質問「中国経済の現状などについて

(平成16年4月7日参議院国際問題に関する調査会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 それでは、政府の方々に質問したいと思いますが、主に外務省、財務省、経済産業省の方になろうかと思います。
  この問題、東アジアの経済、現状展望ということになりますと、やはりメーンはどうしても中国になろうかと思うわけですが、今までその中国の経済についていろんなことを言われていましたけれども、一つは、今までの予想とちょっと違っているところは、一つは消費が拡大するということにおいて、日本からの輸出というものがそちらの面で予想以上に進んでいるという点、それから原料輸入国になったという点、この辺が事前の、数年前の我々の感覚以上に進んでいるということは言えると思うんですが、それと同時に、バブルではないかということで、中国経済、北京のオリンピックあるいは上海の万博ですか、あの辺りはもつけれどもその後はどうなるか分からぬぞという指摘も今なされております。
  特に一番問題に、我々に、日本にとって関係してくるのは金融の問題が大きな問題であろうと思いますが、特にそこのところで昨今問題になっている人民元の、レンミンピーですか、の切上げ問題のときがどうなるのか、WTOとの絡みでどうなっていくのか。
  それからもう一点は、WTOに加盟した、そしてそれに伴う措置を今後何年間にやらなきゃいかぬということがあるわけ、いろんな面でタイムスケジュール的になっているわけですけれども、その辺の中国の対応についてどうなのかという点。
  それからもう一点、別の観点からいきますと、その中国のべったりのめり込みの産業進出に対する問題意識といいますか、前からあったのかもしれませんが、中国の工場その他の一部を東南アジアに移すと、何割かは移すと。中国がおかしくなっても生産拠点は東南アジアのどこかに移しておく、あるいは日本にもう一回引き戻すと、こういう動きも出ているように思います。
  その辺についてのそれぞれの御認識を順次、外務、財務、経済産業の順でお答え願いたいと思います。

○政府参考人(西宮伸一君) 中国経済の現状についてお答えを申し上げたいと思います。
  中国経済は今大変な勢いで伸びておりまして、昨二〇〇三年度のGDP伸び率というのが実質成長で九・一%ということになっておりまして、九七年以降最も高い伸びを記録いたしております。その結果、米貨換算いたしますとGDPは約一兆四千億ドルぐらいと。他方、人口が多うございますから、一人当たりのGDPに直しますと千ドルをちょっと超えた辺り、具体的には千九十ドルというふうに中国政府の方から発表されております。
  国内経済の成長への寄与は、工業部門というのが非常に大きくて、九・一%のうち、第二次産業という計算をいたしますと六・五ポイント分ぐらいが第二次産業ではないかということが言われております。さらに、投資が非常に高い伸び率で伸びておりまして、むしろ一部では過剰投資なのではないのか、重複投資なのではないのかということが言われております。むしろ消費は、御指摘ございましたけれども、堅調な伸びという感じでございまして、たまたまでございますけれども九・一%、つまりGDPの伸びと全く同じでございますけれども、投資が二六・七%の伸びということでございます。
  そういった状況を踏まえまして、中国政府ではあくまでも七%成長を目標にやっていくのだということを述べておりまして、この間終わりました全人代に対する各種の報告を通じましても、むしろ建設国債の発行などは少し控え目にしていくということで、あくまでも七%成長でいくということを発表している次第でございます。
  原料の逼迫などにつきましては、私、手元にいろんな資料というのを持ち合わせておりませんが、各所で報じられているところでございますし、それからエネルギーの、特に石油の輸入も増えてきております。消費自体がもう日本と同じ消費水準に達しているということでございまして、そういった状況になっておるわけでございます。
  それから、原料と直接関係ございませんけれども、短期的に、進出企業のお話もございましたので、今進出企業の間で若干話題になっており、問題になっておりますのは、電力の供給が間に合わないといったことも指摘されておるわけでございます。これをバブルと呼ぶかどうかというのはなかなかいろいろございまして、つい二、三年前までは若干デフレだという御意見もあったりしておりますが、中国政府は、申し上げましたように、総じて七%は維持したいけれども若干高めと認識しているのではないかと思われるような政策展開を取っておるというふうに思います。
  以上でございます。
○会長(関谷勝嗣君) ありがとうございました。
○政府参考人(佐々江賢一郎君) WTOの加盟の関係で中国がどのようになっているかという関係につきまして、各論は別途あると思いますけれども、ちょっと総論だけ述べさせていただきたいと思います。
  先生御承知のとおり、中国は加盟時に大変多くの約束をしております。これは、国境の措置、関税、非関税障壁、それから国内の諸制度を整合的にするということで、各般にわたって約束をしております。その関係で、WTOの場では毎年中国がしっかりこの約束を履行しているかどうかという審査が行われております。今年もその審査が行われているわけでございますが、総じてガット加盟国から、現在の中国の履行状況については、完璧じゃない、不十分なところはあるが、しかし全体としては一生懸命やっているというのがジュネーブにおける一般的な相場観であろうというふうに思います。
  しかしながら、個別の分野に取っていきますと、例えば関税面での措置の実施、あるいは流通権、貿易権、あるいは内国規制の透明性等々の分野で必ずしもはっきりしない、どうなっているのかということが多々あるわけでございまして、そういう件。それから、特に知的所有権の問題、財産権の問題につきまして、偽物のたぐいでございますが、これの実際上の取締り、つまり法律はあるけれどもそれを実際上取り締まっているのか、ちゃんとということについて非常に大きな懸念が表明されているということでございます。
○政府参考人(渡辺博史君) 今の御質問のうち、金融及び人民元のところについてお答えを申し上げますけれども、先ほど御指摘ございましたように、中国に対して様々な形で資金が流れ込んでいる状況にあります。それは、直接投資という形で長い固定化された投資もありますし、ある程度将来の人民元の変動を見越したスペキュレーションの形で入ってくるお金もあるわけでありますけれども、それにつきましては人民銀行はかなり強烈に吸い上げをしてはおりますけれども、それでもやはり残った部分というのがございまして、かなり市場におけるマネーサプライというものが増えている状況にあります。
  昨年の後半でいいますと、一九%あるいは一八%程度のマネーサプライの増加というのが見られておるわけでございますから、そういう意味でいいますと、GDPの伸び率が八から九ということに対して約倍の伸び率ということであって、かなり高い伸び率になっております。それを受けまして銀行の信用の伸びも二〇%を超える状況になっておりますので、これが果たして健全な貸出し先に行っているのかどうかということについては、中国も銀行監督委員会が独立して作業を始めておりますけれども、かなり注意をして今見ているという状況にあるわけでございます。
  一応、年が明けましてから、少しこういう形での金融の伸びが高過ぎるということで、人民銀行あるいは銀行監督委員会の相談の下にマネーサプライを一七%ぐらいに抑えてはどうかということで今指導をしているわけでありますけれども、そういうときに、抑えたときに、本来流れるべきところに流れなくなって、農業とか非常にお金を必要としているところが金融がタイトになり、日本でありましたような不動産業のところにお金が流れていくといった形のバランスの崩れた信用が供与されていくという懸念も持たれておりますところで、これを今かなり強烈に人民銀行、中央銀行でございますが、これが監視をしているという状況にございます。
  にもかかわらず、先ほど御指摘もありましたようにバブルの兆候が見られておりまして、例えば建物の不動産価格指数ということで見ますと、大体全国平均で見ますと五%弱ぐらいで過去三年推移しておるわけでありますけれども、例えば上海の建物だけを見ますと、二〇〇二年の最後のクオーターが一〇%の伸び、その後どんどん上がってまいりまして、二〇〇三年の最終四半期、十月から十二月でございますが、そのときは二八%の価格上昇率になっているということでございますので、やや日本の八〇年代の後半と似たような形になっているという状況にございます。
  それで、先ほども申し上げましたような形で銀行の信用も伸びているわけでありますけれども、健全な形で伸びているのであれば特段の問題はございませんけれども、御承知のとおり中国の不良債権というのは必ずしも楽観できる状況ではございませんで、昨年の十二月末現在におきまして、不良債権の比率、トータルの貸出しに対する不良債権比率が一七・八%、あるいは対GDP比で見ますと二〇・九%という数字になっております。
  これは今なお銀行の帳簿に残っている不良債権でありますが、これとほぼ同額のものが日本でいいますと整理回収機構に移行されておりますが、これについての処理がまだはっきりしていないということになりますと、悪い見方をしますと四割近くの不良債権についてまだ処理がはっきりしていない状況にあるというところでございます。それを受けまして昨年の末に四百五十億ドルのいわゆる公的資金注入というのを大手の二行にやったわけでありますが、それでもまだ不十分ではないかということで、追加的に措置を取ることについて現在検討中であるというふうに聞いております。
  そういう中で、人民元がどうあるべきかということでありますけれども、これはなかなか難しいところがございまして、今申し上げたような経済あるいは金融の実態から見ますと、必ずしも今の人民元の相場が安いのかどうかというところはいろいろ議論の分かれるところでございます。しかしながら、アメリカとの貿易だけを見ますと、アメリカが膨大な赤字を中国に対して持っていることは事実でありますから、アメリカ辺りからは様々な製造コストの問題等から、この為替水準についての是正という議論は出ているわけでございます。
  ただ一方で、先ほど御指摘ございましたように、日本あるいは周辺の国でありますと、例えば韓国あるいはタイなどにおきましては、中国に対して部品あるいは生産財を供給する、それを使って中国で組立て加工をしたものをアメリカあるいはヨーロッパといった最終市場に送っているという形での相互の関連関係が出ているわけでございますから、周辺諸国の中では、今の中国の人民元の相場が大きく動くことによって中国の成長にそごを来した場合にはかなりマイナスの影響がそれらの周辺国に来るということについての懸念もあるということも事実でございます。
  それから、日本との関係でいきますと、やや世の中の印象としては日本が中国に対して赤字を相当に抱えているようなことが報道されておりますけれども、中国との貿易を見る場合には、香港を経由して最終的に中国に行っているもの、あるいはその逆で動いているものも併せて見る必要があると思いますが、そういうものの全体で見ますと基本的には日本は中国に対してまだ貿易黒字を持っている世界でございますので、という意味では、日本が売っているものあるいは日本が買っているものと、その両方のインパクトがあるわけでございます。
  ただし、それは五年前、十年前であれば輸出入それぞれが小さかったわけですからそれぞれのインパクトは限られたものでありましたけれども、輸出も増え、輸入も増えている中で、その差引きの黒字が若干あるという状況にございますから、その輸入に伴って生ずる低価格製品の国内での販売、それと競合する方々が日本にいるわけですから、そういう面での被害というのも一方ではあるということが事実でございます。ですから、そういう面も全体を含めて考えていかなければいけないというふうに考えておるわけであります。
  我々としては、中国が自らの判断でより良い形での為替を整えてくれるということが必要だと思いますけれども、いずれにせよ、今申し上げたような形で、中国が大きな形でその調整を行う、それが中国の成長あるいはその周辺諸国に対する影響が大きく出ないような形にするためには、やはり、平ったい言葉で言いますとガス抜きといいますか、徐々に調整を行うことによって、ある日突然急激な調整がないということが望ましいと思いますので、それに向けて何ができるかということについて我々は中国の仕事相手と話をしているところでございますし、我々も過去において優れた経験と間違った経験と両方あるわけでございますから、七一年のスミソニアンの当時、あるいは八五年のプラザ当時、その周辺において為替政策、金融政策、財政政策を何をやってきたかということについて中国とよく話を進めていると、そういう状況にございます。
○会長(関谷勝嗣君) どうもありがとうございました。
○政府参考人(田中伸男君) お答え申し上げます。
  先生からの質問、三つ主に私どもへの御質問があったかと思いますが、一つは原料の輸入問題、原料高の話、それからWTO加盟に伴うその措置の是正の問題、それから投資をしている会社が中国以外のところへも出て、今や重点を移しつつあるのではないかと、そういう御指摘。
  最初の問題につきましては、確かに中国経済の拡大のお話は今皆様が御説明したとおりでございますけれども、中国に対する投資が非常に外資が伸びておりますんで、今や最大の外資の受入れ国になっていると。そういった中で、生産拡大するといいますと当然私ども日本からの輸出も大きく増えまして、これによって日本経済が潤っている面は非常に大きい点があると思います。しかし、最近非常に活性化をしているのはいいことなんでございますけれども、需要が増えて、原料でありますところの鉄鉱石だとか石炭、非鉄金属、こういった原料やら鋼材が大変中国で需要が高まって、そのために値段が非常に国際的に上がっているという事態がございます。
  これについて、我々の、日本が逆にそういうコスト高をむしろ逆に受けて企業の利益が圧縮されるとか原料の調達が難しくなるとかいう問題が起こり得るのではないかというふうに経済産業省も考えて懸念をしておりまして、いろいろな方面から情報を収集するというために、原材料についての連絡会議を省内に作りまして、一体どういうことが起こり、どういう影響があるのか、それを今じっくり検討しているところでございます。モニターを始めているところでございます。
  具体的に、例えば、新聞にも出ておりましたけれども、コークスが中国側が輸出のライセンスを発給を抑えているんじゃないかというような疑いを持たれておりまして、これについては一体どういうことでやっているのか、一体どういう考えでいつまでそういったことを続けているんだ、実態として日本もコークスの需要は当然のことながらあるわけでございますので、こういった問題を中国側とも話をしつつございます。我々の産業が順調に経済回復しつつある中で困った問題にならないように、十分注意深く見ていく必要があると考えております。
  それから、WTOの中国加盟に伴いましていろいろな約束を中国がしたわけでございますけれども、それがきちっと守られてきているかということについては、中国も入って今一年ちょっと、二年ぐらい、一年半ぐらいでございますので、まだ大目に見なければいけない面もあるのかもしれませんけれども、その中でも特に知的財産権を十分守っているのか、法制度は随分変えてきたわけでございますけれども、実際に取締りをしてくれているのかどうか。こういった問題については、個々いろいろな問題が起こるごとに中国側にもクレームをし、ミッションも出したり、具体的にどうやればいいかお互いに相談をしたり、こんなことで私どもの懸念を伝えているところでございます。
  WTO、そのほかにも、実際に輸入ライセンス、輸入を拡大するという約束をしているにもかかわらずライセンスが十分出ていないんではないかとか、約束をした関税率が十分守られていないんではないかとか、それからアンチダンピングみたいな措置についてはWTOのルールに従って行う必要があるわけでございますけれども、それを十分守らずに乱発しているんではないかとか、こういったようなコンサーン、心配を私どもしておりまして、この辺のことにつきましては中国に二国間でいろいろと申入れもしておりますし、WTOの中のいろいろなプロセスを通じまして問題提起をしているところでございます。
  最近に至りまして、先生御存じのように、半導体について中国側が輸入品と国産品について増値税の還付の仕方に差を付けているんではないかと、これが内国民待遇違反ではないかという懸念から米国が中国に対してWTOの紛争処理メカニズムに訴える措置を取りました。日本もこれに第三国参加をして関心を示し、その是正を求めていくというポジションを取っているわけでございますけれども、こんなものも、中国側に対してこういった形での、紛争処理のメカニズムを使った形で中国側に是正を求めるというのも一つのやり方ではないかと、必要に応じ使っていくんであるというのが私どもの考え方でございます。
  それから、三つ目の点でございますけれども、企業が中国に大変投資をしているわけでございますけれども、SARSの影響があったときには日本へ引き返してくるとか東南アジアに移るとか、そういった議論ももちろんございました。確かに、中国だけに集中するリスクが大変高くなるわけでございますので、各社がそれぞれの戦略においてそれぞれ違った、マーケットの特性でございますとか製品の特性、技術の特性、RアンドDをどこに置くか、そういったようなそれぞれの戦略に基づいて今や複合的にASEAN、中国、様々なマーケットを見ながら投資の戦略を作っているというふうに私ども感じております。
  政府としては、そういったものを助ける意味でもいろいろな形で、例えばEPA、FTAの御議論もまたこれから出るんだろうと思いますけれども、そういったものを充実して、産業界のニーズ、ハーモニゼーション、いろんな制度のハーモニゼーション、こういったような観点からいろいろな措置を取っていくべきであろうというふうに考えております。
  簡単でございますが。
○会長(関谷勝嗣君) ありがとうございました。

(後略)