質問「出生率引上げに必要な政策について

(平成18年11月22日参議院少子高齢化社会に関する調査会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 先ほど来の参考人の方々の話の中で、ちょっと逆に逆手を取ってという言い方で非常に言いにくい言い方なんですが、産めよ増やせよの時代はというような人間に対する尊厳ということに対しての問題があるとか、産む産まないはやはり女性の主体的な判断によるべきものであるというふうな話があったんですが、一言で言えば、そういう今、日本民族というか日本国家という流れを見たときに、そう言っていられる余裕のある、まだそう言っていられる余裕のある状況だろうかという観点から見て、要するに、今の状況からいけば、もう明らかにあと五十年、百年のところで大きく日本の社会形成、人口形成が変わってくる状況にあるわけなんです。
  そういった中で、それでいわゆる何らかの対策をすれば、二・幾つ、生涯出生率のところまでやって、日本という国家があと百年、二百年後も存在するんだろうかと。女性を犠牲にしないで、日本の国家というか民族が滅亡するというかほぼゼロに近くなるというところまでなんだろうかという、その辺の感覚を教えていただければと思うんですが。

○会長(清水嘉与子君) それでは、今の御質問、御意見でございますけれども、石井参考人からでよろしいですか。どうぞ。
○参考人(石井美智子君) 私は、子供を持ちたいというものは生物学的本能として人間みんな持っているもの、多くあるのではないか、本能としてはですね。それができない事情が余りに多過ぎるんではないかということを考えますと、そういうものを妨げているものを除くこと、こういう形での不妊対策じゃなくて、子供を持てる社会をつくること、それが求められているのであって、女性を犠牲にするなどということはとても認められることではないと考えます。
○参考人(河合蘭君) 女性の目に少子化対策というものがどのように映っているかということをちょっとお話ししてみたいんですけれども、国のために産みたいという方はどこを探しても多分いらっしゃらないというのがまず現実ですね。国のためには産みたくないというのがほとんどの女性の気持ちですね。しかし、政府から出てくる少子化対策というものを見ると、年金のために産んでほしいという姿勢が非常に感じられてしまうわけです。もちろん、日本人の一員として日本のことを皆さん考えてはいるんでしょうけれども、どこのだれか分からない、一般的な年金をもらっている人々のために私がキャリアをなぜ犠牲にしなければならないのかと。人間というのは、皆さんと言うとだれも自分のことだと思わないらしいですけれども。
  そういったところで、女性たちの心が、今の少子化対策の表現の仕方、出し方で心が動かないんですね。そして、非常に逆に引いていく、非常に冷ややかな冷たい目で女性たちが見ている。自分たちの出来事としてどうして、自分たちの産めない問題なのにどうしてこんなにみんな冷たいまなざしを向けるんだろうというところを一度考えていただいて、やっぱり心と心のつながりで政策が女性の心に届くんだと思いますので、女性のためにやっているのか、それとも老人のために、年金のためにやっているのかというところを一度考えていただきたいなと思っております。具体性に欠ける話で申し訳ありませんが。
○参考人(佐藤孝道君) 感覚的に今の少子化というのは厳しいなというのは実感として持っております。多分、国というレベルから考えると、多分大きな、非常に大きな問題だというふうに思うんですが、ただ、私、たくさん妊婦さんを見てきていて、さっきも出ていましたように、だれかのために産むなんということは到底あり得ないことなので、確かに、政治に関係しておられると非常にそこら辺のことで焦られるというのは分かるんだけれども、ストレートに例えば産んでくれと言って産んでくれる人なんて多分どこにもいないわけであります。だから、当然大事なことは、なぜ産まなくなっているのか、なぜあるいは場合によっては産めなくなっているのかというのを考えていただく必要があるのかなというふうに思います。
  そういう意味でいうと、やっぱり、さっきからずっとキャリアか子供かというような話が出てきていますけれども、若い人たちに今そういう選択を迫るような現実があるんだと思うんですね。若い人たちは、どちらかというと両方取りたいんだと思います。もちろんそういう、今まではずっと多分そこそこに取れるような現実があったんじゃないかというふうな気もするんですけど、それも非常に取りづらくなってきた。
  というふうなことを考えると、子供をつくっても女性のキャリアがやっぱりちゃんと保たれていくというふうなことを当座はやっぱり考えていただきたいなというのが私の要望でありまして、ちょっと遠回りかも分かりませんけれども、現実的にはそれがやっぱり一番近道なのかなというふうに思っております。
○会長(清水嘉与子君) 山崎さん、よろしいですか。どうぞ。
○山崎力君 先生方がおっしゃるような形で出生率が上がっていれば、これは何も我々頭をひねる、ない知恵を絞る必要ないし、放置しておけば自然に子供が生まれるもんだということであれば、ある意味でいえばこんなに出生率が下がるはずもないわけでございまして、それが先ほど来の話であれば、西欧において、西ヨーロッパにおいて、いったん大幅に下がったのを一生懸命いろんなことをやって上がってきつつあると。そこのところの政策がどれが有効か、あるいはそうでないのか、国によっても、あるいはその国民性によっても違う。こういうふうなことで、今いろいろ模索している段階なわけです。
  そこのところで、そういう政策があれば自然に増えますよというのは非常にこれ、我々からすると逆転、逆の現象でございまして、本当にこういう政策が国民サイドから出てくるんであれば、これは与野党問わずもう一に、役所だってばかばかりじゃないわけで、採用してやっているわけですよ。ところがそれがなかなかできない。
  それで、今のままの年金のためというお話があると、それでは将来どういうことになるかというと、子供を育てたことのない人の年金はこれは下げましょうと、あるいは独身でいる人に対しての税金は高くしましょうと。これは現実にやっているところありますからね。そういうふうな方向に行く可能性もある。
  私は、この問題というのはそのくらい突き詰めて考えないと解決がいかない問題だろうというふうに思ってあえてお聞きしているわけですけれども、本当に、じゃ具体的に出生率を個々の問題ではなくて国の政策として上げるとしたら何が一番重要だというふうにお考えでしょうか、参考人の方々。

○会長(清水嘉与子君) 今、国がいろいろ政策やっていますので、そこについての何か問題点でもございますれば御指摘いただければというふうに思いますが。
  佐藤参考人、どうぞ。
○参考人(佐藤孝道君) 繰り返しになりますけれども、私、実際に妊婦さんなんかを見ていて、例えば一つの問題ですけれども、例えば保育所の問題一つを取ってみても、働きながら行っている人たちには比較的保育所の条件はある。でも、何とはなしにちょっと働き、少し休んでアルバイト的なものに持っていってまた元に戻ろうと思っても、アルバイト的なものになると既にもう保育所はない。だから、私たちのところへ来るのは、例えば何かの病気でこの人は子供を育てられないから何とか診断書を書いてくれないかなんて希望も来るわけですね。だから、例えば保育所の一つ問題を取ってみても、私、とてもちょっと正直言って、実感として国が十分な施策をしてきたというふうにはちょっと思えないです。
  それからもう一つは、男性の方の働く条件にしても、例えば奥さんにとってみると、男性がもうがむしゃらに働いて家を余り顧みない、多分今そんな状況があるんだと思うんですけれども、そんな状況にあると多分子供は余りつくる気しないんじゃないかというような気がするんですね。奥さんの方もやっぱりもう仕事、キャリアというか仕事に走っていくというふうな現状があると思いますし、実際に医療の現場で見ていると、先生のおっしゃることよく分かるんですが、ただ、本当にそういう必要な施策を国がしているかというとどうかなというのが正直なところです。
○会長(清水嘉与子君) 河合参考人、いかがでしょうか。
○参考人(河合蘭君) なるべく具体的にというお話だと思いますので、二つ、海外の少子化政策で私が非常に心引かれているものについてお話しさせていただきます。
  一つはフランスの育児手当でして、年齢が低いほどお金が少ないんですね。子供の教育費が掛かっていくほど、年齢が行くほど高くなってまいります。しかし、日本の場合は小さい子にしか支給されておりません。お金がないから子供を産まないというのは口実であるかなと言う方も多いんですけれども、一人目、二人目の場合はそうですけれども、三人目というのは、私の知る限りほとんどの方が教育費を心配して産んでおりません。
  ですから、今奨学金の方で少し考慮がされてきていると思うんですけれども、何といっても子供一人生まれたら三千万円掛かるんだというのは非常に女性の間で有名なことになっておりまして、そのうちの三分の一くらいは大学、高等教育の学資ですよね、専門、専修学校ですとか私立高校ですとか。私立から小学校に上げたいという方を丸々保護するかどうかはまた別の話としまして、もしも高等教育を子供が受けたいと言ったら出してあげたいなという辺りを考えていただくというのは、非常に、私が大学生の子供を持っているから言うわけではないんですけれども、多くのお母さんたちが普通に話しているのに、なぜ政府の方からそういう動きが出てこないのだろうかと思います。
  それから、それには財源というものが非常に日本の場合は小さいのかなと思っております。お金が少ないところで少し何か工夫してみてもやっぱりパワーが出ないといいますか、心動かすパワーが出ないと思います。どれくらいフランスですとかと割合が違うのかは存じて今おりませんけれども、恐らく非常な違いがあって、そこが決定的な力不足につながっているのではないかと思っております。
  それから、男性の育児休暇ですけれども、これもフランスだったかと思うんですが、強制的に二週間くらい取りなさいということが始まっているところがヨーロッパにあると聞きました。ほとんどの方は出産直後の時期に取っているそうですけれども、お産の仕事をしている人間からいいますと、赤ちゃんの一番かわいい時期に、昨日は笑わなかった子が今日は笑ったという時期に、お父さんと子供の関係をつくるのにその時期は本当にすばらしい時期です。動物もその時期に自分の子供を覚え、自分の親を覚える時期なんですね。そういった強制力のある男性の育児休暇というのを期待します。幾らキャンペーンをしていましても、女性も少しでも会社に穴を空けまいと思って職場復帰しますので、ましてや男性がと思いますので、その二つを思いました。
○会長(清水嘉与子君) ありがとうございます。
  それでは、石井参考人、どうぞ。
○参考人(石井美智子君) 余り具体的なことは申せませんですが、一言で言えば、子育てに希望の持てる社会をつくるということが一番大事なのではないかと思います。仕事を持ちながら子育てするということは、本当に保育園に預けて長時間保育を可能にする、そういうことではなくて、五時に終わって家族で食事をできる、そういう家庭が持てるそういう社会をつくっていかないと、子育ての喜びを感じるそういう社会でないと子供を持とうということにはならないんだと思いますし、経済的には不妊治療のお金よりは子育てのお金の方がずっと大変で、それを考えると、自分たちが人生を楽しむ方にそれを使いたいと思うことになるんではないかと思います。
○会長(清水嘉与子君) よろしいですか、山崎さん。
  ほかにございますか。よろしいでしょうか。
  それでは、質疑もないようでございますので、以上で参考人に対する質疑を終了したいと存じます。
(後略)