質問「北朝鮮の核・ミサイル開発について

(平成11年6月4日参議院国際問題に関する調査会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 一つは、これは事実関係なので、もし御存じであればということなんですが、最近、九四年のノドンのミサイル実験のときに、単に日本海に落ちたのではなくて、複数弾で、この間のテポドンのように日本を通過して太平洋にまで飛んでいっていたんだというのがちらちら聞こえてきます。そういったことについて情報をお持ちかどうかということです。
  それから、それに関連して、いわゆるテポドン二号といいますか、第二のテポドンを発射するのかしないのか。アメリカ側からすれば、それが米本土に届くようなものであっては絶対に困る、そしてなおかつ弾頭部が核であったら本当に困る。そこが一番北朝鮮自体が困った事態になるところで、その辺のところの腹の探り合いが今、米朝間での一番の問題であろう。ただ、これを全くゼロにしますと北側も対米交渉力を失うと思っているわけで、その辺で暴発防止のやり方が非常に瀬戸際といいますか、塀の上を走りながら、タイトロープの上を渡りながらということになってくるんじゃないか。その辺の見通しをどのようにお持ちかという点を二点目にお伺いしたいと思います。
  最後に、これは先ほど重村参考人の方から出たかもしらぬのですが、私は、個人的には、もう朝鮮半島問題に関して我が日本は積極的に一切出るべきではない、お手伝いすることがあれば何かさせていただきますと、自分から言わずに消極的に、非常に弱腰かもしれませんが、その方がむしろいいのではないかなと思っているんですが、その辺、両参考人から一言ずつで結構ですから御意見を伺えたらと。
  以上でございます。

○参考人(重村智計君) 多分九三年のノドン・ミサイル実験のことであろうと思いますけれども、実際に日本を越えていったといういろいろな情報があるんですが、確認はされていません。北朝鮮側の情報の中にも、実はあれはテポドンであった、こう言う人もいますけれども、これも確認は実はされていません。ですので、我々今考えているのは、どうもあれは基本的にはノドンの成功であったんではないかというふうに考えております。
  それから、テポドンがもう一度発射するかどうかということなんですが、北朝鮮側の情報ではテポドンはあと二基残っていると言われておりまして、本当は発射したかった、あるいは発射したいというのが現実だというんですが、実際にはなかなか発射できない状況にある。それは、日本がいろんな警告を出したりあるいはアメリカが警告を出したりしたこともあるんですが、多分もし次に発射するとすれば、この前のテポドンの場合も事実上最高人民会議のいわゆる打ち上げ花火だったものですから、今回の場合も、党大会前に、党大会の祝賀用の打ち上げ花火でまた人工衛星を打ち上げるということになると思うんです。その際には、この前の教訓から、一カ月なり一週間前に打ち上げを多分予告することになると思うんですね、人工衛星を打ち上げますよと。
  そうした場合、日本とアメリカは、じゃどういうふうに対応するのかという問題を多分迫られることになると思うんですが、基本的には、もしテポドンをもう一回打ち上げると日朝関係が非常に大変なことになりますよ、あるいは米朝関係も大変なことになりますよというメッセージは金正日さんのところまで届いているものですから、それはかなり影響されているというふうに聞いております。
  後の問題は、消極的という言い方はなんなんですが、基本的には私もそう考えておりまして、基本的には朝鮮問題を解決する、朝鮮問題をどうするかというのは韓国人と朝鮮人が決める問題でして、日本の方がああすべきだこうすべきだという問題ではないだろうと思うんです。ただ、日本側はいずれにしろ、どんなことがあっても必要であればいつでも協力しますよ、何でもおっしゃってくださいということが一番大切ではないだろうかというふうに考えております。
○参考人(辺真一君) 基本的に私どもはノドンは対日、それからテポドンは対米というふうに見ております。したがって、去年八月三十一日のテポドンで大変日本の世論は激高したわけですが、これについては、本来はそれ以前のノドンの段階でもう少し日本は声を上げるべきだったんじゃないかなと、私自身はそう思っております。そのノドンについては、韓国の方では、ちょっと地名は申し上げられませんが、ある地点に発射台九台を既に配備したというふうに言われております。
  問題のテポドンですが、昨年八月三十一日のあのロケット物体を人工衛星ではなくテポドンというふうにとらえるか、人工衛星ととらえるかによって違ってきますが、仮に北朝鮮が人工衛星というふうにみなすならば、御承知のようにこの人工衛星、最後の衛星は軌道に乗らなかったわけです。最近も中国の人工衛星と北の人工衛星が大変に似ているということでアメリカがああいうような写真を公表しましたけれども、いみじくもアメリカは、北朝鮮があのロケット発射物体の頭に衛星をつけて飛ばしたということを認めるようなことになりましたが、あれが軌道に乗らなかったということは失敗に終わったわけですから、人工衛星ということであれば、当然成功するためにもう一回やるというふうに私は見ております。
  逆に、これは人工衛星ではなくてあくまでテポドンであると、テポドンの頭に衛星をつけて飛ばしたというふうに考えていただければわかりやすいと思いますが。この点についても、先ほど申しましたように、北朝鮮はあと数年で強盛大国になるんだということを盛んに言っております。数年というのは金正日さんの六十歳の還暦の年に当たりますが、強盛大国というのは先ほど申しましたように軍事大国ですから、どう考えても北朝鮮が核とミサイルを持たない限りは軍事大国にならないというような前提に立てば、その可能性というのも否定できない。
  特に最近私が注目しているのは、金正日総書記が、国民がこれほど飢えて食糧に困っているにもかかわらずそちらの方に金を回したというようなことを言っておりました。私たちは、推定、少なくとも三億ドルから五億ドルぐらい、去年のあの一基で北朝鮮は製作から発射に至るまで使っただろうと。
  これを換言して申しますならば、今の北朝鮮は、本来であれば軍事費やミサイルあるいは核のそういうような費用を十分に国民の食糧あるいは経済の方に回すことができる。あえてそれを犠牲にしてまでその開発を続けているということは、これは一言で申しますと、それが完成するまでは北朝鮮は恐らくそれを放棄することはないだろうと。
  ただ、ボタンを押すタイミングですね。まだ完成していないのか、あるいはそれを発射する発射台ができていないのか、あるいは現在米朝交渉中でボタンを押すのを控えているのか、それは何とも申し上げられませんが、私は、今も申しました人工衛星及び数年内の強盛大国を目指すという北朝鮮のその目標が変わらない限りにおいては、その可能性というものは否定できないだろうと、こう見ています。
○参考人(重村智計君) ちょっと補足で御説明させていただきます。
  核の問題が御質問あったんですが、核については、アメリカの国務省がミサイルに積めるような核兵器はまだ開発できていないという見解をとっている。それに対して国防総省とCIAは、いずれにしろなお核兵器開発を進めているという見解をとっている。それはどこが違うかといいますと、御承知のように軍事の常識上、核兵器を開発したらミサイルがないと意味がないわけですね。つまり、運搬手段がないと意味がない。
  北朝鮮は、今のところ米朝の合意でもって核開発は凍結したことになっているんですが、その一方でミサイル開発はどんどん続けている。そうすると、ミサイル開発を続けるということは、ミサイルに通常爆弾を積んでも全く意味がないわけで、結局核兵器を積むための開発をしているのではないかというのがアメリカの軍事関係者の非常に強い疑念と推測なんですね。
  これは必ずしも推測としては間違いでないだろうと思うのは、北朝鮮の立場からすれば、一応核凍結を約束して十年後に軽水炉二基をもらうことになっているんですが、もし十年後にアメリカと日本と韓国が約束した軽水炉二基をつくらない場合には、一番ばかを見るのは北朝鮮であると。とすれば、その場合にいつでも再開できる準備はしておかなきゃいけない、これは常識だろうと思うんです。そういう形でもって実は核兵器開発とミサイルが関連しているんではないかという、アメリカの中にある重大な疑念というのは残っているということであります。
  それから、もう一つミサイルに関して言えば、日本は実はこの前のテポドンに関して、テポドンを再発射するなとは言っているんですが、日本に届くようなミサイルを開発したり配備したら国交正常化しませんよということは言っていないんですね。私はそれははっきり言うべきだろうと思うんです。それは、北東アジアあるいはアジアの平和と安全のためにも、少なくとも日本がする発言としては、日本に届くようなミサイルを持たないでほしいということ、持つべきでない、あるいは持った場合には国交正常化しないという外交方針を明確に伝えた方がいいんではないかと思っております。
(後略)