相手方の領域へ行かなければ船舶による海上輸送というのは完遂しない、こういうふうに考えております。
○山崎力君 ということは、いわゆる周辺事態の法律案が通ったら、新たな日本としての義務が生ずる地域というのがあるわけですが、協力するかしないかというのは、これは日米安保の今度のガイドラインの法案にかかわらず、安保条約がある以上そういった中で日本が協力するかしないか。要するに具体的な想定をすれば、朝鮮事態になったときに、日本の船員の方たちが協力するのは、日本から物資を積んで朝鮮半島のしかるべき港に物資を運ぶ、こういう協力になると思うわけです。ならざるを得ない、今のお話でも。
  さすれば、このことは今回のガイドラインの問題、この法案が通ったから通らなかったからという問題ではないんではないか。今までの我々の審議の中で出てきているのは、今度のガイドラインの法案において、協力するのは後方地域においての協力だ、こういうふうになっているわけですね。ということは、今回の新たな範囲ではないところでの協力を実質的にせざるを得ない。ということは、繰り返しになりますが、言葉をかえれば今回の法案と具体的には関連、関係の極めて薄い、どちらかといえば安保条約の一種の同盟国としての対米協力ということに実質的にはなるというふうに感じているんですが、そういう考え方というのはおかしいでしょうか。平山公述人にお願いします。

○公述人(平山誠一君) 例えば、先ほども御紹介しました湾岸戦争のときには、当然ながら日本の自衛隊というのは専守防衛のための軍隊でありますから、それによって国民的な合意を得られている軍隊でありますし、当然ながら先頭に立って自衛艦を輸送に使うというようなことはできないわけでありまして、そういう意味で、我々は民間でありましたけれども、結局我々がそういう形で行かざるを得ないのかなと。そこは先ほど申しましたように非常に厳しい選択だったわけでありますけれども、まさに先ほど紹介した船長の思いということを含めて、我々がそういう役割を果たしたことそのものを否定したり卑下したりということではありません、そのこと自体は一つのある種の国民的な合意に基づいて行われたということでは我々も誇りを持っているところでありますけれども。
  いずれにしても、そういうことが今後も、周辺事態というのは定義があいまいでありますから一体どこまで範囲が広がってくるのか、このことについては我々も極めて厳しい見方をしておるところでありまして、これがどんどん広がっていくことによって兵たんの先頭にいつも我々が、日本から発進される船が先頭に立っていかなきゃいかぬ、これは一民間人であり同じように税金を払っている国民としてどうしても、繰り返しになりますが納得いかないところである、こういうことを申し上げておきたいと思います。
○山崎力君 そういう疑問というのはあるかもしれませんが、少なくとも今回のガイドラインで直接懸念が具体化されるものではないというふうにしか今の公述は受けとめられなかったです。
  時間の関係で冨澤公述人にお伺いしたいんですが、今回の審議を通じて私が非常に感じているものは、ガイドラインはそれはそれとして、それとの絡みの国内法でいくと余りにもそごが多過ぎる。要するに国内的なものが非常に未整備である。かえってそのことによってアメリカに対して疎んじられるというんでしょうか、栗山公述人の表現をかりれば、その時点で日米同盟がおかしくなるようなことにもなりかねない。例えば、周辺事態で自衛隊の補給艦が周辺地域において補給中日本有事になった、ところが有事になったときに対米協力の法制ができていないものですから、その時点で、日本有事になったところで油の補給をストップしなきゃいかぬというような今の法体系になっている。そんなばかなことがということになるわけです。
  そういった点、現場の自衛隊を率いていた経験からして、ガイドラインよりはむしろ国内法の整備だ、非常事態法の整備だという気がしているんですが、その辺御経験も含めて、よく言われる道路交通法で何が起こっても赤信号なら出動した自衛隊がとめにゃいかぬという、そういうこともあるわけですが、その辺についてのことをちょっとお教え願えればと思います。

○公述人(冨澤暉君) 御承知のように、日米ガイドラインが昭和五十三年に最初にスタートしたわけですが、そのときは米軍との関係でも、日本有事の問題を中心に私ども、計画と言っちゃいけないから研究だということでやっておりました。それと並行して、先ほども申し上げましたけれども、やはり日本有事の場合の法制というのがないとそれが生きないということで、一方でいろいろな研究もしてまいりました。しかし、このガイドラインに基づく作戦研究の方はそれなりに進んだのですが、それを支える有事法制がないということで非常に困っておったわけです。だから、早く日本有事の法制をつくってほしいということはかねがね念願していたところであります。
  しかし、今般は、五年前の朝鮮の核疑惑から始まって、そういう日本有事の前の周辺事態に何か我々が支援することはないかという話題が出ました。そのときに、その事態も大切だけれども日本有事も早くやってくれないかという意見は当然私どもの仲間にもありましたけれども、しかしやっぱり実質的に考えると、より近い将来に起こり得る事態というのはむしろこちらの方かなという判断でこういう結果になったのだろうと思います。
  その辺の判断はむしろ政府の方がされたわけでありますので、おっしゃるとおり、私たちとしては日本有事の問題というのを、もう相当、何十年と待っているわけでありますから、さっき申し上げましたように早速にやっていただきたいという気持ちであります。
○山崎力君 終わります。ありがとうございました。(拍手)
(中略)

○山崎力君 参議院の会の山崎でございます。
まず、藤井公述人にお伺いしますが、先ほどからの御意見を伺っての私の意識なんですけれども、公述人は安保条約並びに自衛隊というのは憲法違反だとお思いでしょうか。

○公述人(藤井治夫君) 今の御質問は、私は法律家ではありませんので詰めた議論はしたことは、考えたことはございません。ただ、憲法問題を論じられる裁判の場等で素人なりの御意見を申し上げたことはございます。
非常に憲法上疑いが深い、護憲性に深い疑いがある問題を抱えているというふうに思っております。
○山崎力君 そういった考えのもとに、藤井公述人の考える国家としての自衛権のあり方、それの担保装置たる武力組織のあり方というのはどのようなものだとお考えでしょうか。
○公述人(藤井治夫君) 私の考えでは、一番これが理想像だというふうなものは提示することはできませんけれども、少なくとも今日までとってきた政策、つまり非核三原則とか専守防衛とか、あるいはまた武器輸出禁止とか宇宙の平和利用とか、そういうふうな原則を守り抜いていくことが日本の安全にとって、またアジアの安全にとって一番寄与する道じゃないかというふうに思っております。
○山崎力君 それはどういう観点からなんでしょうか。日本が戦争の主体となってほかの近隣諸国にいろいろな問題といいますか被害を与えた。それに対する反省からこういったものが出て、憲法もその一つでありましょうし、そういったことなんですが、そうしますと、そこのところの考え方というのは、戦後一貫して我が国においては武力装置としては米軍が占領軍から始まってずっといるわけです、旧安保時代も含めてですけれども。そういったものとして日本の国民が自律的にそういったことを考えてこなかった、みずからどう律してどういうふうなことをやっていくかということを考えてこなかったというのが一番の問題点じゃないだろうかというふうに私は感じております。
その中で、今おっしゃられたことがどういう論点から、歴代政府その他がやってきた非核三原則を含めた国民の気持ちというものであろうということはわかるんですが、それと同時に、先ほど申し上げた在日米軍がずっといたということもまた事実でございまして、その辺のマッチングというんですか、整合性がどうも私は公述人の話から見えてこなかったものですから、ちょっとお伺いしたいんです。

○公述人(藤井治夫君) 私が一番最初に申しましたように、平和主義というものは、今おっしゃいましたようなそういう弱点というのはあったと思います。しかし、平和主義のためにどれだけのことをできるかというような方向を出して、そうして汗を流すというふうなことは可能だと思うんです。まさに、そういう方向で護憲の立場に立っておられる皆さん方がやっていただけるということが非常に求められているんだと思います。
そのことは、私の戦争体験というのも一つございます。つまり、日本は加害者としてアジアに対して向かったわけでありまして、かつそのことについての何の反省あるいはまた償いもしていない、そういう部分もあるわけです。したがいまして、中国にしろ朝鮮にしろあるいは東南アジアにしろ、そういう立場で関係を深めていくことが求められているし、もしそういうふうにすれば、先ほど来もちょっと指摘がございましたけれども、日本とアジアとの間にある溝、そういうものをやっぱり埋めていくことができる。そして、そういうふうになれば日本の平和政策というものがアジア諸国と一体化できるんじゃないか、そう思うんです。したがいまして、安保条約とかあるいは自衛隊の強化とか、そういうことなしに、別の手段でもってアジアの平和を築いていくことが可能になる。
ただ、今までほとんどやっていなかったと思います。例えば平和協力というようなことでもほとんどやっていなくて、実際はPKOの問題が出てから非常に泥縄式に取り組んだというふうな面があったと思うんです。そういうことのないように、そこのところをどうするかということを考えていけば方向が見えてくるように私は思っております。
それで、最近の周辺事態法及びそれに伴ういろんなやり方というのは、むしろ逆効果であって、非常に問題の解決を難しくしてきているんじゃないかというふうに考えております。
○山崎力君 法律の専門家でもないし、まして政治の方ということでもないんでしょうが、そうすると、やはり藤井公述人の話からすると、現存する国会に大多数を占めている、この一連の法案審議をしている議会の構成が日米安保を肯定する人がほとんど、まあ固有名詞を挙げれば共産党さんとあと一部の政党あるいは個人だけが日米安保を否定して、大多数の議員の所属する政党その他の人たちが肯定していると。このギャップというものは極めて法案審議の中に大きく出てきているだろうと。ところが、これが現存の選挙の中でほぼ一貫して選ばれてきているというそのギャップ、そこのところがある意味では今回の法案で反対されている方々との意識のギャップじゃないのかなというふうに思っている次第です。
藤井公述人ばかりというわけではなくて、恐縮なんですが、岡本公述人それから猪口公述人、簡単に一言ずつお答え願いたいんですが、今回のガイドライン関連の法律というものは、日米安保の実効性を高めると同時に、自衛隊が日本の領土、領海外に出て協力するという意味では、先ほど田委員が申されたように、確かに一歩踏み出した内容であろうと私も思いますが、そのことが相手国、周辺事態の最初の当事国にとって、アメリカ軍が日本に基地を置いているという安保条約自体以上に日本に対する敵がい心というんでしょうか、そういったものを植えつける要素になるかどうか。
今までは日本国内だけでの対アメリカ協力だった、それが半歩だか何歩だか知りませんけれども、一応、後方地域とはいえ、日本の領土、領海外に出てアメリカに協力すると。このことがどの程度周辺事態の当事国にとって日本への敵がい心をあおる行為になるのかというふうなことがポイントだろうと私は思っておりますが、その辺どのようにお考えでしょうか。

○委員長(井上吉夫君) 時間が短うございますので、簡潔に。
○公述人(岡本行夫君) 一言だけ申し上げます。
自衛隊の我が国の領海、領土、領空外への出動というのは、憲法上禁じられておりますのは武力行使を目的とする場合だけであります。本件のような後方支援については適用されないと存じます。
自衛隊は、例えば各国への親善訪問であれ演習であれ世界じゅうに出かけていくわけでございます。これは安保条約の実効性、そして基本的なことは我が国自身のためということでございます。国際的な影響のないほかの国の内戦、内乱に自衛隊が米軍の支援をするわけではございません。我が国の安全が脅かされたときに限っての支援活動でございますから、これは当然、現法及び今までの法制の中で想定されたことであると存じます。
○公述人(猪口邦子君) 私は、近隣諸国の敵がい心をあおることになるのかならないのかという御質問に対しまして、以下のように答えたいと思います。
これは、日本のそのような後方支援活動に先ほどから申し上げております人間への視点があるかどうかということであると思います。それは、そういうような緊急事態に限らず、さまざまなアジア太平洋地域における困難性に対して日本が人道的で人間安全保障への強い意識、例えば難民救済であるとか貧困の撲滅であるとかさまざまな非軍事的な面における人間安全保障への視点と人間への視点が連続的にこの地域において感じられるような対応を今後していくことができるかどうかということにかかっていると思います。
そうであれば、自衛隊につきましても具体的には余りそういう形で出動することにはならないようにも思うんですけれども、自衛隊の活動につきましても、要するに新しいタイプの実力部隊というような概念で世界が日本の部隊をとらえてくれるような、そういう方向性を導き出すといいますか、それも不可能ではないと思います。つまり、攻撃を全くミッションとは考えない、そして人間への視点を持つ、人間への安全保障という観点から被害の最少化と個々の人間の具体的な救済、難民救済も含めた救援、救済について努力する人々、実力部隊というようなとらえ方で今後日本のこの実力部隊が世界に理解され、できればほかの国々もそのような形にそれぞれの国の実力部隊を編成し直していくというのを二十一世紀において課題とするような国も、特に第三世界において出てくることが望ましいと思いますけれども、そういういろいろな可能性があると思います。
ですから、敵がい心をあおるかどうかというのはかなり条件的なものであると思います。今後の対応次第という形だと思います。
○山崎力君 どうもありがとうございました。終わります。(拍手)
(後略)