質問「イスラム世界との折り合いの付け方

(平成14年2月20日参議院国際問題に関する調査会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 自民党の山崎でございます。
  今までのお話、非常に興味深く伺いましたが、ひとつ基本的なところで両参考人の率直な御意見を伺いたいと思います。
  いろいろお話しになっているんですが、その中身というのは、いわゆる対症療法といいますか、現状において我が国はどうしたらいいか、これからの、今の状況に対してどうやってやったらいいのかということが、これは非常に重要なことなんですけれども、今度の、私個人の興味もそうなんですが、一般の方もそういうところはあるかと思うんですが、どうもイスラムというのは考え方が分からない、遠い存在だと。西洋に比べても遠い存在だと。そういった中で、今起こっていることは何によってこういうふうなことになっているんだろうかというのがなかなか理解できないというのが一番のポイントではないかというふうに思っております。
  そこで、我々が一番不安に思っていることは、先ほど、たしか田村先生のお話のお答えの中にありましたけれども、今のようなアメリカの対応が続く限りテロはまた起こるだろうと、たしか宮田さんのところだったと思ったんですが。
  その一方で、一方的な関係ではなくてアンビバレントな関係があるよというお話も伺いましたが、要するに、イスラムの世界のある意味での被害者意識、当然八世紀から九世紀、西洋の近代化とともに、かつてのサラセン帝国の栄光がもう地に落ちるという中で、西洋のキリスト教社会に対するそういったものがあるだろうというのは、まあ頭の中では一応、歴史をさらっとなぞれば分かってくることなんですが、さりとて、そこのところにアメリカあるいはヨーロッパの社会が妥協してくるんだろうかと、価値観の下で。ある意味でいえば、十字軍のあれじゃないんですけれども、ブッシュが口滑らせたように、そういうふうなことになってくる。
  そうすれば、政府の方の西洋的な価値観、法治主義とか、そういったものの知識のある上の方の人たちは理解はするけれども、先ほどおっしゃったように、大多数を占める教育の余り受けていらっしゃらない方、そしてそこのところの祭政一致、宗教と政治の分離というものがある意味で一番後れているところで、これからどういうふうにすればこれが折り合いが付くのか、根本のところで、その辺が見えてこないというふうに私は危惧の念を持っているんですが、その辺のところについて御意見があれば、お伺いしたいと思います。

○参考人(宮田律君) 大変難しい質問だと思いますけれども。
  アメリカは多分、妥協していかないと思うんですよね。それから、同じような政策を続けていくとは思うんですけれども。アメリカは、私、アメリカのワシントンなんかへ行って中東研究者辺りと話をしますと、結構アメリカの中東政策については批判的な研究者って多いんですよね。ただ、そういう声がどうも政府に届かない。もちろん、それを遮断しているのは、これは前にも言ったけれども、アメリカのユダヤ社会、ユダヤ・ロビーの声がどうも強くなっちゃって、アメリカの政策にアメリカの中東研究の成果が反映されないという問題がありますよね。それから、そういうことを考えると、これからもまた、同じことをまたアメリカがやっていく、それに対してイスラム世界の側で一体どういうふうにこたえるかということになると思うんですね。
  ただ、やっぱりこれはイスラム世界だけの問題ではなくて、もちろんアメリカあるいはヨーロッパの問題もあると思うんですけれども、イスラム世界の側の問題とすれば、やはり教育のレベルが上がっていけば少しは、欧米が発する言語が少しはわかってくるのかなという感じもしますよね。それから、その辺のやっぱり教育に対する支援、あるいはもちろんイスラム諸国の側の自助努力というのが大事じゃないかなという気がしますよね。
  それと、やはりアメリカあるいはヨーロッパ、それに日本もイスラム世界に関する基本的なその知識というのがどうも欠けているような、今たまたまこういう調査会開かれておりますけれども、こういう努力が余りにも今までなかったんじゃないかなという気がしていますよね。それから、西側先進諸国の側でもこういう努力を積み重ねるということが必要じゃないかなという気がしています。それで、私たち中東イスラム世界を長く見てきた研究者の声をやはり政治に反映していただきたいという、そういう気はしております。
  それで、どういうふうに妥協するか、これはやはり欧米世界とイスラム世界でもいろいろ協調できるところってあると思うんですね。いろんな面でイスラム世界と欧米の中にある、横たわる問題について協調するような、協力するような何らかのその措置を考えていかなきゃいけないというふうに思っております。
  ですから、イスラム世界の側の教育であり、あるいは貧困であるという、あるいは人口問題というようなことを欧米とイスラム世界あるいは日本も一緒になって考えていく、協力し合ってその問題の改善に努めていくということも大事じゃないかな。それと、やはり経済活動あるいは政治の活動においても、イスラム諸国をも取り込むような努力をしていかなきゃいけないという気がしておりますけれども、ちょっと難しいですね。
○参考人(畑中美樹君) 今起きていることを理解できないということなんですけれども、恐らくイスラム世界の人自体も、アメリカのやっている政策等に不満を覚えてはいても九月十一日に行ったその行為については多分八割ぐらいの人は理解できないんだと思うんですね。それが一つでございます。
  それから、好きか嫌いかは別として、中東の人から見た場合には、アメリカやヨーロッパの方が実は日本よりはるかに理解しやすくて、中東イスラム社会の人から見ると、逆に日本というのは理解できない、日本人の物の考えといったら理解できないというのが事実だと思いますので、これは一方通行の話じゃなくて双方通行の話なので、これは我々自身のやはり努力ということも相当程度必要になってくるんじゃないかなという気がいたします。
  それから、中東イスラム世界を見た場合に、やはり過激と言っていいと思うんですけれども、今回の九月十一日のような事件を是とするような考え方を持っている人は、多分百人いたら最大限二十五人、多分十五人から二十五人ぐらいで、八十人から八十五人の人はまあ我々とそう変わらない判断を下している人だということは私は経験的に言えると思います。
  それから、これからのアメリカの、どちらかというとユニラテラリズムという一方的な外交政策、あるいは場合によっては軍事政策になるんでしょうけれども、これがどうなっていくかということですけれども、欧州はやはりここに来て相当程度違和感を覚え始めていると思いますので、これがいつまでもアメリカが考えているような一方的な行動が取り続けられるということは私は決して思いませんので、日本としては国際社会の責任ある一員として、やはり欧州ですとかその他の主要国と緊密な政策協議を続けながらアメリカに対する意見の開陳というのを積極的にやっていくということが必要なんじゃないかなという気がいたします。
(後略)