質問「『北朝鮮の核施設疑惑について』他

(平成11年6月29日参議院外交・防衛委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 今度のKEDOに関する問題ですけれども、いろいろ同僚議員からの質問で政府の考え方というのは伺ってまいりましたが、そこのところでのどうしても踏み越えなければならない問題というのは、本来の目的である北朝鮮の核開発をこれで阻止できるんだと、唯一の方法なんだということが本当なんだろうかと。もしこれで、KEDOの協力をしつつ、隠れて北朝鮮が核開発をやめていないということであるならば、このお金というものは、非常にむだ金どころではない、逆効果のお金になるんではないかと。この疑問を国民に対してどのように説明していくかということだろうと私は思っております。
  そういった点で、当然アメリカ側もそのスタンスを持っておって、先ほどの金倉里の施設への訪問なのか検証なのか、その辺は別としまして、やったわけですが、そこで私が思い出すのは、いわゆる米ソ冷戦時代の核制限交渉、そういった中での問題は、目標あるいはそういった数字、そういったものの内容はそれぞれ簡単に決まるけれども、それが本当に守られているかどうかという検証部門をどうするかということでかなり時間をかけたというふうに聞いております。
  そういった観点から、今回の金倉里への米国の訪問というんでしょうか査察というんでしょうか、その点についてアメリカは一応疑惑はなかったというふうに結論だけは伝わっておりますけれども、それを裏づける内容といいますか、そういったものはどの程度日本政府としてアメリカ側から説明を受けているのか。
  それで、そのことが、日本政府としてもあそこの施設に関しては米国の言うとおり疑惑はないと現時点で結論づけるのに、判断するのに適当な十分な情報提供を受けているのかどうか、その点について、まずお伺いしたいと思います。

○国務大臣(高村正彦君) 米国は、六月二十五日でありますが、同国の技術専門家チームによる金倉里の施設への訪問の最終結果を発表したところであります。
  それによりますと、この施設の大部分はむき出しの岩のままのトンネルであること、この場所にかつて機材が据えつけられたことを示す証拠はなかった、それから現在の地下施設の規模と形状であれば原子炉や再処理施設の設置には適していないということが判明したと。結果として、米国政府は現時点においてこの施設は合意された枠組みに違反するものではないという結論に達したということでございます。
  しかし、同時に、この施設が巨大な地下施設であるため、大がかりな改修作業によって将来そのような施設の建設に資することとなる可能性はあるとしておりまして、二〇〇〇年五月に次回の訪問を行うこととしております。
  我が国政府は、今回の米国の技術専門家チームの現地訪問に当たっては、事前及び事後にこのチームの長を務めた担当者から直接説明を受けており、今回公表された最終結果についても特段の疑問はない、こういうふうに考えております。
○山崎力君 そういうふうな結論は受けるとして、それであれば国民の、一般の人の理解をより得るために具体的なデータをアメリカ側が提供したのかどうか。例えば、トンネルの延長はどのくらいあったのか、あるいはトンネルの大きさはどの程度であったのか、直線だったのか平たんだったのか、そういった形状の大まかな数字、別にメジャーではかれというわけではないんですが、そういったことが数字として出てこない。極めて漠然としているんです。そういった説明は受けているんでしょうか。
○政府委員(阿南惟茂君) 先ほど大臣が御答弁された内容は公表された中身でございますが、私どもはアメリカ側の関係者からいささか詳しい説明を受けております。今、先生がおっしゃいましたようながらんとした空間であったというようなものがどの程度の大きさであったというようなことについては説明を受けております。
○山崎力君 その数字は発表しないようにという米国からの説明はあったんでしょうか。
○政府委員(阿南惟茂君) 当然の前提として、米側が調査の結果、分析の結果を公表した部分が公表できる部分だという理解でございます。
○山崎力君 ということは、日本国政府の立場はわかるんですが、アメリカにとっても、あれだけ納税者意識の強い国民性、議会でありますので、その辺のところ、数字が出てこないで納得する国民性だとは思えないんです。
  もし今後、アメリカが地元アメリカで発表してから日本にそういう数字を出してもいい、こういうことなのか。それとも、この数字自体がある意味を持って、具体的に言えば、そんな数字のものであればとてもじゃないが、この米国からの報告は納得できないという反発を恐れているんじゃないかという勘ぐりもしたくなるようなこともあるわけなんですが、その辺はいかがでしょうか。

○政府委員(阿南惟茂君) 私どもが、いささかより詳しいと申し上げましたが、公表内容よりは詳しい説明を受けている。そういう点から判断して、まさに公表された部分はそれの要約であって、この長さがどのくらいというような数字は確かにございますが、そういうものが別にゆがめられて全体の判断になっているというようなことでは一切ないわけでございますので、私どもは公表部分ということで十分この調査結果というものは説得力を持っているというふうに考えております。
○山崎力君 説得力を持っているというのはちょっとおかしいのであって、そういう数字をもとに、こういう空間、空洞であるならば現時点の判断としてアメリカの判断は信頼できる、結論は信頼できるということはわかるんですけれども、その数字は教わったと、数字は教わったけれども一応約束で言えないと、そこまではいいんです。
  ただ、そこから飛んで、公表されたことだけでアメリカの結論が妥当だというのはとても言えない。要するに、言えない数字を我々が判断して、こういう数字のものであるならばアメリカのこの結論は妥当であろうなという説明ならわかるんですけれども、その論理構成が私にはいささかわかりかねるんですが、いかがでしょうか。

○政府委員(阿南惟茂君) 繰り返しになるかもしれませんが、金倉里の地下施設の大きな空間としてこういう大きさの、何フィートのというのがあるわけでございますが、そういう大きな空間、これは先ほど大臣が御答弁になられましたように、再処理施設とか核施設には適さないものであるというような判断、実態からそういう判断が導き出されたということについて、もちろん私どもが非常に正確な技術的な判断ができる立場にはございませんけれども、それは決して公表された部分の結論がその実態と食い違っているとか故意に少し違う判断が出てきているというようなことではない。
  私どもはいささか詳しい内容を見て、公表部分の判断というのは自然に受け入れることができるということを申し上げたわけでございます。
○山崎力君 私も専門家でないので何とも言えないんですけれども、どれだけの空間があれば核施設のものができるのかということは、これは皆さん方、外務省の役人といいますか、専門家でもなかなか難しい。それこそ日本のそういった部門の、科技庁におられるかどうかわかりませんが、そういった方たちの点検を受けて、こういったものであれば我々の知り得る知識からいってこの空間が核施設に転換することは無理であろうと、日本なりに結論づけなければ言えない問題じゃないかなというのが私の感想なんです。
  そういったことの点検をなさった上で、アメリカの言うことが妥当である、信用できるというような報道、発表その他、まだ私どもは受けていないものですから、その辺が非常にあいまいもことしたままで、要するにアメリカが調べてアメリカが安心なんだから日本も信頼してください、こういうことでいいんだろうか。
  少なくともお金を出す我々が、国家として、アメリカと共同して、北朝鮮の核開発に資するものでないということを自分の国として判断する、国民にそういったものを納得させるデータとしては私は不十分じゃないかなという気がぬぐえないんですが、大臣、率直にどうお考えでしょうか。

○国務大臣(野呂田芳成君) ちょっと余計な口出しかもしれませんが、アメリカの専門家が出した報告書を見ますと、現在の大きさ、地下区域の形状という条件では、施設はプルトニウム生産のための原子炉、特に北朝鮮寧辺でつくったタイプの黒鉛減速炉の据えつけには不適当である、黒鉛減速炉の据えつけの寧辺の大きさというのはわかるわけでございますから、それから見て相当小さなもので不適当であるというふうな報告がなされているということが一つの参考になろうかと思います。
○山崎力君 それではもう一点。北側は、この施設をどういう目的のために建設した、要するにつくった動機についてはアメリカに説明しているんでしょうか。
○政府委員(阿南惟茂君) 北朝鮮がアメリカに動機を説明しているかというお尋ねでございます。
  これは、実際どういうやりとりがあったかはもちろんわかりませんが、アメリカ側も、このサイズでは黒鉛減速炉をつくるとか再処理施設をつくるとかというには十分大きくない、しかしかなり大がかりなものである、これはどういう意図でつくったのかなというような問題意識を持っているということで、私どもが実際どういう説明があったかないかを申し上げる立場にございませんが、若干その点についてはどういう目的なのかなという感じは残っているというふうに聞いております。
○山崎力君 そういったことであれば、アメリカ側も普通のときのあれと違って物すごく奥歯に物の挟まったような発表の仕方をしているというふうに受けとめているわけです。
  余りあからさまにすると、外交の駆け引きその他、実際上行くところまで行きかねない相手国の状況から見て、かなり抑えたトーンで発表して、今のところは矛をおさめておきましょう、これ以上はちょっとぎりぎりやるあれではない、別の面でということであって、疑惑は疑惑のまま残しつつ現時点においては一たんは振りかざした刀をさやにおさめておきましょうという程度のものではないのかなというふうに思っているわけです。
  それが、飛ぶようですが、韓国側は表現を嫌っているようですけれども、一連の太陽政策の行き詰まりかというふうな情勢の中で、果たしてこれがうまくいくんだろうか。特に我が国として、日本の納税者からしてみれば、要するに金を出せ、その金の使い方について、使うか使わないかについてはアメリカのやることを信用しろというふうにしかこの問題に関しては私は受け取れないんですよ。これは極めて、北側に対するメッセージというだけでなくて、日米韓のこういった措置に関しても非常に不幸なことだと私は思っている。
  日本としてもこの問題について金は出す、確かにその目的というのは共通の目的だけれども、それが達成されるのか達成されないのか、検証に関してはもう少し代表として、受け入れない韓国と日本の政府の代表の面も含めてアメリカの人たちがそこへ検証に行っているんだという姿勢がいま一つ見えてこないんですね、今回に関して。
  そこのところが日本側の遠慮があってはいけないわけですし、当然の疑問だと思うんです。そうじゃないんなら、何のためにこんな大規模なものをつくったんだと。もちろん全部見せてもらっているわけじゃないんでしょうけれども、直径が例えば五メートルのいわゆる通路といいますかトンネルが一キロ、二キロあるのと、直径が三十メートルも五十メートルもあるようなのが十キロも二十キロも何十キロも続いているのでは、これは性格が同じトンネルでも地下施設が違うわけです。そういった点を考えますと、本当にかなり大きいといってもどの程度なんだろうと。計算してはじいてもかなりの不安感がそこにある。小さい方でとれば安心だけれども、大きな方でとれば不安だ。こういったことがどうしても、これからほかのところも出てくるかもしれませんが、不安感がぬぐい切れない。
  一言で言えば、アメリカが問題先延ばしのために現時点でこういう発表をした、そしてそのところをつつかれないために結論だけこういうふうに、恐らく日本、韓国に対して同様以上に、アメリカ内部のごく一部の人以外にはアメリカ国民にも発表しない、そういう検証だったんじゃないのかなという気が私はしているんです。
  発表されたばかりですから、アメリカ国内の反応がまだどういうようなものか十分把握していないとは思いますけれども、その辺について何か情報がありましたら、この際、教えていただきたいと思います。

○政府委員(阿南惟茂君) 先生、疑惑は疑惑として残したままというふうにおっしゃいましたが、私、先ほどお答えした、これは何のためにこんなものをつくったかという疑問があったということは事実でございますけれども、疑惑という意味では、いわゆる秘密核施設疑惑という意味ではこの施設は合意されたことに違反するものではないという結論を明確に出しているわけでございまして、先ほど私、ちょっと御説明するのが不十分だったかもしれませんが、そしてまた私からこういうことを申し上げるのは適当かどうかわかりませんが、アメリカは恐らくこの公表ぶりについては北朝鮮側と打ち合わせをしているんだと思っております。
  したがって、調査の内容、私どもが少し詳しく聞いておりますのが全部出せないというのは、先生がおっしゃったように、その部分を隠しているとか先延ばしというよりは若干、しかも来年五月にもう一回こういうことをやるということにもなっておりますので、相手あってのことという事情も当然あるというふうに考えております。
○山崎力君 防衛庁の方で何か特段つけ加えること、この金倉里についてございますでしょうか。
○政府委員(佐藤謙君) 本件は、米側は国務省、それから我が方は外務省を中心にいろいろ意見交換をされているわけですが、私どもとして、今回の米側の発表ぶりと違う意見を国防省筋と申しましょうか、私どものカウンターパートから聞いているということはございません。
○山崎力君 ちょっと別の視点からいくんですが、いわゆるミサイル開発の問題になって、同僚議員からもいろいろな角度から質問がありましたけれども、今度の問題からいけば、核疑惑というのはこれは国際上の約束事であるわけですが、ミサイル開発については、これは主権の問題ということで、特段我々の開発する権利を阻止するものは法的にはないんだというのが北側の公式見解、ある意味では当然の見解だろうと思うわけです。
  ただ、そういったときに、先ほどの関連でいえば、国民感情という言葉もありましたけれども、黙って人の頭上をミサイル撃ちをやっておいて、そんな信用できない不作法な国にお金をKEDOを通じてやることはいかがなものかと当然なるわけで、これは国民感情としてはそのとおりですが、国際法上といいますか、外に出た、相手のある場合にそれを言うのはなかなか難しい。やるとすれば自国の判断で、日本国政府は、国際的なそういったことはともかくとして、自国民のそういった感情をもとにして、拠出する、しないは日本国政府の判断なんだから、そこの判断は勝手にさせてもらいます、こういったことで物事は動いていくと思うんです。
  一番私が危惧するのが、次回も黙って撃ってくれればその議論が通じると思うんですが、要するに予告して我が国は何月何日前後に人工衛星を打ち上げると。より詳しく言えば、その一段目は日本海のこのあたりの水域に落ちるおそれがある、二段目のロケットは太平洋のこのあたりに落ちる可能性がある、よって危険水域を公表する、こんなことをやって撃たれた場合、果たして日本国政府はどういう対応をとるんだという疑問が出てくるんですが、その辺いかがでしょうか。

○国務大臣(高村正彦君) 現時点における情報を総合すれば、政府として北朝鮮によるミサイルの再発射が差し迫っているとは判断していないことはもう既にお答えしたとおりであります。
  北朝鮮によるミサイルの再発射は、我が国の安全や北東アジア地域の平和と安定に深刻な影響を与え、我が国を含む関係諸国と北朝鮮との関係に重大な影響を及ぼすことになるわけであります。そして、そのことは北朝鮮にとっても少なくとも我々の考え方からいえば決して利益にならないと思っておりますし、我が国政府は、そのような事態を回避すべく米韓と連携しつつ、北朝鮮のミサイル再発射の抑止のため最大限の努力を行っていく考えであります。
  事前通報あるいは人工衛星搭載の有無を含め、いかなる対応の発射であるにしても、北朝鮮のミサイル発射が我が国の安全や北東アジア地域の平和と安定にとって極めて懸念すべき事態であることは何ら変わりはないわけでありまして、何ら変わりはないということは日本だけの考え方ではありませんで、米韓も同じ考えであります。これは確認をしております。
  その意味で、発射の対応によって我が国の対応に本質的な相違が生ずることはない、こういうふうに理解していただいて結構でございます。
○山崎力君 そこが一番ポイントだろうと思うんですが、逆に言えば、今の言葉を返せば、我が国は米韓両国と協力して、北側の人工衛星発射という、世界各国がやっている技術開発を阻止しよう、こういうおどかしをかけているとも受け取れるわけです。
  ここが非常に悩ましいところでして、その辺本当に今のスタンスでいいんですか、もう少し何か知恵がないんでしょうかというのが私の偽らざる現時点での気持ちであるわけです。
  それじゃどこか、例えば中国が人工衛星を打ち上げたときに、たまたま日本領空上を通ったと。中国の打ち上げは何も文句を言わぬで北のだけ文句を言うのかというようなことも起こりかねないわけで、それが素直に受けとめられない国だから北というのは非常に難しい国だろうと思うのですが、その辺のところをもう一度再確認させていただいて私の質問を終わりたいんです。
  要するに、そういったことであっても、現下の国際情勢その他から見て、我が国としては、たとえ事前通告があり、明確に人工衛星の打ち上げだと、現実に人工衛星を打ち上げてみればわかるわけですから、そういったものであってもスタンスは変えないというふうに考えてよろしいんでしょうか。

○国務大臣(高村正彦君) 北朝鮮のミサイル発射が我が国の安全や北東アジア地域の平和と安定にとって極めて憂慮すべきであるということは、これは人工衛星であっても同じであると。人工衛星であっても同じであるというよりも、たまたま人工衛星が一番先にくっついていても同じである、こういうことでありまして、事前通報や人工衛星搭載の有無を含めて、それの対応が変わってくることはない、こういうことであります。ちなみに、例えばイスラエルが人工衛星を打ち上げるような場合に、必ずしも友好的でない国の方角に向かって打ち上げてはいないというふうに承知をしております。
  北朝鮮にとっては、今、日本と国交もないという状況の中で、またいろんな問題がある中で、日本列島を飛び越えるような形で、完全に軌道を回っている上で上空を通ったという場合と違うわけでありますから、そういうことは同じように考えていいのではないか、こういうふうに思っております。
○山崎力君 終わります。

(後略)