質問「『テポドン発射問題について』他

(平成11年8月6日参議院外交・防衛委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 質問通告とちょっと順番が違って恐縮ですが、同僚議員からもありましたけれども、一つは北朝鮮のテポドンの発射問題です。先ほど外務省サイドからの答弁がありましたけれども、私はその点について防衛庁の方の認識を伺いたいということです。
  と申しますのは、外交問題、それは外務省の所管ですけれども、要するに今度のテポドンを発射した後、我が国としてどうこうというのは外務省ということなんですが、それがどういう状態にあるのか。北朝鮮側は今どういうふうな対応をとろうとしているのか。もちろん内面の方は難しいんでしょうけれども、いわゆる情報として彼らが今テポドンに対してどういう態勢をとっているのかということに関しては、むしろ軍事情報という意味でいえば防衛庁の方が専門だろうというふうに思うわけですけれども、その辺のところの御認識はいかがでしょうか。

○国務大臣(野呂田芳成君) 御指摘の北朝鮮のミサイルの動向につきましては、私どもも日米韓三カ国で大変密接な連携をとりながら、細心の注意を払って継続的に情報の収集や分析に努めているところであります。
  御案内のとおり、北朝鮮は既にノドンの開発や配備を完了している可能性が高いと見られますが、引き続きミサイルの長射程化という問題に大変力を入れているということは間違いありません。北朝鮮がこうしたミサイル開発を継続する場合には、その過程で何度か発射試験等をしようという可能性は否定できないと考えております。
  このような北朝鮮のミサイル関連活動につきましては、防衛庁としてもいろいろな情報を得ているところであります。発射台がどうなったか、燃料がどうなっているかというようなことがあろうかと思いますけれども、今ここで私どもはそういったことを具体的に申し上げることはひとつ差し控えたいと思いますが、ただ、いろいろロケットの燃焼実験やミサイル発射基地の工事を行っている等の報道があることは私どももよく承知しているところであります。
  しかし、この間もコーエン国防長官も同じ見解でありましたが、現時点においていろいろな情報を総合しますと、北朝鮮のミサイルの発射が差し迫っている状況にあるとは判断していないという点では共通の認識でございました。
  今後とも重大な関心を持って、北朝鮮のミサイル関連の活動について細心の注意を払って対処してまいりたいと思っております。
○山崎力君 これは今の御答弁の中にもありましたけれども、わかっていてもなかなかこういう場で公表できないということはあろうかと思います。
  そういった意味で、私の希望といいますか、問題点の指摘だけさせていただきたいのは、いろいろな情報を総合するといっても、現時点で我が国に大きく関連するのは偵察衛星の写真の問題であろうと思います。もちろん、発射の時を探知するという問題もありますけれども、これはこれから将来にわたっての我々の大きな課題になる。
  ところが、この問題というのは裏を返せば、技術的に見てアメリカの現在の技術というのが何倍も優秀であるというのは容易に想像がつくわけでございます。言葉を変えれば、ある程度のお金を出してもアメリカの最高の衛星写真を入手することができれば、偵察衛星に関しては我々は持つ必要がないというふうにも言えるわけです、コスト的に見て。
  ただ、さはさりながら、それでは我々が本当に必要だという時期に必要だと思える精度のものをアメリカがよこしてくれるのか。情報の世界においてはある程度ギブ・アンド・テークというのは世界各国共通である、よって独自の情報収集能力を我々も持たなければならない。こういう観点からの偵察衛星を持つべきであるという議論との問題が、これから真剣に我々は、膨大な額ですから、せにゃならぬ状況にあるということは御理解願えると思う。
  そのときに、私が今の時点で御指摘申し上げたいのは、その点についてアメリカは我々の望んでいる、そういう偵察衛星の資料を提供しているかどうか、この問題に関して。そしてもう一点は、そのことによって当然のことながら発射が差し迫っているか、差し迫ってないかということは想像つくわけで、今その点についての現状についての御見解を伺ったわけですが、もし仮に近い将来、そういったことがあり得べしというような情報が正確にもたらされるかどうかということが、これは極めて試金石的に見られるというふうに私は思っておるのですが、その辺についての御見解はいかがでしょうか。

○国務大臣(野呂田芳成君) 日米の間では、そういう情報の提供等については非常に緊密な連絡がとれているということだけを申し上げたいと思います。
  なお、この間コーエン国防長官がおいでになった際には、今までは領域内に弾頭部が落ちた場合だけは落下地点等について日本に情報をくれるというお話でありましたが、これからはそれをうんと拡大いたしまして、遠くへ飛んだ場合であってもわかる限りは必ず日本にも連絡するというように、非常に連絡の範囲が拡大したということも申し上げておきたいと思います。
  私どもは専守防衛であるがために、やはり敏速に正しい情報を把握して対処するということが不可欠なものであると思っております。したがいまして、情報収集衛星につきましても、ぜひこれを自力開発を目途に平成十四年までに完成したい、こう思っております。
  その最大の理由は、専守防衛であるがゆえに正確な情報を早く把握することが必要だ、こういうことで、まず独自の情報を独立国家として得る必要がある。全部他国に頼っておるような状態では、これはとてもだめだと。それから、一つの情報があってもそれが全部正しいかどうかわかりませんから、情報を得ることの多様化をする必要がある。こういうような点から、ぜひひとつこれは確保したいと思っております。
  なお、情報収集衛星につきましては、正直に言って自主開発の場合に非常に難しい部分があります。そういうことは本当に正確なものをつくっていこうと思えば大変時間がかかる可能性もありますので、今アメリカとの間で折衝を重ねておりますが、そういう問題について私が協力を要請したのに対して、コーエンさんはイエスイエスと、こう二回言っておったということを申し上げておきたいと思います。
○山崎力君 続いてもう一つは、韓国海軍との共同訓練の問題をお伺いしたいと思います。
  今回の訓練の意義というものは、いろいろ言われておるわけですが、常識的に見てこれが悪い方向のものではない、日韓関係にいい方向のものを与えるということは否定できないことだろうと思っております。そこで、お伺いしたいのは、今までこういった経過のある二国間関係ですからやむを得ないところもあったんですが、今の時点で共同訓練を行ったのはどういうことなのか。逆に言えば、今までしてこなかったのはどういう理由であったのか。そして、今般こういうふうな問題というのは、アメリカとは日米安保条約があるけれども、ほかの国とは集団的自衛権の問題があって、余り積極的でないといいますかむしろ控えていた、たまに遠洋航海で行ったところで儀礼的に訓練らしきものを米国以外とではやっていたというのが実態だと思うんですが、その辺の問題はどのようになっておりますでしょうか。

○国務大臣(野呂田芳成君) 韓国と防衛庁の防衛交流につきましては、九四年以降首脳会談を毎年実施してまいりました。また、防衛当局者間の定期的な協議の開催もやってきましたし、各レベルの訪問とか留学生の交換なんかもやってきました。
  海上自衛隊と韓国との間では、九四年以降艦艇が相互に両国を訪問するとか、あるいは昨年の十月には韓国で行われた国際観艦式に海上自衛隊の艦艇も出席させております。今回のような共同演習が行われるようになったということは、昨年の九月、それから本年一月、私が日韓防衛首脳会談に出席させていただきまして、捜索救難に関する海上共同訓練の実施に向けて両国の国防長官で話し合って、この合意が成立しまして、今回の訓練の実施に至ったというのが直接の契機でございます。
  申すまでもなく、この訓練はあくまで民間の船舶の海難事故を想定した共同捜索救難訓練でありまして、私どもとしては、このことによって相互理解が進み、信頼が醸成されることを大変意味のあるものと考えております。
○山崎力君 今、若干答弁漏れと言うとおかしいんですが、集団的自衛権でどこまでそういった訓練が可能なのか、アメリカ以外とですね。その辺については、いかがでしょうか。
○国務大臣(野呂田芳成君) 今申し上げましたとおり、あくまでも民間の船舶の海難事故を想定した共同捜索救難訓練でありまして、特定の国とかまたは特定の地域を共同して防衛するような訓練では全くございません。だから、集団的自衛権の行使とは何ら関係を有しないものとの観点に立って私どもは整々として行っている次第です。
○山崎力君 御存じの方も多いと思いますけれども、かつてリムパックで多国間の共同訓練を行ったときに、日本側の自衛隊、もちろん海上自衛隊が参加したわけですが、アメリカと一緒の訓練はできるということで、敵味方に分かれて仮想してやるわけですが、アメリカと組んでやることはできるけれども、ほかの例えばオーストラリアであるとかカナダであるとか、そういったところの国と一緒にグループになることはできなかった、遠慮したと。そこのところで言われたのが、この集団的自衛権に反する行為になる可能性があるということだというふうに言われていたわけです。
  その辺の検討というのは、今後なさるといいますか、今回の日韓間のやつはそういったことだから問題ない、これまでもその程度のことはやっていたんだけれども、これは韓国に限らずロシアとか中国とかとやっても構わないわけで、その辺の感覚というのはどのようにお持ちでしょうか。

○政府委員(佐藤謙君) 今、先生お話しございましたように、憲法でいわゆる集団的自衛権の行使ということが認められておりませんから、自衛隊はそれを前提とした訓練を行うということは行わないということでございます。
  したがいまして、今回の日韓の共同訓練も、そういう集団的自衛権を前提とした訓練ではなくて、先ほど大臣から御説明したような内容でございます。先生も御記憶のように、実は昨年もロシアとの間でこういった海難の共同訓練をしておりまして、それも同じような考え方でやっているわけでございます。
○山崎力君 いろいろ法的な問題、特殊な日本の集団的自衛権の否定という問題がございますが、こういった共同訓練というのは国際慣行上、親善行為として行われている部分があって、それは私は集団的自衛権の問題とは切り離してやれる問題だろうと思っておりますので、韓国、ロシア、プラスアルファでどんどんそういったことはやっていただきたいとは思っております。
  時間もなくなってきたので、本来の質問が余りできなくなったということでちょっと言いっ放しになるかもしれません。先ほど田村議員からもありましたけれども、今回の改正の問題でいえば非常に内局的な問題、それで人数的に非常に限られた問題がいわゆる制服組、多数の方に、直接そういったものと関係ないところに広がったのではないかという、言葉をかえると非常に使いにくいんですけれども、非常にわかりやすく言えば内部告発的な質問もあったわけでございます。
  一番問題なのは、その辺の問題解決もそれはそのとおりなんですが、隊員の士気、今回の改正あるいはもちろんこの間の不祥事で士気が落ちたということは当然考えられるわけですけれども、それをいかに回復していくかと同時に、今回その結果としてこういう形になってしまった、しかも制服のある層からは、内局のとばっちりを受けてえらい面倒くさいことになったというような感想も漏れ聞くような状況なんですが、そういった制服組の士気の低下をいかに防いでいくか。これは、もちろん再就職活動についても今まで以上のアフターフォローが当然必要になってくると思うんですが、その辺についての防衛庁の御見解はいかがでございましょうか。

○政府委員(新貝正勝君) 先生御指摘のように、我が国の防衛にとりましては、隊員の士気というものが重要であることは十分認識しておるところでございます。
  それで、今回の改正に当たりましてもそういった点を考慮しまして、任期制の自衛官につきましては再就職に関し長官の承認の対象外というふうにいたしました。また、必要ならば就職援護制度による支援を受けつつ、心置きなく再就職先を探すことができるような施策を講じていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。また、任期制自衛官とは別に、若年定年制の自衛官につきましては、その多くは防衛産業以外の企業に再就職しておるところでございますが、さはさりながら、防衛産業にもかなりの者がやはり再就職しているところでございます。
  したがいまして、手続の対象となる隊員はそんなには多くないというふうには考えますけれども、承認の対象となる者につきましても、防衛庁と密接な関係にある企業に再就職する場合には、適正な審査を経て長官の承認を受けることとするということで、批判、疑いを受けることなく堂々と胸を張って再就職できることになり、その第二の人生を考える上でも望ましいというふうに今回の法改正に当たりましては考えたところでございます。
  我々としましては、これらの点につきまして隊員への理解、周知に努めるとともに、若年定年制、任期制自衛官の再就職を支援するための諸施策につきまして、今後さらなる充実を図っていきたいというふうに思っております。また、そのことが一般隊員の士気を低下させることにならないことになるのではないかというふうに考えておるところでございます。
○山崎力君 時間ですので、最後は言いっ放しになるかと思いますが、お聞き願いたいと思うんです。
  いわゆる任期制の方はともかくとして、若年定年制。これは体力勝負の部分が軍隊というのは絶対必要な部分で、それで与えられた階級というものがそこのところの仕事の内容を決める部分であるということも重々承知はしているんですが、だんだん戦争の態様が変わってきまして、現場でもちろん汗をかく人たちはこれはこれでもう絶対必要なんですが、今まで以上にハイテク機材を駆使して後方で、それこそ今まででしたらとても軍人にはなれないような人が青白き蛍光灯、ブラウン管あるいはディスプレーを見てキーボードをたたくというので優秀な軍人、そういう意味での軍人がこれから出てくる時代だろうと私は認識しております。
  そういった人たちの特殊技能をどうやって生かしていくか、あるいはその人たちをどうやって確保するか、あるいはそういった人たちが再就職するときに、いわゆる現場サイドの人にない特殊技能をどう生かした形で再就職の方に持っていくか、今までになかった課題がこれから出てくるだろうと私は思っております。
  そういった意味での新時代に対応する人事管理、教育制度、そういったものをもう一回、これを機会に御検討なさるということを期待申し上げて、質問を終わりたいと思います。

(後略)