質問「『日本外交のスタンスについて』他

(平成11年12月14日参議院外交・防衛委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 それではまず、外務省の方からお伺いしたいと思います。先般のWTOの閣僚会議、これは決裂という格好、事実上そういう形で、極めて異例な形で終了したわけです。
  我々国民とすれば、下手な妥協をしてアメリカにおもねるよりはいい状況だろうとは感じているんですが、いろいろ国内事情あってのことだと思いますけれども、アメリカがいわば世界から孤立した形で、今回、議長国でありながらああいう対応をとったということについてどのように外務大臣はお考えになっているか。それと同時に、今後どういうふうにやっていくのか、悪い影響が出るのではないかという危惧もあるわけですけれども、その辺どのようにお考えでしょうか。

○国務大臣(河野洋平君) 山崎議員のお尋ねでございますが、私はWTOの会議に参加をしておりまして、私の感じを申し上げますと、新聞各紙はWTOの閣僚会議は決裂したと書きましたけれども、私はどうも現場にいて決裂という感じは余り受けなかったんです。非常に各国の閣僚が努力をして、少しずつ主張の乖離は狭まってきていたんですけれども、時間的制約があってこれ以上もう議論ができないということで凍結ということになって終わった。
  したがって、あのままの状況で、いずれ場所を変え、少し時間を置いてあのままの状況から始めよう、こういうことをしきりに議長は言いました。実際問題としてそうなるかどうかについては若干の疑問なしとしませんけれども、少なくともあの会議の終わり方はそういう終わり方で終わったものですから、決裂したというふうには私は感じなかったということをまず最初に申し上げたいと思います。
  それから、議長国でございましたアメリカが相当にまとめるべく努力をしたことは事実でございますけれども、所定の時間内にまとめ切れなかったということについてはやはりいろいろ問題があるということは考えざるを得ません。ただ、アメリカにはアメリカの主張があったのと同じように、EUにはEUの主張があって、例えばヨーロッパには農業問題、農産物の輸出補助金の問題など、譲れと言われてもなかなか譲れない問題もありましたし、それぞれの国にはそれぞれの問題を抱えていて、必ずしもアメリカにだけ問題があったというふうには思いません。
  しかし、アメリカに非常に大きな問題があったと。例えばアンチダンピングの問題でございますとか、アメリカに非常に大きな問題があったことは事実だと思いますが、その結果、議長としての責任という意味では議長国たるアメリカは非常に孤立をして責任があるなという感じは正直いたしましたけれども、アメリカだけが孤立をして会議が決裂したという感じではなかったというふうに思います。
○山崎力君 今の御答弁でございますが、それはそういったことであれなんですが、前の質問にもちょっとあったんですが、今後の問題として、今、大臣もおっしゃられたけれども、そのままの形で次の閣僚会議ができるのかというのが大きな僕は問題だろうと思っております。
  ほとんどの国は包括的にもう一回やりなさいというのでいいと思うんですが、アメリカは自分の都合の悪いアンチダンピングのところはのけておいて、個別的なあるいは農業であるとかそういったところで次やりたいというような報道もあるんですが、逆に言うと、そこのところが将来のWTOの会議の存在意義そのものが問われる可能性もあるなというような気がしているんですが、その辺のところの御感想は、いかがでございますか。

○国務大臣(河野洋平君) 今申しましたように、会議の終わり方を見ますと、議長からここまでやってきた議論の積み重ねはそのまま崩さないようにして次につなげようということが一つ。それからもう一つは、農業とサービスの分野については別途の規定があるのだから、これは二〇〇〇年の初頭から農業とサービス部門については議論をスタートさせるということはもう決まっているんですよということを繰り返し言って、まさに今議員が御指摘になったような感じも若干はいたしました。
  しかし、そうはいっても、私どもは多角的自由貿易体制というものを大事にしていかなければ貿易立国たる日本はやっていけないわけですから、やっていけないというのは大げさですけれども、我が国にとって大事なことでございますから、やはり我が国も積極的に新しいラウンドの立ち上げのためにこれから先も努力をする必要がある、そして一日も早くラウンド立ち上げの交渉が始まるようにしなければならない、そのことが包括的な交渉をするというためにも必要だというふうに我々は思っているわけです。
○山崎力君 次に、ちょっと離れまして、時間の関係でちょっと大まかな質問になるかもしれません。
  今、東ティモール、西ティモール、自衛隊の協力もあっていろいろ活動されています。インドネシア自体で、別のアチェというところで独立運動も出ている。今までのそういった一応独立した国の中の独立運動といいますか、そういったものが宗教とかあるいは民族、歴史、そういったいわく因縁からきていろいろな問題が起きているというのは、インドネシアのみならずコソボでもそうですし、チェチェンでもそういうことだし、あと幾つかそういったところも、おさまったとはいえそういうところがある。
  古くはカンボジアの問題、ポル・ポト政権の問題がそういったところの背景にあったと思うんですけれども、今まででしたら国内問題である、いわば外国からの干渉は受けつけない、自国民のことであるならば、非常に下世話な言い方をすれば、煮て食おうと焼いて食おうと他国の人の口を出すものではない、こういう考え方がかなり強くあったと思うんです。
  それが今、人道問題という形で、そういうのは国際社会として放置できないというような形での介入、それは国連という部分がどれだけそこに入ってくるかの問題は別として、簡単に言えば、そこを突き詰めて言えば国連なら内政干渉できるのか、こういう考え方も可能であろうと思うんですけれども、その辺が非常に今流動的になってきているというふうに思うわけです。
  先ほどの質問にありましたけれども、ロシア・中国の首脳会談が行われた。その背景にあるのは何だといえば、ロシアはチェチェンであり、中国は台湾問題、あるいはチベットも含めているかもしれませんけれども、そういう火種を、現実に火を噴いているところもあるわけですけれども、そういったところに対する国際社会の介入の牽制ではないかという報道もなされているわけです。
  そういったときに、将来、方向として日本の外交をどのようなスタンスで持っていくのかということを、この際ちょっとお考えをお述べいただければと思います。

○国務大臣(河野洋平君) 大変難しい問題を御指摘になりました。
  人権といいますか人道といいますか、この種の問題についてはいろいろな議論があると思います。例の天安門事件の際に、中国に対して欧米各国は大変厳しい対応をいたしました。当時、アジアの国々は比較的理解を示すという場面もありました。つまり、それぞれの国にはそれぞれの国の物差しがあるという時代もあったわけですが、だんだんそれが時代が進んできて、そういう人道問題といいますか人権問題にはそれぞれの物差しがあるというのはおかしいではないかという主張が先進国の中の主流になってきていると言っていいんだろうと思います。
  現に、今最大の問題はチェチェンであり、コソボであり、東ティモールでもあったと思いますが、御指摘のとおり、コソボの問題は少し込み入っておりますけれども、他国の国内における問題を当該国でない国々が介入をしていくということについての正当性がどこにあるかという問題については、大変いろいろ議論があると思います。
  そういう中で大事なことは、一つは国連の判断というものが重要だろうと思っております。我が国の外交はやはり国連を非常に大事にしてきたわけでございますから、国連の判断というものが我が国の外交の一つの物差しになるということが一つあると思います。
  それから、他方、先進諸国との議論をいたしますれば、人道的な問題には極めてセンシティブな考え方が強いですから、そういう考え方というものにどう我が国が対応するか。それはともすれば、例えば経済的に非常に貧困な状況にある国は豊かな国よりもやはりこの問題についての感度は低いと申しますか、そういう感じなしといたしません。しかし、人間としてどんな状況であれ、その人権というものは守られるということが重要だということもまたあると思います。それは宗教的背景を持ってさらに我々よりももっと強くそう感ずる国もあるかと思います。
  したがって、この問題をこれから外交政策上どういうふうにとらえていくかということについては我々は本当に考えなければならない問題だというふうに思っておりまして、今、議員のお尋ねに一刀両断でこうだというふうにお答えできないことを申しわけなく思いますが、今そんな状況でございます。
○山崎力君 我々、政府側だけでなくて、国民の代表としての我々の方の意見もどういうふうに反映させていくかということもあろうかと思うんです。やはりある程度、国民からして我が政府はこういう感覚でこういう基本方針でやっているんだなというのが事この問題に関しては余り見えてきていないという感じもしますので、国連中心主義というのが、言葉だけは言っているんですが、実態としてはなかなか難しいところはあろうと思いますが、一層の御健闘をお願いして次の質問に移らせていただきます。
  防衛庁長官にお伺いしたいんですが、北朝鮮の問題、いろいろこの間の訪朝の問題はありますけれども、ペリー報告書以降、軍事面、要するに我々が一番心配している軍事面において北側にどのような行動といいますか対応が見られているのかというような点について、どのように分析されておられるでしょうか。

○国務大臣(瓦力君) ペリー前国防長官が昨年十一月に北朝鮮政策調整官に任命されたわけでございますが、いわゆるペリー報告が本年十月に公表された。この報告書においては、包括的統合されたアプローチ、実質的には日米韓が緊密に協議して共同でつくり上げたものでございます。この報告書において、北朝鮮のミサイル開発に対する我が国の懸念はもちろんのこと、日本人の拉致問題に対する我が国の懸念等が適切に取り上げられていると考えております。
  本年九月に北朝鮮は、米朝間の協議が継続している間はミサイルの発射は行わない、この旨の公式表明をして、一連の米朝関係の進展をこれは反映いたしておりまして、日米韓と北朝鮮の関係を肯定的な方向に進め得る動きである、かように認識をいたしております。
  他方、委員から北朝鮮の軍事情勢についてのお尋ねでございますが、軍事面に資源を重点的に配分をしておりますこと、陸上兵力の三分の二を非武装地帯沿いに前方展開していること、我が国のほぼ全域を射程におさめ得るノドンの配備を行っている可能性が高いほか、弾道ミサイルの長射程化のための研究開発を行っている、かように見られております。これらの点を踏まえれば、現時点においても我が国を含む東アジア全域の安全保障にとって重大な不安定要因となっておることも事実でございます。
  我が国の安全を第一義的に考えるべき防衛庁といたしましては、今後とも北朝鮮の動向について細心の注意を払っていく必要があると考えております。なお、詳細につきましては、なかなか事柄上、北朝鮮はつかみ得ないところがございますが、包括して申し上げますとこのような状況かと思います。
○山崎力君 結論として、ペリー報告書以前の我々が軍事的に脅威を感じていたのと軍事面から見れば変化はないというふうに受けとめてよろしいというような御答弁だったと思います。
  時間の関係で、僕もちょっと空中給油機のことをやりたかったんですが、議論もあったことですから、詳細な意見は次の機会に譲るといたしまして、装備品関係が主だとは思うんですが、一部報道に、防衛予算について、円高が進んでいるということである程度装備品の単価も下がるのではないか、輸入関係のドル建ての単価が下がるのではないかということで、防衛庁予算を少し、この厳しい折、削ってもいいのではないかというような考え方が、大蔵省を中心でしょうか政府の一部にあるやの報道がなされているんですが、この辺についての来年度の予算を目前とした防衛庁のお考えはいかがでございましょうか。

○国務大臣(瓦力君) 平成十二年度防衛予算関係費の概算要求は対前年度一・六%増の四兆九千九百九十五億円、これはSACO関係経費を除くわけでございますが、かような概算要求となっております。
  その後の円高でありますとか、人事院勧告などの諸事情によりまして、これら関係する経費は減少する見込みでございます。対前年度伸率等におきまして現在調整中でございますが、具体的に申し上げられる段階ではございませんが、防衛庁としては、今後の予算編成に向けまして所要の金額、これを確保すべく努力をしてまいりたいと考えております。
○山崎力君 今の御答弁ですと、要するに外形的な円高等のあれで、あるいは人事院勧告の給与ダウンということで減ることはあっても実質的な内容は変わらない予算を確保、当初のあれと比べて変わらない予算を確保する決意であるというふうに受けとめてよろしゅうございますでしょうか。
○国務大臣(瓦力君) 委員から御指摘のとおり、防衛関係費につきましては所要のものを確保してまいる、そのことで努力をしてまいりたいと考えております。
○政務次官(依田智治君) ちょっと補足をさせていただきます。
  今、大臣から報告がありましたが、来年から防衛庁の自衛官の退職人数が相当ふえてきまして、そういう関係で人件・糧食だけでも数百億ふえるというような状況がございまして、円高等による減り方とかいろいろそういうのを差っ引いてもまだふえる方が多いというような事情がありまして、このままへこますということになりますと、どうしても一般物件費とか訓練とか老朽装備品の更新とか、そういう方に響きますので、私ども、何らそういう面に支障ないように努力していきたい、こんな考えでおる次第でございます。
○山崎力君 終わります。

(後略)