質問「『台湾新総統就任演説について』他

(平成12年5月25日参議院外交・防衛委員会会議録より抜粋)


(前略)
○委員長(矢野哲朗君) 国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約の締結について承認を求めるの件及び千九百五十五年九月二十八日にヘーグで作成された議定書により改正された千九百二十九年十月十二日にワルソーで署名された国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約を改正するモントリオール第四議定書の締結について承認を求めるの件の両件を便宜一括して議題といたします。
  両件の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑を行います。
  質疑のある方は順次御発言願います。
○山崎力君 山崎でございます。
  まず、この両条約といいますか、議定書の承認も含めてですが、その中身についてはこの際、異存ないということです。ただ、その表題といいますか、日本語について山本次官にちょっとお伺いしたいと思うんです。
  この何々についての「ある規則」というのが日本語として非常になじまない。英文を見れば、私のつたない発音でいけば、フォー・ザ・ユニフィケーション・オブ・サートゥン・ルールスということで、このサートゥンというのを「ある」と訳していることで非常にわかりにくくなっているんですが、もう少しましな訳はないのかと。
  もちろん、今までこういった外交用語、英文の外交用語を統一的に日本語に訳すということで、関係者にはこういうふうな日本語はこういう英文が浮かんできてこういう意味なんだろうということは恐らく歴史のあることだろうと思って理解はするんですが、翻って現時点でこれを見ても、どうも私自身ですらはっきりイメージがわいてこないのを、一般の同僚議員の方も恐らく大多数の方がそうではないかと思うんですが、その辺についての御見解をちょっと伺いたいと思います。山本次官、よろしくお願いします。

○政務次官(山本一太君) 確かに山崎委員おっしゃったように、ぱっと見ると一瞬わかりにくいところもあるかもしれませんが、この「ある規則」、今おっしゃったサートゥン・ルールスというふうに英語はなっているわけですが、つまり「ある規則」というのは、いろいろ規則がある中ですべての規則ではないある部分をカバーする規則というまさにその意味でして、今回の場合は民事面の責任を書いてあるということで、実はその他にも御存じのとおりいろんな条約がございまして、一番典型的なのは、例えばシカゴ条約みたいなものがあって、この航空協定で二国間の乗り入れをしているということで、つまりある分野、全部ではない、そのある分野をカバーする「ある」という意味のサートゥン・ルールスということです。
  実は、これには意外とちゃんとした故事来歴がありまして、簡単に持ってきたんですけれども、この訳語というのは、昭和二十六年、一九五一年の吉田茂全権ほかがサンフランシスコ講和会議の場で平和条約とともに署名した日本国政府の宣言において、我が国が速やかに加入する意思を有する国際文書の一つということでワルソー条約を挙げた際に、ここに同条約の正式名称の中で「ある」というのを使用しているということで、その後、昭和二十八年、一九五三年にもワルソー条約の締結について、あるいは引き続き四十二年、一九六七年に、やはりワルソー条約を改正するヘーグ議定書の締結、この二つについてそれぞれ国会の承認をいただいたときにも、やはりワルソー条約の正式名称の中でこのサートゥン・ルールスと、「ある」というのを使用している、こういうことでありまして、これはもう正式なタイトルをこうやって改正の場合も運用していくしかないという状況で、この条約を改正するということでその正式名称をそのままとって「ある規則」と、こういう訳語を使用しているということで御説明にかえさせていただきたいと思います。
○山崎力君 大体そういう説明があるだろうなというのは、これを読んでというか、感じたわけですけれども、さはさりながら、日本語としてこれで浮かんでくるかというと非常に問題で、言葉を補ってやれば、いわゆるワルソーで署名された航空運送について幾つかある規則のうち、ある分野の規則の統一に関してという意味だと思うんですが、そのことがこの文章から日本語として浮かんでくるというのは極めて特異な才能を持った人間でしかないということがございますので、その辺は今後、これはもう一つの固定された訳、いわゆる固有名詞的な訳だということで了としますけれども、今後その辺のところをわかるように、これでも長過ぎて日本語とすれば本当に大変なんですが、お願いしたいということで、次の質問に移らせていただきます。
  それで、今度は外務大臣の方にお願いしたいんですが、せんだって台湾で陳水扁新総統が就任されました。両岸関係というのは、言うまでもなく我が国の外交にとっても非常に大きな、不安要素と言うと言葉は悪いんですけれども、どうなるかによって我が国も大きな影響が出るということで、その就任演説の内容というのが極めて注目されていたわけです。
  報じられるところ、私自身そこにも参加していたわけで、聞いた人間の一人なんですけれども、極めて巧妙なレトリックで問題を、言葉は悪いんですけれども、すり抜けるというとおかしいんですが回避していて、衝突その他の難しい方を回避していて、それで大陸側の方も、その辺のところの、何というのでしょうか、どう解釈してどうやったらいいかというところをちょっとまだ決めかねているような対応もその当時の報道ではなされておりましたが、日本政府として、あの就任演説に対する現時点での考え方と、それの大陸、中国側の反応についてどのようにお感じなのか、お伺いしたいと思います。

○国務大臣(河野洋平君) 議員御指摘のとおり、我々もあの就任演説については非常に高い関心を持って見ており、そして聞いていたわけでございます。
  陳水扁氏の演説は、今、議員は非常に巧妙なレトリックというふうにおっしゃいましたが、私どもは、非常に慎重な言い回しで、しかしこれまで述べてこられた枠の中で、その枠から出ることはなく非常に慎重に抑制された演説をされたというふうに聞いたわけでございます。注意深く、そして慎重な言い回しのこの演説は、中国を刺激したくないという気持ちもきっとあったに違いない、そういう感じで演説は聞きました。
  これに対して、中国側は二十日に声明を出しているわけですけれども、この声明では、一つの中国の原則の重要性を強調し、一つの中国の原則や台湾が中国の一部であるという現実を否定したり、一つの中国を将来のこととするという、未来のという言葉を使われたわけで、そのことはあってはならない、そして一つの中国の原則が大事なんだということを中国は非常に強く述べているわけですが、それはそう述べつつも、今申し上げたような一つの中国という原則のもとでなら対話を行う用意があるというふうに言っているわけです。これも比較的抑制のきいた反応ではなかったかというふうに私どもは見ていまして、確かに原則をめぐる立場の違いがあって、両岸当事者間の対話の再開というのがこのことで直ちにできるという感じではないなというふうに見つつも、両岸当事者による平和的解決のために対話が何とか早期に行われてほしいということを希望しているわけでございます。
  いずれにしても、双方の発言は非常に慎重な発言、慎重な対応ぶりというふうに感じております。
○山崎力君 そういうふうな日本政府側の両岸、中国、台湾に対する反応をそういうふうに受けとめられているということがわかりましたけれども、問題は、その慎重さが将来どこへ向かうのかということが一番問題だろうと思うんですが、その辺についての御感想は何かございますか。
○国務大臣(河野洋平君) これはまだもう少し見てみないとはっきりしてこないと思います。
  いずれにしても、これから通商問題があったり、さまざまな現実、具体的な動きというものがあるわけで、それについて双方がどういう発言をし、行動をするかということがあると思いますが、私どもとしては、繰り返し申し上げておりますが、従来の日本の政府のとってまいりました立場、認識というものの上に立って双方の話し合いが早期に行われるように願っているところでございます。
○山崎力君 時間ですので、これで終わります。

(後略)