質問「『緊急時の自治体経費負担』ほか

(平成11年5月21日参議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 自治省の方来られていますか。大臣がおいでにならないのであれなんですが、時間的にいったらしようがないんですが、今回の一連の審議の中から一つ浮かび上がってきたことは、先ほども同僚議員から幾たびか出ておりますが、自治体の協力、自治体の不安が大分ある、こういうことでございます。何をするのかわからぬ、決まっておらぬということが言われているわけですけれども、その中で今まで私が寡聞にして知らないといいますか、表面に出てきていない問題があります。
  それは何かといいますと、お金の面の補償といいますか、自治体が協力する、協力することによってお金がかかる、そのことをどうしてくれるのかと。金の話だから余り言いたくないということもあるのかもしれませんが、そのことが自治体の当事者からしてみればかなりの不安になっているのではないだろうかというふうに思っておるんですけれども、その辺について、まず自治省の見解を伺いたいと思います。

○政府委員(香山充弘君) 経費負担問題について自治省の方からお答えをさせていただきます。
  地方団体が協力を行いました場合、通常、国等からは所定の対価が支われるということに相なります。例えば給水を行いますと水道料金、あるいは施設を借り上げた場合には使用料といったことが考えられますので、通常の場合、地方団体に実質的な財政負担が生ずることは一般的には考えにくいというふうに思っておりますけれども、そのような対価をもってもカバーされないような特別の負担が生じた場合につきましては、協力との間に相当因果関係がある限り、その協力による損失ということで、国により財源措置が講ぜられるということが九条の三項に定められております。
  地方団体の協力の種類、内容、これは具体的な事態において明らかになるものでありますし、またそういう意味でございますので、何に関して損失が生ずるかというようなこともあらかじめ申し上げることは困難でございますけれども、仮に損害が生じました場合には、具体的な損失の性格とか内容に応じまして、適切な手続を通じて国による補てん措置が講ぜられるものと、そのように考えておる次第でございます。
○山崎力君 その適正な手続というのがくせ者でございまして、例えば地方道が予定された以上の重量の運搬物により破損されるおそれがあると、適切な処理を施せばいい、あるいは多少壊れてもそれを国の方で、あるいはどこか別のところで結構ですから直してもらえるという保証があるならばそういうふうな車両を通してもいい、こういうふうな場合、道路管理者たる地方自治体、そういったものはどういう適正な手続で回復するんでしょうか。
○政府委員(伊藤康成君) 道路法についてのお尋ねでございますと、私から個々具体的に御答弁するのが適当かどうか若干問題がございますが、一般論として申し上げますと、九条の一項、二項でお願いしますのは、現行の法令並びにその基本計画に基づきということでございます。したがいまして、その法令に反するようなことをお願いすることはない、これは当然のことでございます。
  今の道路の、先生挙げられました設例で申し上げますならば、そもそもその道路を破損するようなおそれがある輸送の依頼というようなこと自体があり得ないことであるというふうに思っております。したがいまして、損害の補償があるかないかということで地方公共団体の長の判断が変わるという問題ではないというふうに思っております。
○山崎力君 そうなんですかね。
  それではなぜあのときに、といいますのは、今を去るもう二十数年前になりますが、ベトナム戦争真っ最中に、相模の補給廠というのですかね、工廠から米軍ノースピアにベトナム向けのM48戦車を運ぶときに、当時の飛鳥田横浜市長が、道路法のいろいろな規則があって、道路管理者はそういったいろいろなことに関しての基準を超える車両を通行させる者に対して当該車両の通行を禁止あるいは危険防止のための必要な措置を命ずることができるというところから盾にとって、現実にストップさせたわけです。それで、何をやったかというと、その重量に耐えられる補修工事を橋に施して後ノースピアに、米軍専用桟橋に運び込んだ、こういう例があるわけです。

    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕
  今回の場合でもそういったことは十分に場所によっては考えられる。その補償があれば国に対して我が自治体は協力する、だけれども手続は面倒だし本当にお金を出してくれるかどうかもわからぬのに、我が県道ないし市町村道を通すわけにいかない、これは拒否する正当な理由になりませんかね。
○国務大臣(野呂田芳成君) 米軍とか自衛隊の車両や民間車両が道路を通行する場合に、道路を破損することのないよう十分配慮することは当然のことでありまして、例えばキャタピラの車両であればゴムパッドを装着するなどの配慮をすることは当然のことであります。周辺事態であっても通常時と何ら異なるものではございません。
  ただ、先ほど委員が言われましたとおり、むしろ重量の方が問題になろうかと思います。そういうことで道路の破損が生じることは基本的に想定されないところでありますが、そういう重量等の問題で、事故その他の事情等も加わって道路の破損が生じた場合は、例えば米軍や自衛隊の違法行為による場合には地位協定や国内法に基づく賠償の対象になると考えます。それは、それぞれ防衛施設庁や防衛庁が行うことになります。
  また、道路法の五十八条には原因者負担金の負担の原則が定められているところでありまして、周辺事態に対してもこうした規定を踏まえて対応がなされるものと考えております。
○山崎力君 そういうことになっているんですが、私がむしろ問題にしたいのは、それを理由に地方自治体が、先ほどからいろいろな議論がありましたけれども、正当な理由があれば協力を拒否することができる、そのときに、重量オーバーだからこの橋は道路管理者として渡らせない、そのおそれがあるから協力を拒否する、こういう自治体が出てきた場合、正当な理由になるんじゃないか、そうすると非常に厄介なことにはなりませんか、こういうことを私はお聞きしているわけでございます。
○政府委員(伊藤康成君) ただいまの設例でございますが、先ほども御説明申し上げましたとおり、道路のいろいろな制限はございます。ただ、それは常に一〇〇%適用されるわけではございませんで、例外を認められる場合もあるということでございます。
  また、自衛隊あるいは米軍の車両等につきましては、道路の構造の保全のための必要な措置を適切に講じて通行するというようなものについては、例えば車両制限令の適用を除外するとかそういったような法令の規定はございます。ただ、この辺につきまして有権的に申し上げられるのは建設省でございますので、そういう規定があるということだけを御紹介申し上げます。
  一般論として申し上げますと、九条でお願いいたしますのは、それぞれその関係の行政機関からお願いをすることになります。この場合ですと、恐らく建設大臣からそういう地方公共団体への依頼をするということになろうかと存じます。したがいまして、建設大臣は十分その辺のところは把握した上での依頼ということになりますので、先生御心配のようなことはなかなか起きにくいのではないかと私は思っております。
○山崎力君 この問題は、実際の運用の場合、現実にありまして、そのときに道路法の改正まで行かなかった。いろいろな事情があったのは聞いていますけれども、ただこの四十七条の三は「道路管理者は」と、こういうふうな表現になっているわけです。
  国道の場合、これは国、建設大臣ということもあり得るわけですが、県道の場合は知事でありますし、市町村道の場合は一応市町村長になっているはずです。ですから、そういった点で、自治体に対して幾ら後で補修するよという約束をしたとしてもこれは拒否する材料になる、その辺のところも考えなければいけない。まして日本有事のことを考えたら、ここのところは大変な問題になりかねない。それこそ法律を守るために自衛隊が行けなくて侵入されたなんといったら、これはとんでもない話になるわけで、まさに緊急事態のときと平時の法体系を変えるべきだということを、そういったところもあるんではないだろうかということを私は御指摘申し上げたいわけでございます。
  もう一点、非常に基礎的なことで法制局長官にお伺いしたいんですが、集団的自衛権の問題がいろいろな立場でも出てまいりまして、今度のガイドライン関連法のことが非常に国民にわかりづらいというふうに言われております。
  ただ、私もそういうふうな声を聞くのですが、それではわかる前提として集団的自衛権とは何ぞやとか、あるいは武力行使の一体化とは何ぞやと、このことを国民のどれだけがわかっているか。これをわからずして今回の問題はわからないわけですから、まずここのところをわかってもらわなければ困るというところがあるわけです。その意味でも非常に難しい問題だろうと思うんです。
  それで、この問題で、我が国の憲法が集団的自衛権を有しつつ、その行使は禁じているという、内閣法制局長官が何回も答弁されたことなんですが、前にも似たような質問をしたんですが、いわゆるこの異例な解釈、国際的にも異例な解釈ですが、これはいかなる条文上、憲法のあれから来たものなのか。もし仮にそういった法理論解釈が可能であるならば、個別的自衛権に関しても、有してはいるが行使はできないという解釈も可能ではなかろうかと思うわけです。
  意味を御理解願えたと思うんですが、その辺のところについて、憲法の立法趣旨というのもおかしいかもしれませんが、その辺をどうやればいいのかということをお聞かせ願いたいと思います。

○政府委員(大森政輔君) お尋ねの件に関しまして、どういう切り口からお答えするのが一番御理解いただけるかと頭を悩ませておるところでございますけれども、今まで御説明申し上げていない観点から申しますと、要するに国家と申しますのは、憲法を頂点とする国内法と、そして国際法と、二つの法体系の規律を受けるということでございます。そして、我が国におきましては、憲法と国際法の内容が抵触するという場合には、憲法が優越するというふうに解されているところでございます。
  したがいまして、日本国が主権国家として国際法上は個別的自衛権も集団的自衛権も保有している、これは通説的見解でございますけれども、憲法との関係に着目しますと、憲法九条、すなわち武力行使等を禁止している憲法九条のもとにおきましては、我が国に対する武力攻撃に際して我が国を防衛するための個別的自衛権の行使というものは憲法九条でも禁止していないだろう、憲法九条のもとでももちろん認められる、これは最高裁判所の判例においても認めているところでございます。
  ところが、集団的自衛権の行使ということになりますと、我が国が武力攻撃を受けてもいないのに他国に対する武力攻撃を実力で阻止するということを本質的内容とする集団的自衛権の行使は、憲法九条のもとにおいては認められないのではないか。それが個別的自衛権の行使は認められ、集団的自衛権の行使は認められない、そういう泣き別れになるといいますか、結論が分かれる原因であるということでございます。
  したがいまして、委員が若干御指摘になりました個別的自衛権の行使と集団的自衛権の行使との間で結論を異にするということは、やはり憲法九条のもとでは何らおかしくない、必然的な結論であるというふうにお答えいたすことが御理解いただける説明じゃなかろうかと考える次第でございます。
○山崎力君 今の説明で法制局の考え方の基礎はわかったんですが、国民に対して、こういうふうなことで我々の法体系は成っておりますという理解を求める、納得していただくという説明には若干疑義があると私は思っております。
  これ以上この問題を言うのも神学論争になりがちなので控えさせていただきますが、少なくともある政党は、長い間、日本国憲法は個別的自衛権は有するが、その行使を禁じているというふうな形で憲法を解釈してこられた。考え方としては非常に現実的ではないと私は思いますが、そういうことも考えられるという、その辺について、どこから我々はこういう法体系の中で、どういう法の考え方からこういうことでやるんだという決まりをつくったんだという視点からの説明をこれからはもっとしていただきたいと思います。その辺が全然、解釈でこうとれるからこうやりますというのでは、私は一般の方にはなかなか説明がつかない。今すぐというわけにもなかなかいかないんでしょうけれども、少なくとも我々日本国民は、憲法を通じてこういう価値観のもとにこういう考え方を実行するんだということで、こういう解釈でやっているんだ、こういう決まりをつくっているんだという立場からの御回答を次の機会に期待して、私の質問を終わりたいと思います。

(後略)