質問「『自衛隊の核事故対策について』他

(平成11年11月11日参議院外交・防衛委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 それでは、質問させていただきます。余り質問したくないことではありますけれども、一応次期の問題とけじめの問題で防衛庁にお伺いしたいと思います。
  西村政務次官が更迭をされました。その原因といいますか、種々に報道はされておりますが、大きな理由とされているのは、日本の核武装に言及した点である、このように理解しているわけです。
  御承知のとおり、日本国憲法においては核武装がすなわちそのまま憲法違反にはなっておらないわけでありまして、ここのところに書類もございますけれども、一応、自衛のための必要最小限度の実力、それで、仮にそのような限度にとどまるものであれば必ずしも憲法の禁止するところではないというのが政府側の一貫した答弁であるわけでございます。
  もちろん、いわゆる非核三原則であるとか、あるいは国際条約、NPT、そういった条約、あるいは原子力基本法、こういったものの法律の問題には違反ということに当然なっているわけですけれども、直に憲法に違反するようなことをしたというわけではないということは私の理解するところです。
  それで、一番私がひっかかっておりますのは、西村さんが論議しようということで提案されたと。これが、政府が持たないと言っているときに持てと言えば、これは時の政府の方針と違うことであるからして不適当であると、更迭に値するということはよくわかるんですが、その辺のところ、いろいろ言われておるんですが、本当に何をもって西村政務次官が更迭に値したのかということを直接上司である防衛庁長官から御答弁願えればと思うわけでございます。

○国務大臣(瓦力君) 山崎委員にお答えいたしますが、西村前政務次官の発言に係りまして、核武装の問題についての週刊誌における記事掲載を私は拝見をいたしました。
  西村政務次官は、大変意欲を持って、私ども一緒に勉強するときにはそれらの問題についてお触れになることは少なかったわけですが、かねてから御本人は議論すべきであるというお考えであることは承知をいたしておりました。週刊誌を見まして、私も、不適切な部分があるということで本人に真意を任命権者に伝えるようにと。また、既に報道されておることですから、私も厳しく実は申し上げたのは、これは友情の一端であっても結構だと思うんですが、注意を申し上げました。しかし、他にも不適切な表現もありまして、御本人は辞任をしたわけでございます。
  彼がこれからいかなることを訴えてまいりますのか、議員としての活動がございますし、内閣としては今申し上げたようにその路線はとらないわけでございますので、彼もそのこともよく承知をして辞表を出したわけでございます。
  これ以上のことは私が申し上げるまでもないと思うわけでございますが、彼はそういう経緯、いきさつをもって辞任をした、かように理解をしております。
○山崎力君 今問題になっておることでいえば、憲法の問題も論じようではないかということでございますから、その辺の核というものの現状を顧みたときに、これは山本政務次官、いろいろ御苦労なさっていますが、インド、パキスタンがいよいよ核武装をしたと、核拡散につながるおそれがあるかないかという極めて微妙な時期にあるわけでございます。
  もちろん、我々にとっては北朝鮮という問題も常に念頭から離れないわけでございまして、そういった意味で、これが我が国において核論議をまたタブーにすることがあってはならないというふうに私自身は思っております。
  もちろん、その政治的、軍事的な影響力についてということは当然議論しなきゃならないわけですが、それ自体を、大きな外交その他防衛のファクターである核というものに目をつむってということは、私はこれからまた許されない時期に来ているんではないかなという認識を持っておりますので、その辺のところを御理解願えればと思います。
  そういった中で関連してでございますけれども、東海村の原子力事故がございました。これについて、いわゆる原子力災害において自衛隊の能力に限界がある、装備もほとんどできていない、今度予算要求をすると。こういうことで、それだけ見ればそれだけのことなんですが、私はまさにこのことが日本の防衛力の整備についても大きな問題がある。
  要するに、核戦争を念頭に置いた装備を自衛隊はしてこなかったということの証拠であると私は思います。国際法に違反するからとか云々ということもございますけれども、それであるならば、何ゆえに大宮に化学防護隊がいるのか。いわゆるNBCあるいはABCと言われる近代兵器体系にいかに取り組むかということは、防衛に関する関係者であるならばこれはもう念頭から離れられない問題であって、いわゆるオウムのサリンで脚光を浴びましたけれども、そういったものは持っているけれども、研究その他のことはしているけれども核については一切自衛隊としても今までタブーであったということではないかというふうに思うわけです。
  もちろん時代背景その他がありまして、そういった装備をする、研究をするということが諸外国に対して日本は核武装の準備をいよいよ始めたんではないかという危惧がこういうふうな自分たちの自己規制につながっているということは想像にかたくないわけでございます。その辺のところを含めて、やはりもう一回この問題は考えなくてはいけないと思うんですけれども、実際にこれから予算要求するわけですから、その辺のこれからの防衛庁としての原子力事故、あるいはいわゆる核兵器対策というわけでもないんですけれども、そういったものの部隊の編成とか運用をどのように考えているのか、お尋ねしたいと思います。

○政務次官(依田智治君) 今、山崎先生、全然核に対する準備がなかったということではございません。これまで核兵器がもし使われた場合にどう対応するか、大宮の一〇一化学防護隊で研究する、また全国に十五くらいの化学防護部隊をつくる。それで、例えば中隊用の中性子線量計とかを備えたり化学防護車等も備えたり、戦闘防護衣等でもどのくらいの放射線が守れるかとか、防護マスク、化学防護衣その他、ある程度の部隊の装備はやっております。
  ただ、今回はっきりしましたのは、ああいう臨界事故みたいなのが起こったときに、中性子線に対する装備は全くない。それから化学防護車の窓ガラスではガンマ線を防護できない、個人装備でもガンマ線は守れない、こういうような事態が出てきたわけです。そうなると、少なくとも住民等を守るために出ていく自衛隊がそういう装備もないようでは問題じゃないかというようなこと、それから化学防護隊、小隊みたいなのももうちょっと格上げして、午前中鈴木先生からも質問ありましたが、やはり各地で何か起こったようなときにむらなく対応できるような部隊と装備というものは持つ必要があるんじゃないかということで、現在、予算でもそのあたりを今回の東海村の事故を反省して、事故をもとに、自衛隊の装備強化ということで百数十億の要求等をいろいろやらせていただいている状況でございます
○山崎力君 いわゆる中性子線に対応というのは、これは私のうろ覚えですけれども、中性子爆弾に対する防護をどうするかというのは、冷戦時代のNATO正面において本当に重要な問題で、戦車の内側に中性子線を防ぐいろいろなあれをつくろうとか、それが効果があるとかないとかいろいろ言われていたんですが、逆に言えばそういったものと無縁であったということのこれは証明であって、ある意味でいえばいい平和な時代だったんですが、今回のことを考えればということになろうかと思います。
  これに関連して、これは政府側に対しての要望でございますけれども、今回の東海村、それからせんだっての不審船事件、これに共通する問題点が私はあると思います。これはほかの省庁と絡む問題ですから、いわゆる防衛庁ということだけではないんでお聞きおきしていただければ結構なんですが、まず不審船に対しては、いわゆる設計変更までして高速艇、ミサイル艇になると思いますが、それの強化をして速力を上げるようにしたと。それはそれでいいんですが、別に海上保安庁もこれを契機に高速巡視船をつくるんだと。こういうふうなことになっております。
  それから、今回の原子力事故に関しても、防衛庁は防衛庁でこういうあれをとる。ところが、いわゆるこういった災害、どこが担当になるかは別として、消防庁あたりでしょうか、火災その他の災害に対する一義的な対応組織として、原子力に対するレスキュー隊といいますか、そういったものをつくろうではないかという意見が出てくる。国民の側からすると、これは明らかに二重投資という感じがするわけでございます。
  だから、もし割り切るのであれば、もう防衛庁は不審船にしろこの原子力事故にしろ、これはうちの商売ではないと、範囲外であると、一義的に海上保安庁なら保安庁に任せると、それで予算をそっちへつけてやってもらうと。この事故についても同じ。そういうのに何でもかんでも自衛隊を頼むというのはお門違いだということも一つの割り切り方であるわけです。あるいは、逆にこれはうちの一手販売でやらせていただくと、責任は持つと。そのかわり装備と予算は頼むよと。これが私、一番今回の東海村の事故も含めて問題になるところではないか。
  その間の省庁間の協力とか、それぞれ協力し合ってとか言われていますけれども、かつての本会議でも質問させていただきましたが、防衛庁の自衛艦と海上保安庁の巡視船で同じ名前がぞろぞろあると。そういったところを今回の例でいえば、東海村の事故についての対応もむだのないというとおかしいかもしれませんけれども、それは自分たち防衛庁から見ればむだなく装備しているかもしらぬけれども、ほかの省庁で同じものがあった場合どうなるんだということも含めて、省庁間の役割分担をどうやるかということを本当にお願いしたいというふうに思っております。
  これは、せんだっての不審船事件のときにも痛感したことでございますが、その辺について一言答弁いただいて、私の質問を終わりたいと思います。

○政務次官(依田智治君) 山崎先生、警察がやれること、それから軍なり日本の場合自衛隊でなければやれないことというのがありまして、やはり不審船事件の例がありましたが、じゃ、ああいう特殊部隊が偽装しているような軍特殊部隊員が相当な装備を持ってやるものについて、日本の海上保安庁が対応するだけの装備なりなんなりを持っているというと、自衛隊にかわる軍隊をつくるような話になっちゃいますので、私どもとしては、やはり自衛隊は自衛隊として国の守りという面から、国土防衛という面を主眼にしつつも、それの持っている装備とかそういうものを活用して、民生でも大いに役立つようにする。
  そして、警察機能と自衛隊の機能の間隙を生じないように、密接に省庁間の連絡を保ちつつ国民の安全を維持していくということが重要じゃないかなと、こんなように考えております。よろしくひとつお願いします。

(後略)