質問「『緊急時の国内法整備状況』ほか

(平成11年5月20日参議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 参議院の会の山崎でございます。
  本日は、後半、同僚の堂本議員が質問させていただきます。お許し願います。
  本日は、まず、これまで結構時間的に長くやってまいりました、そしていろいろな点が指摘されておりますが、私が大づかみにして一番問題じゃないのかなということは、今回のガイドライン関連法の審議を通じて、我が国の有事における、あるいは緊急事態、非常事態でも結構ですが、その整備ができていない。そのことによって、今回出てきたガイドラインの関連法規も、周辺事態から有事に切りかわったとたんにといいますか、事態が変化したとたんにそごを生じる具体例が幾らでもあるということの方が法体系上は一番問題ではないかということを感じております。
  そういった意味で、このガイドライン関連法案を提出した以上、そしてこの問題点が論理的に明らかになった以上、少なくともその辺を含めた、有事立法という言葉自体がいいかどうかわかりませんが、緊急事態に対応する日本有事における我が国自身の法体系を整備する必要がかなり判明してきたと思うわけですが、これを早急に整備しなければならぬということに関して、防衛庁長官、まずどのようにお考えでしょうか。

○国務大臣(野呂田芳成君) 御指摘のとおり、自衛隊の任務遂行に必要な法制の骨幹は整備されていると認識しておりますが、これまでに行ってきた有事法制の研究を踏まえますと、現行法制上なお不備な事項が残されていることはもう御指摘のとおりであります。
  例えば、防衛出動をしようとして、相手が日本の領土に上陸してきた場合に、簡単な陣地を構築しようと思って海岸法の許可を受けると大体三週間かかります。あるいは指揮所をつくろうと思っても建築基準法の許可が三週間もかかるという状態であります。以下もろもろの法律がそうなっておりますので、これでは本当に防衛出動が潤滑にできるかどうかということを非常に我々も心配しております。
  二十二年間、私どもは研究を重ねてきました。しかし、この研究はあくまでも立法じゃないということで制約が加わっております。私どもは、平成六年ごろから歴代の防衛庁長官が、この研究の成果を踏まえてできれば立法化されることが望ましい、こういうふうに国会でその都度御答弁してきた次第でございます。
○山崎力君 今回のことに関してみれば、今の防衛庁長官の立場はわかるわけですが、それをいかに実際の政治スケジュールにのせるか、この点もある程度めどがつかなければ絵にかいたもちということになろうかと思います。
  防衛庁長官の前に、今回のことで言えば、対米ということからいけば外務大臣も同じような立場になろうと思うんですけれども、この辺の、いわゆる有事法制といいますか緊急時、非常事態時の法制についてどのような御見解をお持ちでしょうか。外務大臣の方からもお答え願いたいと思います。

○国務大臣(高村正彦君) スケジュールにのせてすぐどうするということから離れて、やはりいつかはやらなければいけない問題だ、こういうふうに認識しています。
○山崎力君 そういうふうなお答えなんですが、私の方からいけば、スケジュールを離れてという余裕があるのが今回の法案であろうかと思うわけです。
  例えば、いわゆる周辺事態時において、私はこれは前にも申し上げましたけれども、洋上において、日本領海外の方がはっきりしていいんでしょう、今回の周辺事態、可決されれば、成立すれば可能となる洋上での燃料補給をしていると。ところが、その時点において日本が有事になった、日本に攻撃が始まったと。そうしたら、日本有事のときに、今回の法案成立で可能になった洋上での燃料補給を今のままでは許可する法体系がない。今まででしたら、それができるかできないかということはほっておける、これはちょっとできる法律がありませんのでアメリカの艦船に自衛艦から燃料補給することはできませんと言うのは、これはいい悪いは別として可能であったわけでしょう。それが今回の法律成立で可能になる。
  ところが、可能になったはいいけれども、それよりも日米が協力して事に当たらなければならない日本有事になったときに、日本有事になりましたから許す法律がないので油の補給を中止しますと。こういうばかなことをしなければならない可能性が十分ある事態なわけです。
  そういった点を考えますと、これを出した以上、やはりいつになるかということよりも、ある程度のスケジュールは明示していただかなければならないと思うわけでございます。
  特に、防衛庁の方は、これは第一分類として今まで随分御苦労なさっているのかもしれませんが、いわゆる他省庁の第二分類、あるいはどこの省庁になるのかはっきりしない、あるいは複数の省庁が重なっていると言われて対処しなければならない第三分類、こういったものがどこまで検討されているのか全然見えてこない。
  もちろん、途中経過でしょうから今の状態がこうなっておりますというのはなかなか言えないんですが、それはわかるんですけれども、少なくともある程度のめどをつけて、今回のこういったガイドラインの法案を出した以上、このくらいまでの間に役所の内部、省庁間の調整くらいはめどをつけてもらわなければ、これはまたいつか来た道で、次に何か事が起きない限り出てこない。今回の事のスタートが九四年の北朝鮮の核疑惑からスタートしたというのは、公式にはともかくとして、ここにおられる委員の方々は皆さん前提条件として思っているわけですから、その辺のところはどうなっているのか、現状で結構ですから教えていただけませんでしょうか。

○国務大臣(野呂田芳成君) 我が国有事に際して必要な法制としましては、今、委員が御指摘ございましたとおり、自衛隊の行動にかかわる法制、それから米軍の行動にかかわる法制、自衛隊及び米軍の行動に直接にはかかわらないが国民の生命、財産保護などのための法制の三つが考えられるわけであります。
  委員の御指摘の主なるものは、このうち米軍の行動にかかわる法制だと思いますが、自衛隊及び米軍の行動に直接はかかわらないが国民の生命、財産保護などの法制については、安全保障の課題であると認識しており、その取り扱いについては今後十分検討しなければならない問題である、こういうふうに考えておりまして、今その研究を最終的に仕上げるための努力を重ねているところであります。
○山崎力君 緊急の課題だという認識は当然お持ちで、一生懸命努力されているんでしょうが、これはある意味では結果がすべてでございまして、努力していたけれども間に合わなかったというのは、これはなかなか言いわけは通じない世界でございます。
  次の問題として、私が各諸先生方といいますか各委員の論を聞いていて感じましたのは、六〇年安保のときに真剣に討議され、あるいはそこのところでの価値観の一番の違いであった安保条約、米軍との戦争、日本と直接関係のない戦争に巻き込まれる、この不安感に対する、そこに立脚した議論が随分多かったように思っております。
  そういった点で、今回の場合でいえば、先ほど申し上げましたように、例えば日本の自衛艦、補給艦からアメリカに物資、油等を補給する、あるいは後方地域で撃墜されたパイロットを救助する、あるいは別法ですけれども、機雷除去などもやる。こういった活動が、アメリカが事を構えようとしている国、あるいは構えている国にとって、今までと日本に対する見方が変わるかどうか。ここがある意味では、我々のことではないんですが、向こう側がどう我々の行動をとらえるかということが巻き込まれ論の基本的な問題だろうと思うわけです。
  簡単に言えば、安保条約の現状においても、今度の法案が可決されない状況においても、そういった状況の中で見る見方と、今度の法案が可決されて成立した後の行動を見る見方と大きな違いがなければ余りこの巻き込まれ論というのは問題にはならないはずです。大きく違えばこれはやはり考えなきゃいかぬ、こういうことになろうかと思うわけですが、その辺についての御見解はいかがでしょうか。

○国務大臣(高村正彦君) 大きく違わないと思います。
○山崎力君 そういった点であれば、今の政府の考え方というのは、いわゆる六〇年当時の安保危険論、巻き込まれ論というのと余り変化はないと政府側は考えているというふうに理解してよろしいかと思います。
  ただ、そこのところで私が一点問題があるかなというのは、これはもちろん途中経過があるわけですけれども、あの当時の政府側の解釈、国民の一般的な理解というのは、我が国は専守防衛であると。先ほど別の委員からの質問に対して宮澤大蔵大臣の方からもその問題についての話がございましたけれども、改めて私からも問わさせていただきたいのは、自衛隊の活動範囲は日本領土、領海内である、これが専守防衛であると。海外派兵の海外が今でも他国の領土、領海内に及ばない公海であるというのが、そういうふうにその当時から思っていたというのが宮澤大蔵大臣の話でしたけれども、国民のイメージとしてやはり自衛隊の行動半径は領土、領海であるということが私は正直に言ってあったと思うんです。
  それが今回の法案によって、相手国領土まではもちろん行かないけれども、日本国の周辺、その範囲はともかくとして、公の海上まで活動範囲を広げたんだということは明らかであると思うわけでございます。それが即、憲法違反になると私は言うつもりはございません。そして、かつてのいろいろな論議の中で、公海上のシーレーンの防衛も我が国の自衛権の発動の範囲内に含まれる、そこで攻撃を受ければ護衛に当たっていた自衛艦は自衛権の行使ができるというふうなことも承知しておりますが、やはり国民にとっては政策の変更というふうに受けとめられているんじゃないか。
  今回のこの法案が、今まで漠としたものが明確に政策変更、あの当時の、六〇年時代から日本国政府は政策を変更したんじゃないかと思われているのではないかというふうに私は理解しているんですが、その辺の御感想といいますかお考えはいかがでしょうか。

○国務大臣(高村正彦君) 周辺事態において新たに自衛隊が後方地域支援と捜索救助活動、二つの活動をやるんですから、それはその限りにおいては政策変更であります。
  ただ、自衛隊が海外に派遣されないというのは、先ほど宮澤大蔵大臣も言っておられたように、それは他国に行かないということであって、公海では今までも現実に活動していましたし、そこが政策の変更だとは思いません。
  それからもう一つ、宮澤大蔵大臣ははっきりおっしゃらなかったけれども、ある意味でははっきりおっしゃっていたんだけれども、武力の行使、単なる行くということではなくて、出ていって武力を行使すること、その二つを言っておられたんだろう、こう思いながら聞いておりました。だから、ある意味では新たな法律をつくって新たに権限を与えてやるんですから、その限りでは政策の変更です。ただ、大きな意味で、自衛隊の活動範囲はどこまでだとか、あるいは憲法の解釈を拡大するとか、そういう意味での政策変更ではない、こういうことでございます。
○山崎力君 あとの時間を同僚委員に譲りたいと思います。
○堂本暁子君 外務大臣はこの特別委員会で、周辺地域に対しては抑止と対話あるいは対話と抑止で対応するんだと何度もおっしゃっておられました。同僚の山崎委員は今抑止の方の領域で質問をさせていただいたわけですが、私どもバランスをとりまして、私は対話の領域できょうは質問をさせていただきたい、そう思っています。
    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕
  このガイドライン関連法案ですけれども、先日私は中国から北朝鮮に行って戻ってきたところですが、やはり中国そしてアジア諸国は大変敏感に反応しているということを体で感じざるを得ないということでございました。やはり抑止と対話を主張するのであれば、両者のバランスをとることが私は必要不可欠ではないかというふうに思っております。抑止が強化あるいは明確になるとすれば、アジアの諸国は大変そのことに警戒心を強めている。とすれば、やはり軍事に頼らずに紛争を事前に予防する信頼醸成を大変強力に日本としてはこの時期に展開し、そして努力を惜しまないだけの姿勢を示していくことが大事だと思いますが、外務大臣はいかがお考えでしょうか。
○国務大臣(高村正彦君) アジア太平洋地域の平和と安定の確保のためには、地域の安定要因である米国の存在と関与を確保しつつ、域内各国間の予防外交、信頼醸成の推進のため、二国間の安保対話、防衛交流に加え、多国間の安全保障分野での対話や協力を推進することが重要と考えております。
  このような観点から、政府といたしましては、この地域における全域的な多国間の安全保障対話と協力の場であるASEAN地域フォーラム、ARFの進展に努めているところでございます。九四年の発足以来、ARFは信頼醸成の促進に取り組んできており、閣僚レベルから実務レベルまでの各種会合におきまして、地域の安全保障問題に関して率直な意見交換を実施してきております。同時に、具体的信頼醸成措置を検討するため各種の作業グループを設置して精力的に議論を行い、その中から、例えば国防政策ペーパーの自主的提出等、適切と思われる信頼醸成措置を実施してきているわけでございます。これらはいずれも信頼醸成促進の観点から意義があったと考えているわけでございます。
  例えば、今の周辺事態安全確保法案、この点につきまして心配している国に対しては、粘り強く御説明を申し上げ透明性を確保していく必要がある、こういうふうに思って現実にそういうふうにしてまいりました。ただ、アジア諸国の中で、例えば韓国ははっきり肯定的に評価をしておりますし、それからASEAN諸国のほとんどもこれについては肯定的に評価していると承知しておりますし、アジア諸国のほとんどが何か心配している、そういうような感じではない。ただ、一部でもそういうことを心配しているところがあるとすれば、透明性をきっちり確保していくことは大切だ、こういうふうに思っております。
○堂本暁子君 前段のお答えは、衆議院の審議の中でお答えくださったことと一字一句違っていなかったものですから、そこは知っていると申し上げてもよかったかなと思いますが、そこを超えたことを申し上げたい。そして、今おっしゃったアジア地区、韓国あるいは中国を含んでは国交がありますからいいわけなんですが、私がむしろ問題にしたいのは北朝鮮そのものでございます。
  ずっと北朝鮮がこの委員会でも大変問題になっていますけれども、一体北朝鮮との間の信頼醸成を日本としてはどうするのかということが私は問題だと思っているわけです。近くて遠い国がますます遠くなっているというのが私の実感でございまして、インターナショナル・アラートという予防外交をしているところのルペシンゲさんという方に、五、六年前ですが、そういったときにはNGOのネットワークとかそれから早期警報が大変大事だということを言われたときには、非常に観念的にそれを受け取りました。
  しかし、今度私は参りまして、前回が三党の訪朝団でしたから一年と四カ月前ですけれども、そのときと全然平壌の空気が違う。そういった状態というのを果たしてどれだけの日本人が危機感を持って感じているのかということについて、何かこれでいいのか、国会の中では北朝鮮、北朝鮮と言葉は限りなく出ていますけれども、じゃ、その実態に対して果たしてどれだけの人が認識しているのかということを大変感じます。
  ルペシンゲさんがおっしゃっていたように、やはりNGOが大変大事である。IUCNというのは世界自然保護連合というのですが、国がメンバーになっている組織です。NGOもメンバーになっておりますが、恐らく世界で最大の組織だと思いますが、それのたまたま今副会長とそれから北東アジアの理事という二つの仕事をしているものですから、私も今回そのステータスで訪問したんですが、まず北京から飛行機に乗って、聞こえてくる言葉は、フランス語もドイツ語も英語も聞こえてくるんです。日本語は聞こえてきません。ですから、私も関心があるから、あなたはどういう立場で来たんですかと言うと、UNDPの人もいれば、それからいろいろ、IPPFというのはこれも大きい世界的な家族計画をやっているNGOですが、そういうところの人たち。
  ところが、日本はそういった形で、国交回復していない、国交樹立していない、正常化していない国とどうやって本当につき合おうかということで、危機的だ危機的だというのはきょうずっとおっしゃっていました、そういった中でどうやって信頼醸成をやろうとしているのかということで、むしろ信頼醸成が大事だという形で申し上げたいというふうに思っています。
  二つ端的に申し上げたいことがあります。
  一つは、民間の中でそういったNGOに限らず本当に日本が努力しているのか。単に小さいグループのNGOが何かを持っていくとか、そういったことで相手の高官と話すチャンスはありません。私の場合は大変大きい組織でしたから、相手も政府関係者が出てきて、もちろんこちらが参りました目的は自然の回復とそれから食料事情をどうやってこれから的確にやっていくかということに対しての相談でしたから、向こうもそれなりの人が次から次へと出てきて話をすることができた。同時に日本の国会議員というシャッポもかぶっていますから、日本のいろんな問題も言うことができた。だから、単に何か小さいNGOが行くとか、今おっしゃったASEANのようなことで信頼醸成というのはもう物足りない時代に入った。二十一世紀はもっと違った形の信頼醸成の展開が必要だということが一つです。
  それからもう一つは、やはり日本政府がどうやって国交正常化に向かっての展開をするか。その場合で言いますと、私、ちょうど九六年から北朝鮮へ行き始めて三回参りまして、今度四回目になりますが、その間に外務省の北東アジア課の課長は四人おかわりになった。いろいろな交渉をするときに、やっぱり相手との本当に人間的な関係も必要になってくるわけです。そういったときに、ちゃんとカンボジアの場合なんかは、お名前は今川さんとおっしゃいましたか、当時大使をなさって、本当に後で日本はカンボジアの中で非常にいい地位がつくれたわけです。
  それでは、北朝鮮の場合、そういったことをしているのか。本当に政府としてきちっと相手と話ができるような人脈をつくっているのかということになると、私は疑問があると思う。そういった民間のこととそれから政府の対応について、いささか信頼醸成あるいは北朝鮮との関係のとり方がまずいのではないかというふうに思っておりますが、外務大臣の御答弁、お願いいたします。
○国務大臣(高村正彦君) 日朝間には仰せのとおり外交関係がありません。その間で十分な対話がなされているとは言えない状況であります。そのような中で、委員御指摘のように多様な形で北朝鮮との対話や交流を進めることは基本的に好ましいことである、こう考えております。特に委員は、何度も北朝鮮に足を運ばれ、日朝間の相互理解のために御尽力されていると承知しておりますが、このような交流を政府としても歓迎しているところでございます。
  外務省は、従来から日朝国交正常化のための本会談に出席する我が方政府代表に大体大使を充てているわけでありますが、この同じ者がKEDOを担当してやっているわけでございます。現在、日朝国交正常化交渉は中断されておりますが、KEDOの方は頻繁に理事会が開催されておりまして、多角的な視野から北朝鮮の核開発問題及びKEDOをめぐる日米韓、EUの調整に携わっております。
  いずれにしましても、北朝鮮問題に専門的、長期的な視野から取り組むことが重要であるとの委員のお考えは、外務省としても共有をしているところでございます。
○堂本暁子君 今、KEDOのことをお話しになりましたけれども、KEDOはこれは多国間の問題でございまして、日朝の問題とはやはり違う性質のことだと。これはもう重々大臣も外務省も御存じのことであって、そうではなくて、本当に隣の国なんです。そこで何か本当に今ここでさんざん議論されているようなことが、有事が発生してからでは遅い、病気の予防と事が違うと私は思っております。病気は予防するにこしたことはない。しかし、一度有事が起こったときにどういうことが日本に起こるかということは、これはもう想像を絶することだと思っています。そのために、今、委員のなさることは歓迎しておりますという程度では、私は日本国は生ぬるいと思います。
  ピョンヤンの空気は本当に氷のようでした。反日感情の渦です、今は。一年四カ月前は、もう少し雪解けが実現するのか、正常化が可能なのかというような印象を持って私ども戻ってまいりましたけれども、今はもう全然違います。そういった状況にしておいていいのかということなんです。それは、実際有事というのは九九・九%ないだろうと皆様思いながら議論していらっしゃるのだと思いますが、現実にはやはりきちっとそこのところは危機意識を私たちは持つ必要があると思っております。
  ですから、単にKEDOの問題とか、そういう日本がやっていることではなくて、外務省あるいは国を挙げてもっといろんな形の努力をすべきだと。だからフランス語もドイツ語も英語も聞こえてくるんです。それで情報の収集も、それから人間と人間の関係を大事にしていくということも展開する。このことをもう少し国として、形式的な御答弁ではなくて、私はやっぱり大臣にそういうことをもう一歩踏み込んで日本は努力するとおっしゃっていただかないと本当に心配でたまらないということが一つです。
○国務大臣(高村正彦君) KEDOをやっているということを申し上げたというよりも、KEDOをやっているその大使を必要なときは日朝交渉の大使として起用するということを申し上げたつもりでございます。
  それからもう一つ、日朝関係でお互いが何を考えているかもわからないというような状態は決していいとは思っておりません。ですから、日本政府としても、委員から見ればまだまだ足りないと、私から見ても十分だとは胸を張って言えないぐらいですが、水面下で努力をしていることは努力をしております。
  ただ、日本のミサイルが北朝鮮の上を飛び越えていったためにこうなったわけではないわけで、日本人が北朝鮮の人を拉致した結果こうなったわけでもないわけで、そういう中で無原則に今悪いから何でも譲ってでも話し合いをつくる、そういうことは私たちはできないので、やはり対話と抑止という、そして相手方が建設的な対応をしてくれればこちらも幾らでもそういう対応をしますよということを根気よく呼びかけている。今悪いからともかく原則崩してでも無原則にということはできませんので、そういうことは御理解をいただきたいと思います。
○堂本暁子君 それは私も同じです。ですからはっきり言いました。あなたたちが日本の上を飛ばしたでしょう、もし日本があなたたちの国の上をそういうものを飛ばしたらあなたたちはどう思うんですかということをはっきり言ってきました。
  そして、何も無原則にと言っているわけではございません。ただ、欧米諸国と比較して、そういったもうひとつ、そこのところに対しての信頼醸成という以上に今のこういった危機的状況を解決するための努力をもっと日本はやっていいのではないかと思っています。
  そして、担当者がやはり最低四年ぐらいはかわらない人、梅津さんはKEDOの大使ですが今はロンドンにおられますね、そういうように、もう少し私はそういった側もぜひ外務省はやっていただきたい。
○国務大臣(高村正彦君) 原則を堅持した上で最大限の努力をしてまいります。
○堂本暁子君 ありがとうございました。(拍手)
(中略)
○山崎力君 参議院の会の山崎でございます。
  きょうは六人の公述人の皆様、本当に御苦労さまでございます。時間の関係もありますので、ちょっとてきぱきとやらせていただきます。御無礼はお許し願います。
  私は、今回のこのガイドライン関連法案の審議を通じて個人的な印象をまず申し上げますと、やはり有事あるいは安全保障でもいいし、非常事態でもいいんですが、国内法の整備が実質上全くなされていないということでの法体系上の不備がますます明らかになってきたということが言えると思います。
  端的な表現を言えば、日本有事の際に地方自治体が自衛隊に対してどのような協力をすべきかということがはっきりしない以上、なかなか米軍に対して地方自治体がどのような協力をすべきかということが、そこが決まっていればおのずとできてくるところが全然できていないな、こういうところを感じました。
  そして、いろいろ私、個人の意見は別として感じていることは、この問題というのはつまるところ日米安保をどう評価するかと。特に六条事態の米軍の我が国の基地使用、しかも対外使用に対してどのような態度をとるのかという、もう約三十年、四十年前の問題が改めて出てきている。
  ところが、それに対する国民、皆様方沖縄の方々には心外かもしれませんが、国全体としての結論は政治の場では出ているねというのが私の考え方です。これはそれだけで議論したわけじゃないということはあるかもしれませんが。
  そこでお伺いしたいんですが、その政治的結論が出ているというのは、どういうことかといいますと、現時点で国会で大きな勢力を占めている政党のうち、日米安保に明確に反対をなさっているのは共産党一つでございます。それから、非武装中立ということを掲げている政党は、新社会党がこの間の選挙で議席をなくしました。個人は別とすればただいまゼロでございます。
  そういった中で、沖縄の皆様方の、特に感じたのですけれども、先ほどの新垣公述人、高良公述人、新崎公述人も入るかと思うんですが、その辺のギャップというものが、冷戦以降といいながらも、まさに冷戦以降、具体的に言えば社民党の村山内閣が誕生して以降大きく変わってしまったということがあるのですが、お三方にその辺の御感想を伺いたいと思います。

○公述人(新垣勉君) 私は、安保の持っている意味は冷戦終結後大きく変わったと理解をしております。沖縄の現実が示すように、安保というのは今では地域住民の生活を破壊し、権利を侵害する最大の要因となっているというふうに考えます。
  先ほど横須賀市長の紹介がありましたけれども、日米間の友好を進めるという上ではそのとおりだと思います。そうであれば、紛争をなくするためには日米間だけではなくて日本と韓国、北朝鮮、中国、こことの間でも日米間と同じような国民の交流をするのが紛争を防止する最大の抑止力だと思います。
  そういう意味で、私は弁護士ですので日常的に紛争を解決する仕事に従事をしています。紛争を解決する最大の眼目は、お互いに共有する価値観をどれだけ共通に持ち、共通に広げるかであります。そういう意味では、人間の安全保障という考え方というのは非常に今では重要である、そういう意味では安保はもはや時代おくれだというふうに認識をしております。
○山崎力君 あとのお二人にお伺いしたいんですが、私がお伺いしたのは、今の安保べき論ではなくて、そういった本土での政治情勢の変化といいますか、現状でもいいんですけれども、そういったことにどのような御感想をお持ちか、こういうことでございます。
○公述人(新垣勉君) 一言でいいますと、本土の皆さんに、あるいは本土で多数を占める国会議員の皆さんに沖縄の実態、現実をもっとよく見ていただきたいという一語に尽きます。
○公述人(高良鉄美君) 安保が見えるというところが沖縄の一つの言葉になっていますけれども、日米安保というものはこの島で支えられているという問題もあろうかと思いますけれども、政治的に確かにそういう比率あるいは配分といいますか、国会の勢力がそういうふうになっているということは現実でありましょう。しかし、それがどういうふうな形で安保容認なのか、あるいは非武装中立がゼロなのかということにつきましては、それまでのいろんな問題、つまり最初から既成事実として安保があるのかあるいはあったのかという問題と大きなかかわりがあって、六〇年の安保の容認と現在の安保の容認という問題の中にはつながりがどうあるのでしょうかという問題があります。
  簡単に言いますと、国民の間の議論の安保ではなかったのではないのかということが、今の政党の中での安保容認というのはありますけれども、無党派というのが今の国民の主流です。その人たちの考え方はいかがなんでしょうかということで、国会の勢力だけでの問題ではなかろうと思いますし、それから安保偏重という問題ももう一つ考えなければならないことではないかと思います。
○公述人(新崎盛暉君) 私に言わせれば、まさにその状態こそ日米安保体制が構造的沖縄差別であることを表現していると思っています。
  例えば、一九五二年に旧安保条約が成立してからいわゆる現在の新安保条約に改定されるまでの間に、日本本土の米軍基地は四分の一に減りました。沖縄の基地は二倍にふえました。なぜかといえば、日本にいる一切の地上戦闘部隊は日本から撤退するという約束のもとに、日本でない沖縄に押しつけられたからです。そして、復帰の前後、日本本土の基地は三分の一に減りました。沖縄の基地はほとんど減りませんでした。それが今の状態を生み出しています。
  したがって、先ほど言われましたけれども、安保条約第六条に規定するように、安保というのは米軍基地と共存することだということになっているわけです。しかし、共存させられているのは沖縄だけです。もちろん沖縄だけではありません、三沢もあり横須賀もあり岩国もあり佐世保もありますけれども、非常に点としての存在になってしまいました。そのことがまさにそういう本土と沖縄のギャップというものを強めてきたわけだし、復帰のときの国会決議を無視して沖縄の基地は減らさずに本土の基地を減らしたのも、まさに安保を見えなくするための政策であったと私は認識しています。
  それから、国民世論ということでいいますと、国民の大方は世論調査の上などでも安保を支持しているというふうによく言われます。しかし、国民世論というのも大きく変化することがあります。きちんとごらんになればわかりますけれども、例えば九五年秋に沖縄でああいう事件が起こったときに、あの前後に行われた日本経済新聞の世論調査あるいは毎日新聞の世論調査、これを挟んで行われたのはこの二つですけれども、の中では明らかに安保に対する評価は大きく変動しています。
  そういうことをこそ私たちはきちんと見なければいけないと私は思っています。
(後略)